COP15

今日のタイトルを見て、何が話題なのか直ぐ分かれば、かなり環境問題を意識している人ってことになるだろう。日本のメディアでは、「SDGs」という言葉に溢れ、欧米では、「Climate Change」が注目を集めているけどね。

しかし、今日のテーマ「Biological Diversity(生物多様性)」は、欧米を含め日本でもあまり注目されていないらしい、次の記事を読んで知りました。記事を読みながら、環境問題と英語の勉強をしたので紹介しよう。

まずもって、この記事の中に「COP15」という言葉は使われていない(写真にあるけど)。

実は、「United Nation Convention on Biological Diversity(CBD)」にサイン(ratify)した国が集まる会議が、カナダのモントリオールで開催されているけど、「COP15」の言葉にその会議の意味は含まれていない。COPというのは、「Conference of the Parties」の頭文字で、直訳すれば、「締約国(条約を承認した国party)の会議」って事になり、COP15だけ書くと、何の条約か分からないけど承認した国が集まって15回目の会議をしてるよって事になる。したがって、日本のニュースでお目にかかる「国連生物多様性条約第15回締約国会議(COP15)」ってのは、意味的に端折りすぎ。

まあ、重箱の隅をつつくような指摘はこのくらいにして、The New Yorkerの記者の視点からこの会議のことを知ると、勉強にはなるけど、将来の見通しの暗さに暗然としてしまい、本当に人類は生き残れるのだろうか?そんな疑念と不安感しか残らないが、そこから一人一人が真剣に解決策を考えていかなければならないと思える内容だった。

まず、記事の前半で、「Red List of Threatened Species」という絶滅危惧種のレッドリストが半年毎に更新されていることを初めて知った。偶然ではなく、ちょうどCBD会議開催に併せて更新され、700種の生物がこの絶滅危惧種のリストに追加された。更新ごとに、絶滅危惧種リストの数は増え続けているという…

こんな状況下で、15回目の生物多様性条約会議が始まった。

ここで「Some twenty thousand delegates from around the world have gathered…」と文章が続いていたので、私が感じたのが、「お、2万人以上集まったのか!」でした。しかし、他の記事では1万8000人という記載があったので、「some twenty thousand」の意味合いに少ない数も含まれることを知りました。

アントニオ・グテーレス国連事務総長のオープニングリマークスの英文が続きます。

"Our land, water, and air are poisoned by chemicals and pesticides, and choked with plastics," Guterres observed.

https://www.newyorker.com/news/daily-comment/can-the-un-save-the-world-from-ecological-collapse

私が分からなかったのが、「observe」。なんと、堅い表現の直接話法で「〜と言う」の意味がある。当然、「said」に置き換えられるけど、The New Yorkerの記事で「said」はあり得ないだろう。こういう表現が身につけば英語上級者なのだろう。

次に、CBDに関心が向かない理由の説明が続きます。まず、CBDは、遡ること1992年のリオデジャネイロで開催されたEarth Summit(地球会議)に端を発しますが、実は、気候変動の枠組み条約の合意も同じ会議でなされていました。

「the climate-change treaty has received the lion's share of the world's attention, 」という文章。「the lion's share」も知らなかったが、これも知っているといいだろう。「1番大きい分け前」になるので、日本語的に言えば「美味しいところどり」だろう。注目は気候変動にだけ集中していることが分かる。

じゃあどうして?

この記者が考える理由を読んで驚きました。ワシントンDCに1つの理由があるって言っています。Earth Summitの数ヶ月後に、アメリカ合衆国上院は、気候変動の枠組み条約に関して満場一致で可決したにも関わらず、CBDを却下したんです!

共和党議員の否決の理由によれば(非常にもっともらしい言い訳だけど)、(表向きに)米国の主権と知的財産権の侵害にあたる懸念があるから。「え? 何それ?」って理由ですよね。CBDはアメリカ合衆国上院の議題にも挙がったことがないという。なんと、この条約の草稿は、共和党政権時代のジョージ・H・W・ブッシュ大統領の頃に作られたというに、うーわ、驚きですね。

そして、説明は続く。これが当に、「American 'exemptionalism'」ということだ。米国は、言い出しっぺで、世界のルールを作ろうとするけど、自分だけ特別で例外だよって言って、最後に翻る… これが「exemptionalism」の意味です。

実は、国際連合加盟国でCBDに調印していないのが、米国だけです。信じられますか?この状況を、「embarrassing, unconscionable and self-defecting」と酷評する人がいます。ここで、また知らない言葉が出てきました。「unconscionable」ですが、「法外で、不当で」なんて意味になります(conscionableと対比して覚えておくといいでしょう。たぶん、consciousの派生語だろう)。

どちらにしても、世界のリーダーを自負する米国が存在しない状況で、CBDの会議がまとまらないのも妥当だと思う。2002年にCBDで取り決められた条約によれば、2010年までに生物多様性の損失を「著しく軽減させる」という目標でしたが、誰も何の努力もせず、2010年の報告で、「an abject failure」という悲惨な結果に終わりました。じゃあ、次は新たな気持ちで取り組もうと、日本の愛知県で開催された会議で、AIchi Taregts(愛知目標)が掲げられました。「愛知目標」も初耳でした(国連気候変動枠組条約における「京都議定書」は知っていましたが)が、ここで、20項目の目標が挙げられていて、その中の1つに、17%の陸地と内陸の水域、また、10%の沿岸域及び海域の自然を保護することが含まれていた。2020年9月までに、いくつかの沿岸部で進展がみられたけど、20項目のゴールはどれ1つ達成できず、何もかも妥協されてしまったようだ。

今回モントリオールで話し合われている内容は、「Post-2020 Global Biodiversity Framework(ポスト2020国際生物多様性枠組み」に位置づけられている。最新の草稿では、22項目の目標が検討されていて、その中で最も目を引くのが、2030年までに自国の陸地と海を30%保護する「30 by 30」と縮めて書かれる目標だろう(なんと、CBDに締約していないバイデン政権、モントリオールに大規模な派遣団を送っていて、この「30 by 30」の目標だけ取り組むらしい)。

この記者は、ここで大きな疑問を投げかけています。より控え目な古い目標を達成できていない所に、更に野心的な目標を設定する意味があるのか?17%の陸地を保護できなかったのに、次の8年で30%の保護ができるのか?想像できないそうだ。多くの専門家も同じような意見を持っているみたいで、このポスト2020目標も愛知目標と同じ運命を辿ってしまうと考えている。過去10年間、保護活動への投資を増やし続けたにも関わらず、生物多様性の減少カーブを抑えることはできていない。

目標値を決めることは非常に難しく、設定しないよりまし程度になっているように見えます。モントリオールでの協議で何も決まらない危険性もある。草稿を見れば、意見の不一致だらけであり、700箇所も黒塗りされた文が含まれている。言葉の選び方、内容の訂正も含め、かなり激論が交わされていることがうかがえます。

「We need a text with teeth - and far fewer brackets. 」とアルゼンチンの教授が話しているけど、ここで「a text with teeth」の意味が分からない(アルゼンチン的表現?)。「歯のある文章」→「歯ごたえのある文章」→「噛み応えのある文章」→「内容がしっかりある文章」と考えていいのでしょうか?

最後のパラグラフで、Red Listの意味合いは、人々に自然界を大事に思わせる事だが、明確に時間が無いことも示されている。最新の更新で、オーストラリア原産の2つのカエルが絶滅した。

"For tens of thousands of years, there were these little frogs that were calling their hearts out in these rainforests,"
"Now it's silent."

https://www.newyorker.com/news/daily-comment/can-the-un-save-the-world-from-ecological-collapse

世界はどこに向かっていくのだろう。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?