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無重力の近道
あらゆる物の外側にばかり重量を持たせるようになってしまった私たちにとって、娘の夢に出てきたような、その重みのほとんどが中心にある物たちは素晴らしいと思う。 娘はまず私に、自分が妻と公園に散歩に行くときに通る近道を、父ちゃんこれ、と言って手渡した。 2歳半になる娘の夢の装置はまだ新鮮そのもので、その近道の中でも家の裏の坂道の勾配具合が見ているだけで疲れてくる。 娘の左の掌から少しはみ出している近道全体の、坂道は第一生命線から中指の付け根くらいまでしかないのに私はふゅえふゅえと息を切らしていた。 それを私が懐にしまうと娘は自分の後ろに果てしなく列をなしている物たちに振り返って微笑み、すぐ後ろで待っていたチケットをつまんで私に差し出した。 そこに印刷された文字は震えていた。 それ自体が意味を持っているとされる文字たちが数秒後にはただの運動になって文字としては読めなくなる私の性質をどうやら娘も持っているようだ。
2018年6月26日
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