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なぜゲーム依存になるのか②どんな人がはまりやすいのか

こんにちは、矢田の丘相談室の田中です。

前回①では、ゲーム依存(ゲーム障害)は、脳の病気だとわかってきたと言うお話をしました。

でもどうしてはまってしまう人と、適度にできる人の、差が出てきてしまうのでしょうか。
今回は、どんな人や状況がはまりやすいのか、そのリスク要因についてお話ししたいと思います。

若年のうちにゲームを開始している

様々な研究の結果から、概ね12歳から25歳に、ゲームに対する脆弱性があることがわかってきています。
またこの時期や、この時期以前にゲームに長時間曝露していると、25歳以降も再びゲーム依存になるリスクが高いと言うことを示す研究もあります。

この時期はまさに思春期です。脳の発達がアンバランスで、線条体と言う、欲望の脳が先に発達してしまい、計画を立てたり行動を抑制する、理性の脳(前頭前野)の発達は、まだ未熟なままの時期です。そもそも行動のコントロールが、とても難しい時期なのです。
さらに思春期には、恋愛、進学、就職など人生の不安がたくさんあります。自分はどう生きていけばいいのか、非常に揺るがされる時期であり、心理社会的にも「危機」と呼ばれる時期なのです。
このような困難な時期ですから、eスポーツやユーチューバーで成功することを夢見たとしても、不思議ではないと思われます。

男性である

ゲーム障害の研究結果から、世界的に、男性の患者さんの数が多いようです。

やめられないように、高度な工夫がなされている

触れると光ったり、動いたりといった、反応するもの(これはゲームでなくとも、スマートフォン全体に言えることです)このようなものに人間は興味を示し、再び触れたくなると言う性質があり、これはゲームの開発企業にもよく知られていることのようです。

また、オンラインゲームではプレイし続けてもらうための様々な工夫もこらされています。
例えば毎日ログインし続けることでボーナスが増える、つながっている人に挨拶をすることでポイントがもらえる、などです。

さらにグループで行うようなゲームでは、同時にプレイすること、プレイのの集合時間等約束を守ることなどが要求されます。後述のようにそのグループで役立つ体験をすると、嬉しいし、なかなかその地位を手放す事は難しいのです。

こういったゲーム側の要因でも、離脱が難しくなります。

会社や学校でうまくいっていない

仕事や勉強が振るわない、といった社会でのうまくいかなさはリスク要因になりえる、と複数の研究で示されています。
ゲームで上達することは、現実世界のパフォーマンスを改善することよりは簡単ですし、成果がはっきり目に見えます。
もし現実生活のコントロールに困っていたら、誰しも、うまくいくゲームの世界に、浸っていたいと思うのではないでしょうか。

必要とされる充実感


特にオンラインゲームでグループ(ギルド)を組むような、集団で行うゲームでは、参加し、スキルを上げることで、賞賛され、必要とされます。
あなたがいないとダメだ、なんて現実世界ではそうそう体験することではありません。


家庭の困難

親子で接する時間が短い、家庭に混乱があるなど、ご本人が所属している家族のリスクがあることがわかってきています。
また親がこどものゲーム使用に際して、強く制限しすぎたり全く制限を設けなかったりといった、適切な指導ができていないこともリスク要因となるようです。

しかし、これを家庭の責任とするのは理解不足です。世代間連鎖、貧困、格差などの社会的な要因によって、このような状況は助長されることを、忘れてはならないと思います。

これは家族の選択で困難ではありませんが、片親もゲーム障害のリスクであることが、複数の研究で示されています。

衝動性が高い

衝動性が高い人は、満足を遅延できないなど、目の前の快感を取りやすい性質があり、リスクとなります。
この傾向はギャンブル障害でもリスクが高い事が分かっています。

神経発達症がある

第一回で述べた、ゲーム障害によって、社会的な報酬(評価ややりがいなど)等に、感受性が低くなってしまうと言う脳の変化について述べました。
神経発達症の方は、もともとその症状によって、社会的な報酬の感受性が低くなりやすいため、ゲーム依存を進行させてしまうリスクがある、と言うことも研究でわかってきました。 

自己治療のためにゲームをしている

上記のように、苦しさを低減し、困難な環境で生き延びていくためにゲームを手にとる、自己治療的な側面があります。これはアルコールや薬物、ギャンブルの依存症と同じ構造です。

ゲームだけ止めさせようとすると、苦しさだけが残ります。ゲーム障害の方は診断がついていなくても、うつの可能性が高いことが、研究で示されています。
ゲームを止める、減らす事は中間目標ではあっても、治療の終着点では無いのです。
それではどのように治療していけば良いのでしょうか。

次回③で、治療についてお話ししたいと思います。

(矢田の丘相談室 田中)


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