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オレンジの体温

雨が多くなってきました。外に出られない日はひたすら映画を見返しています。やとわです。

5月28日に公開した2作目「オレンジの体温」聞いていただけましたか?どうだったでしょうか。今回は思い切り私の趣味に寄せて作ってみました。

ある部屋。ソファにもたれている女の子。その脇にはスーツ。情緒的で曖昧な空気感。ぬるい未完成な感じ、でも少しの明るさがあってただ暗いだけでない。当たり前に生活に溶け込んでいる風景の一部を切り取ったような緩やかな感じ。

今回の曲は大好きなコテリ様の「veil」という漫画からインスパイアされて作りました。

漫画はエマとアレクサンダーという男女のお話。
舞台は推定1900年ごろのイギリス(具体的なことはわからない)。盲目のエマは一人で家を飛び出し街を歩いていた。そんなとき警官のアレクサンダーと出会う。行く当てのないエマをみかねたアレクサンダーは警察署の一室と電話番の仕事を紹介した。それから彼らは互いに惹かれあい、生活をともにする。

一見普通ののラブストーリーですが、この物語のミソは彼らが「惹かれあっているが恋人同士ではない」点です。互いに相手を必要としている。けれどそこには何か超えてはいけないラインがある。それが今の生活を終わらせないためなのか、はたまた別の理由なのか読む側はわかりません。ただ淡々とそこにはエマとアレクサンダーという二人の美しい生活があって、私たちはそれをのぞかせてもらっているだけ。

一つ一つのセリフや仕草から醸し出されている世界観がごく自然に、しかし特別な意味を持って私の目に飛び込んできては通り抜けていく感覚がとても好きで、読んでいると思わず「尊いっ」と呟いてしまう。

曲を作るにあたって改めて漫画を隅々まで読み直しました。汲み取ることのできる行動の意図やセリフの繋ぎ方に注意して、二人の世界観をどういう形で音に落とし込むのがいいかなと考えました。その中で気づいたことは「曖昧」であることの美しさです。完成されているもの、隙のないものに感じる美しさとは別のものを彼らからは感じます。「曖昧なことの美しさ」とは例えば【恋はみのる前、付き合いたいと思って頑張っている時が一番楽しい】とか、【描き途中の絵画が美しく見える】とか。曖昧さはときに人の心を射止めます。そういう空気が自分にフィットしていて、あの漫画の二人に魅力を感じたんだと思います。

イラスト

 イラストはじななさんにお願いをしました。じななさんのファッションに凝っているところや、存在感を感じるキャラクターに惹かれていました。そして今回、エマという人物と物語を表現するにあたっては、そのキャラクター性が伝わることが重要だったのでお願いしようと思いました。ソファーに座る姿、すごく可愛いですよね。個人的に以前から憧れていた方の一人で、一緒に作品を作れたことがとても嬉しいです。最高です。曲の雰囲気も伝わってとても気に入ってます。

何にしても深く向き合って自分なりの答えを出す作業からは学ぶものがたくさんあります。好きなものをもっと好きになりたいです。

ではまた作品を出すときに✳︎

やとわ
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作品情報
「オレンジの体温」歌唱/初音ミク 曲/やとわ イラスト/じなな

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