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初めてギターを手にしたあの日から

中学2年の頃、私の誕生日の2週間ほど前のことだ。

父が唐突に「ギター欲しい?」と聞いてきた。

私は正直、「もらえるならまぁ…」ぐらいの感覚だった。

あまりもうその頃の中学情勢が定かではないのだが、当時…世間は「〜48」系のアイドルブームが吹き荒れ、それはまるでハリケーンが如くクラスや学年を席巻し、フィールド上の魔法・トラップカードを全て持ち主の手札に戻していた。

その猛烈さから身を隠すように避難していたひねくれ男子たちは、彼らの親世代が聴いていたバンドや、音楽雑誌のトップを飾るような現代バンドを貪るように聴いていたのである。

さらには、そういったひねくれ男子たちは音楽を聴くだけでは飽き足らず、「自分たちでも演奏するぞ」というマインドの元、各々がギターを手にしたりベースを手にしたりドラムを手にしたりしていた。

私の友達(と、私が勝手に思っていただけだったのかもしれない存在)は、休日に私を含めた何人かで遊ぶぐらいの仲だったにも関わらず、実は小学生の頃からギターをしていた…ということを知って、自分の存在が惨めに感じたのを覚えている。

また、別の友人(と、私が勝手に思っていただけだったのかもしれない存在)もほぼ同様に、小学生頃からベースを嗜んでいて、スラップ奏法バキバキで私は度肝を抜かれた。

そんな話をどこかで父にしたのかもしれない。父は唐突に「ギター欲しい?」と聞いてきたのだった。

父に買ってもらった最初のギターは、赤いストラト。フェンダー系列の「スクワイヤ」である。

正直言って、ギターを弾いても楽しいとは微塵も思わなかった。

そもそもコードが押さえられない。

Cってなに?Dって何でこんな変な押さえ方するの?

え?Fって押さえられる人いるの?

Gってこれ…FからGってこれどうやって押さえればいいの?

なんでこの音だけ押さえればEm7になるの?なんでEm7だけこんな簡単なの?

指…すげぇ痛い…。

私は音楽に向いてないんだと思った。
まぁ別に大人になった今でも向いてるとはあまり思ってないのだけれど、当時は…一緒に遊んでいた友達の、ギターが上手なところを垣間見ていたから、「私には才能がないんだ」と思って落ち込んでいたものである。才能。なんて恐ろしい言葉だ。

それから、毎日…とまでは流石にいかなかったけれど、なんとなく「弾き語りぐらいはできればいいなぁ」と思って、1週間のうち、20分から30分ぐらいはコードを押さえる練習をするようになった。

そしたら、3ヶ月ぐらい経った頃だろうか。いつの間にかあんなに「難しい」と思っていたCのコードを押さえられるようになり、Fもがんばれば押さえられるようになっていた(今なら「トライアドで押さえろ!」とアドバイスしたいところである)。

そして、今でも思い出す。ゆっくりゆっくりビートルズのLet it beを最初の方だけ弾けるようになり、エレファントカシマシの「今宵の月のように」をちょっとだけ弾けるようになった。

ギターを弾けるようになっていたのだった。

初めてギターを手にしたあの日、私はまさかこんなふうに音楽をやってるとは夢にも思っていなかった。

もしあの時、父が「ギター欲しい?」と聞いてこなかったら。

私が「うん、まぁ欲しいかな」と答えなかったら。

買ってもらったはいいものの、そこから1ミリも弾かずに物置にしまっていたら_________________。


…これまでに出会ってきた人たち、それはもちろんリアルの生活の方でもそうだし、YouTubeを通した音楽活動において知り合った(または私を知ってくださった)人たちとも知り合えずにいたのだろうと思う。

ちょっとセリフが臭すぎて鼻がもげそうだが、とりあえずなんかまとまらないのでこの辺で終わろうと存ずるぞ。

おーわりっ!



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