取締役・監査役の義務と責任
最近参加したタイトル名のセミナーのメモです。大変有意義だったのでこちらでシェアします。
取締役や監査役とは本来何を行うべき人なのか?既にその職にありながら実は詳しい法的背景を知る機会がなかったという方や、将来を見据え知っておきたい方、または経営に興味のある方は是非ご笑覧ください。
尚スピーカーは三浦法律事務所の三浦亮太先生でした。大変わかりやすいお話でした。
コーポレート・ガバナンスへの注目
・かつては不祥事ドリブンでの法律改正
・安倍政権で改めて注目(理由は定かではないが、政権が重要視している株価の高水準安定に不可欠な要素であるという考えからかもしれない。)
・安倍政権の成長戦略(日本再興戦略/未来投資戦略)の中でもコーポレート・ガバナンスの整備は政権当初から継続的に取り上げられている。
コーポレート・ガバナンスにおける3つのキーワード
①スチュワードシップ・コード
・2017年5月の改訂で、議決権行使結果の個別開示により、反対の議決権行使を行った機関投資家や、その理由の特定が可能に。
→安易な賛成を防ぐ
スチュワードシップコードは、金融機関による投資先企業の経営監視などコーポレート・ガバナンス(企業統治)への取り組みが不十分であったことが、リーマン・ショックによる金融危機を深刻化させたとの反省に立ち、英国で2010年に金融機関を中心とした機関投資家のあるべき姿を規定したガイダンス(解釈指針)のこと。
スチュワードシップコード|証券用語解説集|野村證券
②コーポレートガバナンス・コード
・「コード」は法律ほどの強制力はないが、十分実際的な効力はある。(日本の国民性?)
・策定までが早い。改訂も楽。
» 改訂コーポレートガバナンス・コードの公表 | 日本取引所グループ
③改正会社法
・2015年5月に施行。「社外取締役、社外監査役の社外性要件厳格化等」など8つの改訂ポイント。
» 経営への影響大! 5月に施行された改正会社法の重要ポイント | エヌ・ジェイ出版販売
取締役の職務
・代表取締役と共に取締役全員で業務を「決定」し、代表取締役を頂点とする執行のピラミッドを「監督」する役割を担う。
監査役の職務
・取締役の職務執行を監査する
・各監査役ごとに権限を行使できる(取締役はあくまで取締役会での1票のみ)
・定款に特別な規定がない限り、財務諸表だけでなく、業務全般の監査を行う。
・多くの職務のうち大きな権限を有するものがあるとすると以下の2つ。
1)監査報告の作成(無限定適正意見(※)を出さない場合は、株式市場または取引銀行に大きな影響力を及ぼすことができる)
2)取締役の違法行為差止請求権
※無限定適正意見とは・・・
一般に公正妥当と認められる企業会計の基準にしたがって、会社の財務状況を「すべての重要な点において適正に表示している」旨を監査報告書に記載する。
機関設計
・論点は大きく2つ
①取締役会の役割(個別事案 vs 戦略や計画のみ)
②監査役が取締役会での議決権を持つか持たないか?
マネジメント型・・・監査役会設置会社(重要な業務執行は取締役会で決定)
モニタリング型・・・監査役等委員会設置会社、指名委員会等設置会社(取締役会の決定対象は経営の方針と役員人事・役員報酬を中心)
善管注意義務
・取締役・監査役は会社に対して善良な管理者の注意をもってその職務を行う義務を負う。
・善管注意義務を負うのは弁護士や会計士と同じ。会社法は取締役や監査役を会社経営の「専門家」として扱っており、役員責任を問われる裁判でも、「専門家」として責務を果たしたか否かが問われる。
役員責任追及訴訟
・任務を怠れば会社から責任を追求される
・株主が会社に代わって取締役に対する請求を追求する訴訟を提起→株主代表訴訟
・責任を追求しない経営陣の役員責任を問うプレッシャーも日に日に高まっている。
→訴えないと自分が訴えられる
・役員責任は時効が10年
・株主代表訴訟は、損害賠償を勝ち取っても本人には一銭も入らない。
(あくまでも会社に代わって訴えたことになるので、お金は会社に入る)
・問題が発覚した後に株式を取得した株主も提訴請求可能。
・株主代表訴訟の訴状提出時の印紙額は一律1.3万円→訴額が高額になりがち
役員責任の類型
①具体的法令違反類型→このケースで訴えられると必ず負ける
・行為規則(違反行為が明示されているカルテルや贈収賄など)だけでなく、手続き規則(やる時は承認が必要という決まりがあるもの)の違反も対象。
・法令は外国のもの(GDPRやFCPAなど)や政令条例も含まれる。
②抽象的法令違反類型
1)経営判断類型
責任判断のポイントは
・リスクの洗い出しができていたか?
・ワーストケースを想定できていたか?
・定量的だったか?
2)監視義務(狭義)類型
・自分の担当業務以外でも責任が肯定される可能性あり
(認識していた又は認識し得たにも関わらず、適切な対応をとっていなかった)
3)内部統制システム構築義務類型
・仕組みを作れていなかった責任
・第三者責任もある(過労死の歳に遺族から直接経営陣が訴えられるケース)
不正に備える
・不正を生む3つのリスク(動機、機会、正当化)を消し込む
» 第8回 不祥事発生の要因を考える ~不正のトライアングル~ | 株式会社 日本経営協会総合研究所
・危険な思想
会社のために。やらなければ大変になる。
これまでもそうだから。よそもそうだから。(ハンカチ落とし的発想)
この程度なら大丈夫。このほうが丸く収まる。
→真面目な社員ほど当てはまりやすい。
まとめ
・取締役/監査役は経営のプロ
・守備範囲は会社全体
・「仕組み作り」、「健全な領空侵犯」が組織運営のポイント
・違法行為に裁量なし
・経営判断は①前提事実の認識と②合理的な判断 に分けてチェックされる
・距離(多義的)の遠いところで不祥事は起きる
(ロケーション、言語の違い、専門性によるブラックボックス化)
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