小説連載の巻 スイミングプールの改築① (2004年)
2004年に書いた短編です。見たところ分量的にも連載に適していそうなので、当時のフロッピーディスクから、サルベージしてきました。
12月3日(水)
スイミングプールを改築することになったので、お父さんが家にいるようになりました。今日からお仕事に行かなくてもよくなったのだそうです。お父さんが昨日教えてくれました。
お父さんはスイミングスクールで水泳の先生をしています。まいにちまいにち、夜おそくならないと帰ってきません。お父さんが帰ってくると、だいたい私がもう寝ている時間です。だから話もあまりできません。日曜日もスイミングスクールは開いているので、日曜日もやっぱりお父さんに会えません。
今日から休みになったから一緒に動物園にでも行こう、とお父さんが今朝、急に言いました。
だめだよ、学校があるよ。私は言いました。
そうか、と言ってお父さんはパチンコの本を読みはじめました。学校では特に面白いことはなかった。
12月4日(木)
朝お父さんが、今日も学校があるのか?そんなもの休めばいいじゃないか。と言った。
私はびっくりして、お父さん、宿題がある、先生に出さなくちゃいけないのがある。と言いました。
そんなのかんけいないさ。
お父さんがまるでへいちゃらぷーな感じで言ったので、私は泣きそうになりました。
12月5日(金)
私はいつも朝ごはんをしっかり食べるようにしています。朝ごはんをまいあさ作ってくれるのはお母さんです。
でも今日は、お父さんが作るよ、とお父さんが朝ごはんを作り始めたのですが、お母さんがお仕事に出かけるのに間に合いませんでした。
今朝は駅でマックだわ、と出かけるときお母さんが言いました。マックというのはハンバーガーやさんのことです。
脂肪がたまるぞ、やめておけよ。
うるさいわねえ、あんたのせいでしょうが。
お母さんはそう言いながら怒りながらドアを勢いよく「がん」と閉めながら出て行ってしまいました。
前にも二人がけんかをして、お母さんが家に帰ってこなかったことがありました。そのとき私は晩ごはんを一人で食べて、すごくさびしかった。だから、こういうのは嫌だなあと思いました。
お父さんが焼いてくれたトーストを食べていると、パンおいしいか?とお父さんが聞きました。私はうんと言った。
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