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マスクを辞めた施設と続けた集団の違い〜東京都におけるインフルエンザの集団事例の傾向から分かること〜


学級閉鎖や学年閉鎖が止まらない

2023年5月に新型コロナウイルス感染症が5類になったタイミングに合わせて、学校でのマスク着用が「原則不要」と通達されました。

5類感染症への移行後の学校における新型コロナウイルス感染症対策について(通知)

「5類感染症への移行後の学校における新型コロナウイルス感染症対策について(通知)」より抜粋

そして2023年秋〜初冬
過去にはなかったタイミングでのインフルエンザの感染拡大が日本を襲っています。

三重県におけるインフルエンザ定点当りの患者届出数(過去10シーズン)

それに伴い全国の学校で学級閉鎖や学年閉鎖が急増しています

三重のインフルエンザ感染者数が今季最多更新 25校が学年閉鎖 33校学級閉鎖(三重テレビ放送) − yahoo!ニュース

施設の傾向別による感染状況の変化

では、この傾向はすべての施設で同様に起こっているのでしょうか? 東京都感染情報センターのhpでは、2009年以降シーズン毎のインフルエンザ流行状況を確認する事ができます

ここに掲載されている「インフルエンザ様疾患*による集団事例の報告数」について、直近10年の推移を整理してみました。

東京都の資料から再整理

この推移をみると、大別して3つのグループに分けることができそうです

グループ1 コロナ禍に関わらず構成員自身の感染対策が困難な施設

保育所・幼稚園・小学校における集団事例(学級閉鎖等の臨時休業)の報告件数推移

このグループは乳幼児や年少の児童など、構成員の多くが適切な感染対策が難しいため、地域で感染が拡がっているとウイルスの侵入を阻止できず、社会での感染が拡がった22−23シーズンの段階で5類化を待たずにコロナ禍前と同じような報告数となっています(幼稚園はコロナ禍前より少なくみえますが)

グループ2 5類化以降もマスク含めた感染対策を続けている施設

医療機関・社会福祉施設における集団事例の報告件数推移

このグループは感染症に対して脆弱な高齢者や傷病者が構成員の多くを占めるため、5類化後もマスク着用を続けています。その結果、地域社会で感染が蔓延した22-23シーズンも、5類化後の23-24シーズンもクラスターの発生をコロナ禍以前より大きく減少させることに成功しています。
コロナ禍以前も適宜マスク着用は呼びかけられていましたが一定数インフルエンザの侵入を許していました。しかし、コロナ禍の経験を活かして【どの程度対策をすればクラスターを防げるか?】を学び今も継続していることの成果がはっきり分かります。

グループ3 5類化に合わせて「原則マスクは不要」とした施設

中学校・高等学校における集団事例(学級閉鎖等の臨時休業)の報告件数推移

このグループは感染対策を行うか行わないか判断し、適切に実行できる構成員が大半を占めますが、文科省が「原則マスクは不要」という通知を出したこともあり、5類化前後で組織内の集団生活におけるマスク着用率が大きく下がりました。
その結果、地域社会で感染が拡がっても施設内でマスクを継続していた22-23シーズンはコロナ禍前より学級閉鎖は少なく抑え込めていましたが、5類化後の23-24シーズンはたった2ヶ月でコロナ禍前5年間を超える件数が報告されています。
つまり、コロナ禍前に戻ったのではなく【コロナ禍前より酷く】なってしまいました
この傾向はインフルエンザだけでなく、プール熱や溶連菌など他の感染症でも同じ状況です。

身近に危機が迫れば備える、危機が去ったら緩める ぜひみんなで取り組みましょう

今は日本全国で様々な感染症が過去にないレベルで拡がっています。これから空気が乾燥し気温が下がれば、さらに感染症は勢いを増すと思われます。
年末年始の行事、帰省、子どもたちの進学や卒業、就職、転職…… これから多くの人たちにとって人生の大切なイベントが目白押しです。そんなときだからこそ経済に悪影響を及ぼす行動制限を伴わなくても実施できる
「室内や密な場面でのマスク」
「帰宅後や食事前、トイレ後などでの手洗い」
「換気や加湿」
「体調不良時の外出自粛」など

感染対策マナーは、地域の感染状況に合わせてレベルを上げ下げしませんか?
感染者数が多い時はマスク着用場面を増やす 少なくなったら減らす
大切なのは「コロナ禍(に伴う制約感)を【終わらせる】」ことではなく、「コロナ禍から学び【生活の知恵を進化させる】」ことではないでしょうか?
ぜひコロナ禍の経験を無駄にせず、病気になって苦しむ時間を減らして楽しい年末年始や春を迎えましょう

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