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往復小説

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嘗ての往復書簡をコンセプトにMASATO氏と始めた往復小説。2019/8/22:天外黙彊氏も加わり、小説によるコミュニケーションを公開しております。ココでは私のパートを公開。一話… もっと読む
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短編:いただきます

泣くとは思わなかった。 人が何を思って泣くか、わからないものだと彼は思った。 自分にとっては単なる無意識の行為、習慣に過ぎない。 とても泣くほどのこととは思えないが。 それでも堅い表情に鋭い眼光を宿した彼女は自ら想像だにしなかったほど泣いていたし、その様に彼は激しく胸を動かされる。 彼女は顔を真っ赤にし、何事かと自ら狼狽え、慌てて手で涙を拭う。 彼が癒やされたとも知らずに。 彼女とは言ってしまえば他人である。 仕事上の付き合いとも言えるが、もっとも付き合う前に