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山師の仕事②

2004年に徳島の山奥、祖谷(いや)という村で山師の仕事をはじめた。世間一般では、林業と言われ、森林組合や大きな資本のある会社がやっている事業とやり方は違うが木材の素材生産というゴールは同じである。

大人数でやるか、3人で全てを終わらせるかなどの違いは沢山あるように思う。自分は山師の方法しか知らないので、それを少しずつ紐解いていこうと思う。

前回、書いた伐採の方法についてもう少し説明したい。教科書やネットではロープや滑車を使って一本一本倒す方向に引っ張るなどと見かけるが、3人で20町歩の山を切って出すことを考えればその方法では無理だ。

谷に向かって勢いよく伐り倒す。これを親方から教えてもらった。吉野林業では山側に倒すと言われているから真逆の方向である。

「受け口なんか下に向いてて、三角やったらええねん」

と講習では2時間以上かけて、説明するところを10秒で終わらせ、実際にやって見せてくれた。そして2本目を

「拓よー、伐ってみるか?」

といきなり僕にやらせてくれた。

生まれて初めてのチェーンソーは直径40センチ位の杉の立木を伐り倒した。木を切り倒す方法として受け口・追い口・ツルという基本的な技がある。

それぞれ極めるにはそれなりの年月は必要かもしれない。しかし、谷側に伐り倒すのは基本的にそれほど難しくない。

伐倒方向に受け口を作る、それの反対側から追い口を入れ始め、チェーンソーの歯の2枚分くらいまで切り進むとクサビを入れ込む。

このクサビというのは上の写真のような黄色のやつだ。堅い木で作ってもいいのだが、すぐに割れるので市販の物を使う。

これをセットハンマーで打ち込むのが、伐倒では1番大変な作業と言われている。ちなみにこのクサビを入れずに切り進むとチェーンソーの刃が挟まれ悲惨な事になる。

この初歩的なミスはベテランでもやらかす事があり、その対応はまたの機会に書きたいと思う。

立木の伐倒という作業では、チェーンソー、クサビ、セットハンマーがあれば何とかなりそうだ。そして、腰に鉈(なた)と鋸(のこ)をぶら下げるのが祖谷の山師のスタイルである。

これは立木を切る際に邪魔になる下草を刈ったりするのにも役に立つ。最期にもう一度だけまとめよう、肩にチェーンソーを担ぎ、腰袋にクサビとセットハンマーを入れ、鉈と鋸も腰袋のベルトにぶら下げる。

これで一人前の山師の出来上がりである。

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