小説連載の巻 スイミングプールの改築② (2004年)

2004年に書いた短編です。見たところ分量的にも連載に適していそうなので、当時のフロッピーディスクから、サルベージしてきました。(①はこちら

12月6日(土)

今日は学校がお休みでした。

私はまいあさトイレに長くいないとうんちが出ないのでトイレに入ろうとしたら、お父さんが前に入ったばかりでくさくて入れませんでした。

お父さん、シューやった?と私は聞きましたが、お父さんは、シューを知らないみたいでした。

におい消すやつ。いつもシューしないとお母さんが怒るんだよ。

そんなのうちにはない。

お父さん、これだよ、スプレーのやつだよ。

私が教えてあげると、えらそうに見せるんじゃないよ、とお父さんは怒りました。声が大きくてこわかったです。

今日は学校が休みだったのに、お友達と遊べませんでした。みいちゃんのけいたいにメールしたら、残念しごくですが今日は遊べません、とかえってきました。

12月7日(日)

お父さんとお母さんと動物園まで行ったけど、動物園はお休みでした。また明日来ればいいよな、とお父さんが言いました。でも明日は学校があるので私が黙っていると、お父さんは不機嫌になってしまって、お母さんにやつあたりをしました。お母さんは途中で車を降りて、どこかに行ってしまいました。

お昼は何食べたい?とお父さんが聞きました。

お腹がすいていなかったので、クリーム・ソーダが食べたかったので、デニーズに行きたいと私は言いました。

そんなの健康に悪いからだめだ。

お父さんが家に帰ってにゅうめんを作ってくれました。お母さんが夜になっても帰ってこなかったので、おばあちゃんのうちに電話をしたらお母さんが電話に出て、うれしかった。

12月8日(月)

今日の宿題は漢字ドリルの練習でした。やってきた人はスタンプがもらえるので、私はがんばって昨日も漢字の宿題をやりました。

登校しているとき、六年生の人がバイクにはねられるのを見ました。体がぽおんと遠くへ飛ばされてしまいました。でもすぐ救急車が来て、はねられた六年生の人は起き上がっていたので、よかったなあと思いました。

車には気をつけましょうと先生がお話をしました。

帰ってきてお父さんにそのことを話したら、そんなものは体をきたえて受け身をすれば何でもないんだよ、と笑いながら言いました。

12月9日(火)

朝起きたら体がだるかった。

お父さんが、今日は学校をお休みしなさいと言って、学校に電話をしてくれました。

漢字ドリルのスタンプほしいって言って。ちゃんとやったから、スタンプほしいって言って。

私がお願いしたのに、お父さんは聞こえないふりをして、それではよろしくお願いしますと言いながら電話を切ってしまいました。

私は漢字のスタンプが多いほうでがんばっていたのに、今日もらえなくなったから、他のひとに抜かされてしまいます。もう漢字ドリルをがんばるのはやめようと思いました。

少し寝たらお昼になりました。起きてテレビをつけると、さわやかさんくみが終わったところでした。お父さんがチャンネルを変えると、サングラスをかけたタモリという人が出てきました。でもあまり面白くなかったので、私はお父さんがお昼を作ってくれているあいだ、ソファで本を読むことにしました。私が読んでいるのは「よしもとばなな」という人が書いた本で、友達が貸してくれました。

何を読んでいるんだ?お父さんが言いました。

図書館で借りてきた本の中に、「人が何を読んでいるのか知りたがるのは、失礼なことです。特に家族のあいだでそういうことを聞いてはいけません。」と書いてあったのを思い出したので、私は、内緒、とお父さんに言いました。

お父さんが急に、持っていたテレビのリモコンを私に向かって、ひゅんっと投げました。

リモコンが私のおでこに当たりました。

すごく痛くて、心臓がどきどきしました。涙が出てきて、しゃっくりが止まりませんでした。

親に向かってそんな口のききかたをしちゃいけないんだよ。覚えておきなさい。

ごめんなさいと私はあやまりました。お父さんもリモコンを投げたことをあやまってくれました。

(③につづく)

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