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なぜゲーム依存になるのか①

こんにちは、矢田の丘相談室の田中です。

ゲームはやめようと思えばすぐ止められる、と言うふうに思えますよね。
電源を切る、スマホを置く。
簡単そうに思えます。

でも実際には、
車を運転しながらスマホゲームをしてしまう人、
オンラインゲームでひきこもってしまう人、
ゲーミングを適切なタイミングで止められない人が大勢いらっしゃいます。
これはどうしてなのでしょうか。

薬物じゃないのに薬物のように働く⁈


例えばアルコールや覚せい剤のようなものは大変強い効果がある薬物ですので
長期にたくさん使っていれば止められなくなると言うのは、
なんとなく理解できる感じがしますよね。
また、近年問題になっているのは、市販薬や処方薬の依存で、
これらも薬物依存の一種です。
これら物質を使う依存症をまとめて物質嗜癖といいます。

一方でゲームやギャンブル買い物といった、薬物を使わない依存症のことを行動嗜癖といいます。
行動嗜癖は、アルコールとよく似た依存症ではないかとは予測されてはきたのですが
どうして薬物を使わない(体に直接取り入れない)のに
止められない人がこんなに出現するのか?と言う理由は、
実は最近までよくわかっていませんでした。

ここ10数年で脳科学が飛躍的に進歩して
どうしてゲームが止められないのかということがだいぶわかってきました。

気持ち良いことを繰り返すよう命令する、脳内報酬系

人間を始めとした動物の脳には、快楽を認識する報酬系と言う部位が存在します。
心地よいと感じると特定の脳内物質が放出されて、簡単に言うと
「その行動を繰り返しなさい」
と言う命令を出すのです。

これは人類が生き残るのに非常に重要な機能でした。
金銭的な報酬を得たり、何か課題を達成したり、
といった社会的な報酬から、
食欲や性欲を満たすようなもう少しプリミティブな欲求まで、
生存に役に立つ行動を達成すると快感を感じるようにプログラムされているのです。

快感を感じる事≒生存に役に立つことを、
繰り返し行うように、人間の脳は設定されています。

長期長時間のゲーム曝露で脳の報酬系が変化する

ところがこの脳内報酬型は、通常では起こり得ないような長期大量の快感にさらされると、
望ましくない変化が起こってくることがわかってきました。

例えばスマホやインターネット、テレビゲームのようなものは
長い長い生物の歴史の中でここ2 、30年で急速に発達したものです。
こういった新しいものに、脳内報酬系は対応するのがへたくそなのです。

それでは、長期間長時間ゲームをやり続けると
脳内報酬系はどうなってしまうのでしょうか。

趣味で楽しい時間や仲間と語り合う楽しい時間、
働いてお金を得ることなど
それまでは心地よいと感じていたことに
反応しなくなってしまうのです。

これを報酬欠乏症といいます。

報酬欠乏症

報酬欠乏症では、日常の小さな喜びに心地よさを感じられなくなるだけではなく、
どこまでゲームをやっても満足がやってこないと言う症状が発生します。
常に不平不満を言っているような状態です。

例えばゲームをするために高額なパソコンを欲しがる、
でもどんなに高性能なパソコンを手に入れてもまた次のパソコンが欲しくなる、
といったようなことが発生します。

一方で、これからゲームをするぞといったような
ゲームを予感させるような刺激にだけ強く反応する、極めて狭い範囲にしか興味を示さなくなるのです。(普通の人が強く反応するものに、脳が反応しなくなる)
したがって以前やっていた、趣味のようなものが消えてしまいます。

さらに長時間ゲームに曝露していると
ゲームをしてもそれほど興奮しなくなって
ゲームを止めると不快な反応が出現する、
ゲームをやっても気持ちよくないのに、止められない、
と言う症状に至るのです。(耐性上昇)

これがゲームを止められないゲーム依存のメカニズムです。

アルコール依存症の方が
もうおいしくないとわかっているのに、
手が震えるのを止めるためにお酒飲んでるのとほとんど同じです。

つまり依存薬物を止めた時と同じように
離脱症状が発生することがわかってきたのです。

近年の様々な研究で、ギャンブリングでも似たようなことが起こっていることもわかってきました。
行動嗜癖でも、薬物依存と同じように止めるのが大変苦しいし、難しいと言うことが判明してきたわけです。

どういう人がゲームにはまりやすいのか、どうやって止めれば良いのか、どこに相談すれば良いのかなど、対応策は次回以降にお話しします。
②に続く

(矢田の丘相談室 田中)


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