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物流領域におけるブロックチェーンの活用方法とその事例

この「web3事例紹介」マガジンでは、実際に存在するweb3やブロックチェーンの活用法を事例別に紹介していきます。

今回は、「物流領域におけるブロックチェーンの活用方法とその事例」ということで、ブロックチェーンが物流業界でどのように活用されているかを説明できればと思います。

今回は、アメリカの大手スーパーマーケットチェーン、Walmartの事例を紹介します。

Walmartについて

Walmart(ウォルマート)は、アメリカの最大手スーパーマーケットチェーンです。アメリカに住んでいたりよく訪れる方は知っているかと思いますが、アメリカのほぼすべての地域に展開しています。日本で言うイオンのような、食料から家具家電、生活用品がすべて揃う大型の商業施設です。

また、ウォルマートは2022年、2023年と、アメリカの食品小売業の売り上げランキングではアマゾンを抜いて全米1位となっており、商業規模の大きさとその有名さがわかるかと思います。

またブラジルや中国、ドイツなどに出店するなどして世界各国に進出しており、全従業員数は140万人を超えるほどの超巨大企業です。


https://corporate.walmart.com/

今回はそんなウォルマートの、自社サプライチェーンへのブロックチェーンの活用に関する事例を2件紹介しようと思います。

ウォルマート・カナダでの活用例:サプライチェーン管理システムをブロックチェーンに置き換え、データ不一致率を70%から1%へ削減

これはウォルマートに限った話ではないのですが、運送業界には、何十年もの間業界を悩ませているある問題が存在します。

それは、運送業者の請求書と支払いプロセスにおける膨大な数のデータの不一致です。

ウォルマート・カナダは、自社トラックとサードパーティの運送会社の両方を使用して、カナダ全土の配送センターと店舗に年間50万件以上の貨物を配送しています。

国境、時差、気候の違いを越えて大量の商品(その多くは生鮮品)を移動させるのは、業務上非常に大きなウェイトを占め、管理コストが相当にかかります。

例えば、出荷される各荷物の停車場所、かかった燃料、保存温度など、様々なデータが個別に集計され、これらは各請求書に組み込まれる必要があります。請求書に反映させる必要があるデータは200以上とかなりの数があるため、請求書と支払いのプロセスがデータの不一致を起こすことが多くありました。

請求書によっては、1枚の請求書の70%以上が照合作業を必要としているケースもあったようです。

なぜこのような不一致が頻繁に発生していたかというと、ウォルマート・カナダとサードパーティの運送会社の間で異なった情報システムが採用されており、それらが相互に通信できないことがあったためでした。

簡単にいうと、ウォルマートで使用しているデータシステムと運送業者のデータシステムに互換性がなく、データの照合を手作業で行わなければならないという、とてもコストのかかる状態になっていたということです。

そこでウォルマート・カナダは、ブロックチェーンを活用した施策を発案しました。

70社ある運送業者からの請求書とその支払いを管理、追跡するためのブロックチェーンネットワークを作成する、というものです。

この問題が顕在化してきたころ、ウォルマート・カナダの技術部門の一人が、ブロックチェーン・ネットワークを構築してプロセスを自動化することを提案しました。当時ブロックチェーンをこのような問題のソリューションとして使用する事例はなかったので、この提案には社内で懐疑的な声も上がったようですが、最終的にウォルマート・カナダは、ブロックチェーンの企業向けソリューションの開発・展開を行うDLT Labsにこの問題の解決を依頼することにしました。その後ネットワーク開発チームに、ウォルマート・カナダと提携している運送会社のひとつであるバイソン・トランスポートが加わり、本格的に開発が始まりました。

ネットワーク完成後、最初はウォルマート・カナダとバイソン・トランスポート間だけでパイロット版をテストし、その後2019年1月に両者間で本稼働し始め、2021年3月にはこのネットワークにDL Freightと名付け、他の69の運送会社にも適用されました。

このシステムは、運送業者からの入札オファーから配達証明、支払いの承認に至るまで、あらゆる段階で自動的に情報を収集するようになっており、これらの情報は自動的に取り込まれ、リアルタイムで同期されます。またこれらの情報は、取引の当事者だけが見ることができるようになっています。

DL Freightの導入前と比べ、請求書の不一致は70%以上から1%未満に下がり、運送業者は期日通りに支払いを受けられるようになりました。

ウォルマート・カナダは、ブロックチェーンを自社システムに導入し、管理システムを運送業者と統合することによって、コストの削減を行いました。これはブロックチェーンの効果的な活用例の一つだと言えるでしょう。

ウォルマートの食品サプライチェーンへのブロックチェーン活用例:消費者でさえも食品の出どころを追跡可能に

もう1件、別の理由でウォルマートが自社システムにブロックチェーンを導入した事例を紹介します。

サプライチェーンマネジメントに関して、特に生鮮食品においては、他のものより透明性とトレーサビリティ(追跡可能性)が重要です。

2015年、アメリカのファストフードチェーンであるChipotleの複数の店舗で大腸菌とサルモネラ菌による食中毒被害が確認され、被害者は100人を上回る大きな事件に発展し、これは当時日本でも大きな話題になりました。

この事件の原因は店舗で使用されていた野菜が仕入れ時に既に汚染されていたことでした。しかし、それらの野菜がいつどこでどのように汚染されたかの詳細は判明しませんでした。この事件によって、店舗での食品の衛生管理の徹底を強化する必要性が浮き彫りになったほか、同時にサプライチェーン上でこれらの調査を行いやすくする必要性も浮かんできました。

また中国でも大規模な食品安全問題が発生し、政府が10万トンの密輸豚肉、牛肉、鶏肉を押収したという事件も発生しています。

ウォルマートはこれらの状況を見て、食品サプライチェーンにとって2つの重要な懸念事項、すなわち食品詐欺の抑止と食品トレーサビリティの透明化を提起しました。

当初は、ウォルマートの食品のトレーサビリティにも難がある状態でした。

ウォルマートの食品安全担当副長が、チームにスライスマンゴーのパッケージから出所を突き止めるように指示したところ、すべてのデータがシステム内にあったにもかかわらず、突き止めるまでに6日と18時間もかかりました。

ここからウォルマートはIBMと提携し、Hyperledger Fabrickというブロックチェーンを基盤とする、新しい食品サプライチェーンの追跡システムを構築しました。

またDole、Kroger、McCormick、Nestlé、Tyson Foods、Unileverといったサプライチェーン業界の大手企業とパートナーシップを結び、食品のトレーサビリティ向上に役立つ新たなアプリケーションをブロックチェーンを使用して共同で開発することを発表しました。

2018年には、ウォルマートではマンゴー、野菜、イチゴ、乳製品、鶏肉、パッケージサラダ、ベビーフードなど、5つの異なるサプライヤーが提供している25以上の製品を完全に追跡できるようになりました。製品の瓶やサラダのパッケージから、消費者であってもその原材料が収穫された農場まで遡ることができるようになっています。

新たなシステムを使用して再度米国店舗にあるマンゴーの出どころを追跡したところ、従来のシステムでは6日かかっていたところが、なんと2.2秒で追跡が完了するようになったようです。

食品のサプライチェーンをブロックチェ―ンで管理することによって、大幅な追跡のコストダウンが為されたほか、消費者であっても手軽に原産地などの情報が手に入るようになりました。

さいごに

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NFTマーケティング・プラットフォーム「MintMonster」公式サイト
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参考リンク

Blockchain in the food supply chain - What does the future look like?https://tech.walmart.com/content/walmart-global-tech/en_us/news/articles/blockchain-in-the-food-supply-chain.html

How Walmart Canada Uses Blockchain to Solve Supply-Chain Challenges
https://hbr.org/2022/01/how-walmart-canada-uses-blockchain-to-solve-supply-chain-challenges

HOW WALMART BROUGHT UNPRECEDENTED TRANSPARENCY TO THE FOOD SUPPLY CHAIN WITH HYPERLEDGER FABRIC
https://www.hyperledger.org/case-studies/walmart-case-study

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