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ポートフォリオ・レビューの楽しみ #20

はじめに

写真家の平間至さんが不定期で開催しているポートフォリオ・レビューに参加しまして。(ヘッダ写真は本ポートフォリオ・レビューと関係ありません)

こちら、レビュー希望者が持ち寄った作品をオンラインで平間さんががレビューするという企画。以前にも参加したことがあって、とても楽しかったので久しぶりに参加したのですが、やはりとても楽しくて、時間があっというまに過ぎていきました。

目に見えないことを言葉にすること、それは闇から降りそそぐ言葉の破片をつかまえること。
写真を撮った本人が、言葉にできなかった部分をなんとか言葉にしていきたいと思っています。
そして言葉をきっかけに、今後の創作活動がより確かなものになっていくことを願います。

このポートフォリオ・レビューの魅力はこの文に集約されていますが、その楽しさの要素みたいなものを自分なりにもまとめてました。

ビジュアルで考えるということ

「考える」という行為が何なのか?というのはぼくのなかで、昔から常に大きな問いでした。考えているときは、言葉が媒体になっていることがほとんどで、言葉によらずに考えることはできるのか、そんなことにいつしか興味を持つようになって、むかしは現代美術に関心を持っていた時期もありました。

このポートフォリオ・レビュー対象者は、まず事前にポートフォリオ(複数枚で構成された組写真)を提出します。

ポートフォリオを組む際に、その人は写真を並べながらああしようこうしようと順番を考えたり、しっくりくる写真をチョイスしたり外したり。。そういう作業がとても「言葉を媒体としないで考えている行為」ぽいですよね。

もちろんその制作過程のなかで言葉で論理的に組み立てて判断する場合もあるでしょう。それも含めつつ、今度はそのできあがったポートフォリオを、レビュアーみんなで言葉で表現、再構成していきます。この作業がとても頭を使うというか、その作業自体がとても楽しい感じがするのです。

ミステリー小説のような謎解き

で、なんでその作業が楽しいのか。それはやはりそのポートフォリオの制作者の意図を探るという、ミステリー小説の謎解きの要素があるからだと思います。

平間さんを中心に、ポートフォリオから何を読み取るか、それぞれ自分の思ったこと、感じたことを言葉にする。まだ見えてないなにかについて思いを巡らせて、あるかどうかもわからない未知のメッセージをひとりひとり探していく。

そうして自分以外のレビュアーの人がどのように考えたのかを聞くことで、他の人がどんな風に自分と似たように感じているのか、または違った感じを受けているかをあきらかにしていきます。

そして、最後に制作者からそのポートフォリオの制作意図の説明があります。

これは、単なる答え合わせになるわけではなく、制作意図とレビュアーの言葉との合致や差異を見ていく作業。そうした過程のなかで、ときには制作者自身が思いもしなかった意図がポートフォリオに含まれているということあります。それも含めて何が謎解きの正解なのか、というのは、あってないようなものです。そうしたレビュー後の相互作用が感じられるという点もとても楽しいのですね。

創作行為としてのポートフォリオ・レビュー

実際問題、どこまで制作者がそのポートフォリオに意図を込めるかはその時その時によって違ってきます。しっかりとした意図を持ってポートフォリオを制作する場合もあれば、感覚だけを頼りに制作する場合ももちろんある。

ときにはそんな答えがない=ゼロの状態のものからそこにストーリーを見出していく作業というのは、学校の試験問題の回答をというよりも、もうその行為自体がレビュアー一人ひとりのストーリーの創作活動みたいなものとして感じられるのです。

たとえば、今回のレビュー中参加者の方が、1番から10番までの10枚の写真の中から、1と2のに関連してる要素(アップの顔写真)、2と3に関連してる要素(友達)、3と4に関連してる要素(鏡)、・・・→10というつながりを解釈をしていた方がいて、それがとても納得の行くものでびっくりしました。

で、種明かしとしては制作者はその意図は特になかったのですが、それとは別に2枚づつセットでチョイスしていたことがわかり、そうした意味づけもあながち完全に間違っていたわけでもなかったようにも取れます。制作者は自分も気づくことなく、無意識にそうしていたのかもしれません。どちらにしろそうした関連性を見て取ったのはそのレビュアーの観察力や想像力の賜物だと思いました。

さいごに

ま、そんなわけで、考えることが好きな人にはこのポートフォリオ・レビューというのはとても楽しい活動だとおもいます。たぶんですが、シャーロック・ホームズや名探偵コナンみたいなミステリー好きな人はみんなハマる、まだあまり知られていない隠れた写真の楽しみ方なんじゃないかと。

あぁどうだろう、この文章でポートフォリオ・レビューの楽しみ、伝わったかなぁ。。

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