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TENET(テネット)考察|「死後の世界へようこそ」、あるいは、死せるキャット

テネットのネタバレ、激しくしています。

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テネットをみてから(2回みたけど、もう一度みたいな)、どうも、歯に挟まった何かのように、頭の中に、「あれってどういうこと?」というのが残ってしまっています。

で、記事をいくつか書いたのですが

(嬉しいことに、わかるわかると言ってくださった方が、何名かいたようです)

それでもまだひっかかりが残ってるので、前回書いた物とかとの整合性を考えず(起きてしまった事がしょうがないように、書いてしまったものはしょうがない)また、ある視点から文書を書いてみよう、と思っています。

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今回は、この物語の大事なことは、映画の外で起きてる、という前提で書いてみます。

映画の冒頭のシークエンスを思い出しましょう。

多くの人が指摘してるように、冒頭のオペラハウスのシークエンスは情報が錯綜し、人間関係が複雑です。オペラハウスのシークエンスは、相当な情報量で、一度みただけでは何がなんだかわかりません。

しかし、ここにもちょっとした罠がしかけられています。よく考えてみると、映画の始まりとはどこを指しているのでしょうか?それは時間的な冒頭ではなく、映画のタイトルバックの前後を意味するのではないか?

それが、主人公が拷問をうけ、自殺を試みようとするシークエンスです。実は、この先でみていくように、ここには、この映画の1つの罠(そして、大きな罠)が、ひっそりと、しかも、大胆にしかけられています。

それは、主人公の「歯」をめぐる違和感から始まります。また、それは、線路の上におかれた、時計をめぐるやりとりの不自然さでもあります。

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映画のタイトルがはじまったあと、「死後の世界へようこそ」と言われ、このテネットというミッションを始めることとなる主人公。私が、気になったのは

「口を直しておいた」というセリフです。

主人公は拷問で歯を抜かれていたはずです。その歯が元どおりになるということはどういう事なのでしょうか?また、テロリスト(と思われる一味)は、拷問時に、時計を巻き戻していました。あれは何を意味しているのでしょうか?

ここで、逆行銃の設定を思い出してみましょう。逆行銃はその特質ゆえに、打たれたものは致命傷を追うとあります。その理由は放射線とかなのでしょうか?理由はわかりません。たしかにその影響でキャットには回復後も大きな傷が残っていました。

でも、逆行銃ではなく、抜歯のような物理的な痕跡は過去にもどったらどうなるのでしょうか?これは完全に仮説なのですが、「歯は元に戻る」ということはないのでしょうか?

この仮説は、時計を巻き戻すという行為がなかったら、全くナンセンスだと思うのですが、あの時計を巻き戻すという行為が、(実は仲間であった)テロリストが、主人公の時間感覚を麻痺させるために、行った行為なのではないか?つまり、主人公の歯は抜かれ、結果元に戻ることが約束されていたのではないか?と想像するのです。

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さらに、映画を普通にみたとき、私たちは、拷問のあとCIAの救出劇が行われ、昏睡状態になった主人公を保護するかのようなシークエンスが続くことを想定します。

しかし、あの拷問のあと、主人公におきたことは、CIAによる救出ではなく、偽装された自殺ピルをのみ、昏睡状態になった主人公を、回転扉に入れることです。

(おそらくCIAも回転扉を保持しています。そうではなくて、アイブスたちが、逆行扉のルールを知っているわけがないのですから)過去に戻った上で、逆行をさせたことになるはずです。

そして、ここからが重要なのですが、

その後、CIA=テネットは、元の時代の

「もう一人の主人公を殺害」

してるはずです

なぜなら、同じ時代に二人の人間が存在することを、物語は許さないはずです。それはこの映画の中のルールで規程されているように、お互いが衝突し、消滅を招くためです。

だから、映画の冒頭で(タイトルバックの後)主人公は、CIA=テネットの上官から、

「死後の世界へようこそ」

と宣言されるのです。



(なお、この「過去に戻ることで、戻る歯」という仮説をサポートする1シーンがあります。それは傷をめぐるシークエンスなのですが、主人公が初めて過去にもどった時、腕に怪我をしていましたが、あれはどの段階でついた怪我なのかちょっと私わかってないのです。それは過去に戻る前についていた怪我が、過去にもどったことで、再発したという暗示なのではないでしょうか?ただ、ここ正直よくわかりません)

歯が元にもどった、という事と、テロリストが巻き戻す時計というシーンのひっかかりから、殺害される主人公という意外な地点に来てしまいました。ただ、あのセリフをそのままとると、この結論にたどり着いてしまうのです。なんかとんでもないな、と思いながらも、一度この仮説をたててしまうと、他にもどれないように感じています。

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次は、ラストのシークエンスに関して。

そこでは、映画的画面だけでなく、その瞬間、”生きている”登場人物は圧倒的にすくなくなっています。

(車の中で主人公に殺された)プリヤ

(キャットに殺された)セイター

(スタルスク12で死んだ)マックス

と、物語を運んできた主要な人物等はすべて命を落とし、残っているのは、

・主人公

・キャット

・ニール

の三人という状況です。

あのラストシーンから、主人公、キャット、ニールの三人による擬似的な家族の始まりを想起しないことには相当の努力が必要だと私は感じます。

一流の学校の前で、妻と息子を見守る父という擬似的な家族の構図があります。

その幸福なシーンを前に、私は、この映画は、

「冒頭で死んでしまった(本人はそうとはしりませんが)主人公があのラストシーンから始めるために、すべてを仕組んだ再生の物語」

と仮定ができると思うのです。

ちなみに、この主人公は、ニール=マックスが最後の戦いで死ぬ事を、知っていますが、映画のラストでは、まだ主人公とニール=マックスの交差はありません。なので、主人公は、ニールとマックスが同一であることを予想すらできていません。

そして、おそらくですが、キャットとニールと住むようになる主人公は、どこかのタイミングで、ニールマックスとなることを、あのラストシーンの後に(物語の先で)主人公は知る事になるのでしょう。

しかし、それでも、映画の先で、主人公は、時間の輪を閉じさせるために、また、結果として、キャットを救ううために(ここでは親殺しのパラドックスは設定されているのだと思います。命がかかった段階で、博打ができないのが主人公の設定です)マックスにしかできない仕事をマックスに託したのではないでしょうか?

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さて。もう一度、ラストシーンに話をもどします。

名もなき男(今後主人公といいます)が、キャットとニールを遠くから見守るシーンです。

このシーンで、大事だと思うのは、主人公のスーツの着こなしが、映画の中で最も洗練されていることです。

この映画において、主人公のスーツについて、言及が2回ありました。

・クロズビー(マイケル・ケイン)からセイターの情報を聞いた際に「その服はブルックスブラザーズ、上流階級はもっとよい着こなしをする」と指摘されたシーン

・キャットと初めて出会うシーンで、「時計もスーツも身の丈以上よ」というように言われ、その着こなしの付け焼き刃さを指摘されるシーン。

です。

この2つの指摘は、今後のスーツの着こなしに注意をせよ、という映画的な警告です。そして、ラストシーンの主人公のスーツの着こなしは、明らかにどうにはいっています。

ここからの仮説は、ラストにおける、主人公は、もっともスーツを上手に着こなしている。ラストシーンの主人公は、映画内の主人公ではなく映画の後からきた主人公です。

(おそらく、この同時代、別の場所に、着こなしがそれほど上手ではない主人公が存在しているはずです)

そして、その主人公がみた世界は、映画が終わった未来であり、その未来ではキャットは死んだ未来です。

考えてみれば、あの場所に主人公がいるためには、携帯電話の履歴があったからです。その履歴は、パメラによるキャット殺害の履歴だったはずです。タイムリーな同時性としての履歴で、あの場所にいることは考えられません。主人公は一度映画の後に出て、再度映画内の時間に戻ってきてるのです。

そして、(おそらくキャット殺害時の)履歴をみた主人公が、回転扉をつかい、過去に戻り、キャットを救ったのです。こうして、キャットが存在する世界が生起するようになるのです。

カーチェイスのシークエンスで、キャットを救ったこと。致命傷を与える逆行銃で、打たれてしまったキャットを回転扉をつかって(その放射能や中性子的影響を緩和し)助けた事。主人公の行動の多くはキャットを救うことに費やされていました。

その総仕上げが、プリア殺害によるキャット救出だったのです。

まとめると、

映画の始まりにおいて、逆行扉を使い、殺され新しい人生を始めた主人公が、ラストで、逆行扉を使い、プリヤを殺しキャットを助ける。そこから、ニール(マックス)との絆が始まる物語。

これが、この映画における主人公の物語を発動させている行動なのではないでしょうか。


って、これ本当にそう言えるのかな??・・・・ということで、3回目、またいかねば。


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ちなみに、最初に書いたやつ







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