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なぜパチンコ通いが止まらないのか

ギャンブリングをしない人にとって、こんなにもたくさんのパチンコ店があることも、オンラインで競馬をすることも、まったく理解できない、と感じるかもしれません。

楽しんでやれる人たちは問題ありません。レジャーギャンブラーと呼ばれます。

ところが、借金、仕事をなくす、家族と不仲になるなど、明らかなデメリットがあるのに止まらない人たちがいます。中には、ギャンブリング障害と診断される人も含まれるでしょう。どうしてこんなことがおこるのでしょうか。

私はパチンコをはじめとするギャンブリングの障害に苦しむ当事者の方や、そのご家族の話を聴くチャンスが、多くあります。そこで当事者のみなさんから教わったのは、ギャンブリングには、ほかに代えがたいメリットがあるから止まらない、ということです。

以下のような事例で、止まらなくなるようなギャンブリングのメリットとは何なのか、見てみましょう。

小さい頃、祖母の介護で大変な両親を見てきた。自分のわがままなんて、言えない。お金で苦労していることも知っていたし。せめて、自分が稼ぐようになったら、自分の好きなように、お金を使いたい。
結婚したら、給料を預けて、小遣い制になった。そうすることが普通であることはわかっている…でも。
マイホーム購入、子育てにかかるお金、妻との不仲。難しい部署に異動した。いつも頭がごちゃごちゃしている感じがする。
パチンコ店にいる間は頭がすっきりする。自分の稼いだお金なんだもの、少しは好きに使っていいよな。
少し使いすぎちゃったな。負け金を取り返さないと。明日までに家計に返さないと、大変なことになる。ああそうだ、同じ通りに消費者金融のATMがあったな、、、

これは典型例ですが、ほかにもパターンはいろいろあると思います。このような例から、ギャンブリングがメリットになっているポイントを抽出してみましょう。

ポイント①人間関係問題から、一時的に避難できる「シェルター」になっている

ギャンブリングの中でも特に、パチンコに依存してしまう人たちの中に、ハッキリ断れない、周囲から見ると怒らない「良いひと」が結構な割合でいます。良いひとを演じ続けることももう限界、、、そんなとき、ほとんどの駅前にあるパチンコ店は、学生時代の楽しかった時代にパチンコ店に通っていた人、ゲーミングでの楽しさを持つ人にとっては、誰にも知られずに気軽に立ち寄れる、憩いの場所です。会社での人間関係の困難、家族との不仲から、ちょっと久しぶりに行っててみるか。そして、パチンコ店は、苦痛な人生の時間があっという間に過ぎます。この救われた感覚を求めに、繰り返してしまうわけです。

ポイント②金銭的不安を癒す

人生のステージが進むと、結婚などで自分のお金が、自由に使えなくなることってありますよね。この不自由さを「癒す」効果がギャンブリングにはあるようです。

パチンコ店にいるあいだだけは、自分の金を自由に使える。

この快感が手放せない人は、昔実家が貧乏だった、金銭管理が苦手だった、などそもそも金銭的不安がある人が多いと思われます。

そして、金銭的不安が強いので、損切りがしにくいことも特徴です。もうかるまで、台の前を離れられない。でももうかったら、つぎのギャンブルの軍資金にする。このような、妥当性に欠く、ギャンブリングにつながっていきます。

また、「一人暮らしになった」「就職した」「結婚した」「マイホーム購入した」など、ライフステージの変化で顕在化しやすいことも、特徴です。いずれも、金銭的不安が伴うライフイベントだからだと考えられます。

ポイント③不器用な人たちがホッとする場所

これはメリットでもあり、ハマる要因でもあると思われます。パチンコ店は、やることが決まっていて、モニターのアニメーションなどが高度に視覚化されています。こういう状態を「構造化されている」といいます。優れて構造化されている場所なのです。

日本は2000年代以降、職務でも、家庭でも、マルチにできることを要求される時代になりました。でも、人間ってそんな人たちばかりではありません。マルチにはできないけど、同じルーチンを繰り返すことに優れた人、一つのことを辛抱強く続けることに優れた人などが、自分に合わない生き方を強いられるとき、構造化された空間や時間は、憩いになると思われます。

人間の心理的性質は、そう簡単に変えられませんから、手放せない憩いになるのです。

それぞれのポイントに共通するのは、「救われた」という感覚です。社会生活に、切羽詰まっているわけですね。この感覚が深く強いほど、その人にとって手放せない救いになります。体がメリットを覚えてしまう、といっていいと思います。頭で考えて修正するのが困難なのです。デメリットが上回っても、止まらなくなるのには、このような理由があると考えられます。

ギャンブリングだけ止めても本当の問題解決にならないことは、上記の例からわかっていただけるかと思います。ギャンブリング以外の方法で救われること…その人に合った生活や、カウンセリングを受けるなどが、有効であると考えられます。

解決方法は十人十色ですので、専門家とともにアセスメントし、解決方法を探ることをお勧めします。まずは、ご家族だけの相談でも、十分に機能します。お困りの際には、当相談室へのご相談もご検討ください。

(矢田の丘相談室 田中 剛)


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