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害ないが周く卒わることを希わん

 fecebookで、以下の「こども新聞の出題」が紹介されていました。
 小学校で習う漢字。読めますか?

希う、低れる、特け、億る、周く、害なう、卒わる、管る、芸える、団い

 いくつ読めました?・・・・・私は、全滅!ひとつも読めませんでした。

 答えは、こちら。

希う:こいねがう、低れる:たれる、特け:とりわけ、億る:おしはかる、周く:あまねく、害なう:そこなう、卒わる:おわる、管る:つかさどる、芸える:うえる、団い:まるい

 タイトルは、「そこないが、あまねくおわることを こいねがわん」と読みます。

 これらは、常用漢字表にはない読み方。表外読みって言うらしいです。「こいねがう」や「あまねく」って日常的に会話に登場して音声では理解できるけど、「希う」や「周く」とは思い描きませんよね。「信じる」「悲しむ」「笑う」といった言葉が、音声でも漢字でも馴染んでいるのとはずいぶん違います。
 これは、常用漢字表に載っている漢字とその読み方しか習わないし、新聞やテレビで使われないからで、SNSなどでも、みんなが使わない漢字の使い方は触れる機会がないので、どんどん忘れられてしまう。ひらがなと音声のみが残っていきます。

 「おっくうがらないで食器を洗いなさい」の「おっくう」ってよく使いますが、「億劫」って書きます。仏教用語の「極めて永い時間、劫(こう)」を「億(おしはか)る」(永遠の時間に思いをよせる)って意味だったんですね。これからは、心して\おっくう/がらなきゃ。
 管(つかさど)る は、管理職の菅る。芸(う)える は、植える、草を刈るという意味。園芸の芸です。団(まる)い は、お団子ですね。ちなみに 衣(きぬ)、園(にわ)、俺(われ)、衛(まも)る、温(ぬく)い、概(おおむ)ね、格(ただ)す、楽(かな)でる、還(かえ)るとかも表外読みです。ひらがな化されていく言葉を、漢字に寄せた意味で紐解きながら辿るのもいいものです。

 多彩で多様で雑多な漢字用法が整理されたのが、1923年(大正12年)。文部省臨時国語調査会が、常用漢字表1,962文字を発表しました。その後何回か改訂され、2010年の最新版では、常用漢字2,136文字の指定と、その4,388の音訓読みが規定されました。追加された読みの中には、癒(いや)す、応(こた)える、創(つく)る、描(か)くなどがあります。これら、忘れ去られる前に拾われた使い方もありますが、まだ、そこから外れた言葉が、上記のようにいっぱいあるってことですね。

 『日本人のおなまえ!』に登場する名前は、「書き文字」を原本とした戸籍システムにより、書き間違いや勝手に漢字を作ったり簡素化したものもあって、物凄い数の漢字バリエーションを生み出していたり、最近のキラキラネームでは、想像もできない読みを漢字に当てていたりします。教育では、共通言語としての漢字とその用法を絞りたい!って思う(試験で減点理由をつくらなきゃいけない!)のもわかりますし、パソコンやスマホに治める漢字表にも限界がありますしね。でも、人々は結構、類系や連携や流行や消滅していく言葉文化を楽しんでいるようにも思えます。

 2019年の『絶対読めないキラキラネームランキング』を見ると、男:あだむ、心姫:はあと、紅葉:めいぷる、桃花:ぴんく、夢姫:ぷりん、天音:そぷら、奏夢:りずむ、愛翔 らぶは………┐(´-д-`)┌ャレャレ
 ジェラシック・パークのマルコムは「生命は道を探し出す」と指摘していましたが、「制限された言葉は道を探し出す」のかもしれません。めいぷる大臣や、ぷりん首相が地球温暖化対策の画期的な政策を実行する日がくるのかも。害ないが周く卒わることを希わん。

2021年2月1日







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