見出し画像

読書メモ『シュタイナー入門』

2000)

よく知られていない人には、オカルトや精神世界を語る胡散臭い、巨匠と崇め奉られるきらいがあるルドルフ・シュタイナー。そのように両極端な評価を受けやすい彼について、19世紀から20世紀、産業革命以降の科学技術が偏重されていた時代、ヨーロッパに生きた生身の人間像を浮かび上がらせる入門書。

目次
第1章 教育思想の源泉―他者への目覚め
第2章 認識の探究者―カント、フィヒテ、ゲーテをめぐって
第3章 それは「オカルト」なのか?―西洋と東洋の霊性史
第4章 神智学運動へ―ブラヴァツキーの闘い
第5章 ドイツ精神文化の霊学―純粋思考と帰依の感情
第6章 戦争と廃墟の中で―「国民」になる以外、生きる道はないのか!
第7章 魂の共同体―ナチスの攻撃と人間の悲しみ

目次だけを読んでも内容がよくわからないかもしれません。この入門書では、シュタイナーの人生を生まれた時から亡くなるまでを順を追って彼の活動を追いながら、その周辺や前提となる知識を組み合わせて解説した内容になっています。そのために、彼の数多くのエピソードとともに、当時の時代背景や、思想的バックグラウンドのようなものがあわせて理解できてとてもよかったです。

全体を通して描かれているシュタイナーは、一人の情熱家、著者の言う「ドイツ精神文化の復興にかけた一人の思想の格闘家」。読んでいてとても強く共感した箇所とまったく同じ部分が、表紙に抜粋されていたのですが、そこにもっとも強くその格闘家の姿があらわているように感じました。当時のサロンの思想的傾向としての理想主義の悲劇的宿命に対して述べた箇所です。

理想は実現されることによってはじめて意味をもつのではない。たとえそれがど んなひどい形で破壊されようとも、それでもなお、その理想を胸に抱いて生きよう とした人間がいたという、ただそのことだけで、砕かれた理想にも、砕かれた現にも、 ありあまるほどの存在価値があったのだ。

こうしたエピソードをよい例として、著者に共感したのは、シュタイナーも彼なりにすごい悪戦苦闘して生きていたんだろう、ということです。関連書にはよく出てくる霊視のようなエピソードを見るとなんだか、超人的な能力のようなものを感じてしまうのですが、もちろんそういう近寄りがたいというか、理解しがたい側面があるとしても、普通の僕らと同じように物事を感じ、同じように悩みながら前に進んでいったのだろうということ。

著者がしつこいぐらいに、シュタイナー本人やシュタイナーの功績をただただ信奉しても意味をなさないと本書の中で述べていましたが、シュタイナーの考え方に共鳴したあとは、そこから巣立って、自律的に前に進むことが必要なんだよと。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?