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臆病な女子にライセンスを! 第18話 私だって褒められたい

次の時間の教習は駐車や停車を練習した
運転の順番は、前の時間と同じで
最初は私、次は佐藤さん、最後は矢倉さん

(T)「皆さん、学科教習で既に『駐車と停車』については学んだと思いますが、今日は応用として普段と違う道路でルール違反しないように駐車や停車をします」

この時間は、普段と違う道路って、プレッシャーがかかるよ
ただでさえ、前の時間の気持ちを引きずっているのに

(T)「藤原さん、運転を始めてください」
(藤原)「はい」
(T)「藤原さんは、一度経験済みの道路を走行しますから、リラックスしてください」
(藤原)「経験済みの道路って」
(T)「行けば分かると思います」
(藤原)「そうなんですね」

Tさんのコース指示にしたがって走行する
そのコース指示の声が、普段と違う感覚を覚えた
頭の中がTさんの声で満たされて、ふわふわした感じがする

(T)「藤原さん、ぼんやりしてないで、安全確認と合図を忘れず、停車可能な場所に停車してください」
(藤原)「ふえ?」
(佐藤)「藤原さん、その先の広い場所がいいんじゃない」
(T)「佐藤さん、良い場所を見つけましたね」
(藤原)「じゃあ、そこに停車します」
(T)「停車ができたら、一度全員車を降りて停車場所や停車方法を確かめてみましょうか」

全員降車して、辺りを見回した
標識はなく、道幅が広く、周りは工場が立ち並んでいる
停車する場所としては最適だ
停車した車の状態を確かめる
歩道に対して前から突っ込むような態勢で停車していた

左ミラーで確かめると歩道に平行になってたはず
どうしてこうなったの?
考え事をしていたから?

(T)「藤原さんは、停車の時に左ミラーを確かめていましたね、どんなふうに見えていましたか」
(藤原)「歩道に平行になるように」
(T)「そうですね、停車は歩道や道路の左端に平行になるように気を付けますが、ミラーで平行でも、実際は確認したように前が狭く後ろが広い状態になりがちです」
(藤原)「そうなんですね…上手く停めたと思ったんですけど」
(矢倉)「私も藤原さんと同じようにしてると思います」
(佐藤)「どうすれば実際に平行に停めることができるんですか」

(T)「教習で使っている車種によっては、ミラーでの見え方が違いますが、使っている車種の場合は、前が広く後ろが狭い見え方で停まるといいですよ」
(矢倉)「ということは、左にグーっと寄ってからハンドルを右に修正するってことかな」
(T)「この広い場所を使って、いろいろ試してみましょう、藤原さんが運転してる最中に、私がハンドル補助で平行になるよう修正します」

それって…
Tさんの指を間近に見れるチャンスですよね
思ってもみなかった、願いがかなったんですけれど!

でも、できるだけTさんの言うように、左ミラーの見え方に注意して、歩道に平行に停車するよ
私だってTさんに褒められたい!

しばらく走行して、見覚えのある交差点を左に曲がったところで停車の指示をされて
歩道に平行に停車を試みる

左ミラーを確かめて
前を広く後ろを狭く…
ハンドルを緩やかにコントロール!

あれ?
Tさんが、ハンドル補助をしてくれないよ

(T)「いいですね!藤原さん、上手に平行に停れましたね!」
(藤原)「うそ!」

うまく停車できて、褒めてくれて…嬉しいです
とか考えてたら、あの大きな橋が目の前にある
Tさんと思い出の秘密の橋!

それにしても…ハンドル補助してくれるはずだったのに
ちょっとー、期待させておいて…
もう!Tさんの意地悪!


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