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語学における「インプット」と「アウトプット」の誤解 #英語 #中国語

語学において、「インプット」と「アウトプット」はどのように考えられているか?

一般的な「インプット」と「アウトプット」の定義

以下、英語学習メディアから一般的なインプットとアウトプットの定義を引用します。

英語力を高めるためのトレーニングには大きく分けるとインプットとアウトプットの2種類があります。インプットとは、単語や文法の記憶やリーディング、リスニングなど英語で情報を頭に入れるトレーニングのことを指し、逆にアウトプットとはライティングやスピーキングなど、自ら持っている知識やスキルを運用し、発信するトレーニングのことを指します。https://englishhub.jp/sla/input-importance
英語学習においてのインプットとは、英単語や英文法をリーディングやリスニングなどを通して記憶することで、アウトプットとは、その記憶したことをライティングやスピーキングを通して発信することです。https://master-english.org/column/speaking/8949

このような分類は大枠正しいと思いますが、表現が誤解を招く可能性があります。

「インプット」と「アウトプット」の本質

インプットの本質は、①自然な中国語を②理解することといえます。「自然な中国語」とは、ネイティブが使う自然な表現であり、読む場合は、文や文章、聞くの場合は、音声です。そして、理解するとは、それがどんな意味なのか確信を持って理解できるということです。

アウトプットとは、①自分で何を言うかを決めて、②それを中国語にして、③書く場合は、手書きかタイピングすること、話す場合は、音声として発話することです。つまり、ポイントは自分で何を言うか(書くか)を決めることです。慣れてくればこれらのフェーズは同時に起こります。

こう考えると、リーディングとリスニングがインプットで、スピーキングとライティングがアウトプットという理解だと、本質を捉えていないとわかります。

音読やリピーティング、シャドーイングなどは、外見上、大きな声でたくさん話します(スピーキングのようです)が、その目的は新しい表現や語彙を獲得することであり、スピーキングやライティングではないです。

語学におけるある学習方法を「インプット」というと、受動的な静的なイメージを持ってしまう弊害があると思います。しかし、大人が第2言語を習得する場合、インプットのためには動的に音読やリピーティングをたくさん行うことが効率的だと思います。

アウトプットは必要か

「アウトプット」の本質は、自分で何を言うか(書くか)を決めるというところにあります。それを外国語で表現するのがアウトプットです。

このアウトプットが語学効果があるかどうかは、意見がわかれるところです。

第二言語習得の研究分野において、「インプット仮説」(Krashen)という考え方がありいます。「インプット仮説」によると、人が言語を学ぶ方法は主に言語を「理解する」ことによってです。

この仮説では、「理解可能なインプット」が十分与えられれば、それだけで習得は十分可能であり、アウトプットや意識的な学習、誤用の訂正などはごく限定的な役割を果たすに過ぎないと考えられています。

一方、これに対して、「アウトプット仮説」があります。これは、「理解可能なインプット」は習得にとって必要ですが、十分ではないと主張し、アウトプットの重要性を主張しています。

アウトプットは、インプットに比べて、学習者により多くの知的努力を要求し、より深い言語処理をさせると想定されています。聞く、読むなどでは、理解の不十分さをごまかすことが可能なのに対し、話す、書くなどのアウトプットでは、この「ごまかし」は通用せず、自らの中間言語を精一杯使って、その限界を認識することができます。そして、その限界の認識が、将来、その不足を埋めるようなインプットを得たとき、そのインプットを効果的に摂取する効果がある、というものです。

つまり、「将来、その不足を埋めるようなインプットを得たとき」ということは、それもインプットです。

なので、結局は語学力を伸ばす(“使える”語彙や表現が増える)のは、インプットであり、アウトプットとは、インプット理解がおこる場面の1つのあり方に過ぎないと解釈すれば、インプット仮説の中で、アウトプットも学習効果があると捉えることができます。

※一括に音読、シャドーイング、リピーティングをインプットといいましたが、それぞれ発音、聴解、読解、短期記憶など鍛えるポイントが異なります。

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