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「本を囲んだ語り部屋」2024/3/17佐々木俊尚さん『時間とテクノロジー』

日曜朝のX(Twitter)スペース「本を囲んだ語り部屋」
3/17は佐々木俊尚さんの『時間とテクノロジー』を取り上げました!!

過去を記録できるという文明の進展。しかしそれによって、過去のもつ意味そのものが変化しようとしているという指摘は刺激的です。かつてはひとつの原因がひとつの結果に結びつくような「因果の物語」で世界を捉えられていたのに対して、現代は「確率の物語」「べきの物語」「機械の物語」が立ち上がっていると指摘します。そのような世界の中で求められるのは、この瞬間に遍在している機械や他者、仮想とともに生きる物語である「共時の物語」であるというメッセージはいろいろと考えるきっかけとなります。

語り部屋ではまず過去と現在の関係性について語り合いました。日常の中では過去が過去でなくなる経験はありますね。例えばいつでもどこでもアクセスできるストリーミング音楽。いま発表された曲も数十年前に発表された曲も、同じような距離感で手に取ることができます。また様々な記録がアーカイブされていく中でも過去が過去でなくなる経験も現在進行形でしています。その中では自分の記憶よりもアーカイブされたデータをベースとして過去を捉えることも多くなっています。忘却できない記憶の引力の中で今を生きていることを感じました。過去から現在、そして未来へと流れていくと思っている時間の流れが変わっていることに気づきました。

一方で時間の捉え方は人によって異なるのも事実です。ギリシャ語では時間を表す言葉が2つあります。1つは主観的な時間であるクロノス時間、もう1つは主観的な時間であるカイロス時間です。人間は2つの時間を持ちながら一瞬一瞬を過ごしているとも言えます。かつては主観の主導権は自分に合ったものが、テクノロジーの進化によって客観に寄せられているようにも感じました。

後半では「確率の物語」「べきの物語」「機械の物語」が立ち上がっている中で、いかに主体的に生きていくかについて考えました。その中では将棋における人間とAIの勝負の中では、時にAIが物語のスパイスになるというお話は興味深かったです。勝負を観戦している人の興味関心は正しい一手かどうか以上に人間がどう決断するかに着目しているというエピソードから、「機械の物語」の中でもその物語を受け止めつつも「因果の物語」を見つけていく人間の力を感じることができました。

様々なお話から目の前にはいろいろな種類の物語が広がっていることを感じ、佐々木さんの言われる「共時の物語」の理解を深めたいと感じる語り部屋でした!


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