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バビロンのデイライト(連載小説)

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「バビロンのデイライト」という長編小説の、第1章のみを全10回に分けて連載いたします。
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2018年4月の記事一覧

バビロンのデイライト(第1章の5)

 おうおう!見事な死にっぷりだなあ!  振り返ると、廊下の向こうから数人の男たちがのんびりとタバコを吸いながら、のんびりと歩いてきた。男たちはおそらく全員が五十代を超えていると見え、がっしりとした体格をし、日に焼けていた。  ちょっくら頭に、仕掛けてやったんだヨ。よくない噂を耳に挟んだんでサ。  見事な爆破ですね。狛江氏が言う。  髪が薄くなった男が笑って言った。わかるかい?ドライムスを使うとね、こういうこともできるんだよ。新宿区の技術力をナメないでほしいねえ。しかしまあ

バビロンのデイライト(第1章の4)

新宿の商工会議所は、「樹」の「根」にまだ侵されていない十階建てのビルにあった。「樹」の「根」から守るために外壁を二重にする工事を行い、各種配管を徹底的に入れ替えたおかげか、このビルはまだ生き延びていた。  商工会議所はつい今年のはじめにこのビルに移ってきたばかりであった。  震災前から入っていたビルは、都庁にほど近い大きな建物だったが、とうとう「樹」の「根」の侵食を受けてしまい、大急ぎで移転したのです。商工会議所の入り口で名刺交換をした男は言った。    私はただの使い走り

バビロンのデイライト(第1章の3)

 狛江氏の親切に対し、彼(ペガサス電機の町田氏)は御礼をのべた。  ありがとうございます。確かに。確かに何でも新品がいい。それはわかります。でも、うちみたいな中小企業ならではの強みみたいなのもあるんですよ。ほら、やっぱり人と人とのつながり、みたいなものを重視するところがあるでしょう、昔気質の人って。大企業はそこらへんの、心の機微?というのかなあ、そういうものが抜けていて、人を人とも思わないといいますか。ね。だから、新型のドライムスが浸透するのって、なかなか時間がかかるような