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臆病な女子にライセンスを! 第19話 最後の教習

三人での技能教習は、1日に4コマ分を使って3コマを技能、1コマは休憩か学科の教習日程になっている

さすがに、3コマ目の技能は疲れて
後部座席に座ってると、眠くてウトウトしちゃう

みんな、運転上手だね

卒業検定の前日は、通常の技能教習が2コマ
でも最後の教習になっちゃう
Tさんに担当してもらえるのも最後だよ…

そう考えると、何だか落ち込んでくる
ここまで、本当に臆病な私が自動車を運転できるようになったのは、Tさんの導きのおかげ

教習という言葉
『教わり習う』
指導という言葉
『指示して導く』

私には、そんな単純な言葉遊びじゃなくて
これまでの人生でも、大きなイベント

Tさんのコーチングスキル、熱意、優しさで
チャレンジする勇気と、成長の喜びを教わった
中学や高校では味わったことがない喜び
いつの間にか、臆病な私は陰を潜めていた

自動車の安全運転の仕方を教われた
技術は未熟かもしれないけど
『安全マインド』
は育ったと感じる

もう一つ育ったこと…
『恋心』

最近になって、妹から私が綺麗になったと言われた
そう言われて初めて気付いた

きっとその原因は、Tさん…

この教習が終わったら
Tさんの名刺の裏に、携帯番号を書いて渡す
教習が終わっても、Tさんとの繋がりを託して
私ができる最大の勇気を出そう!

(T)「AT108番の藤原さん」
(矢倉)「ほら、Tさんが呼んでるよ」
(藤原)「う、うん」
(佐藤)「藤原さん、ボーッとして…大丈夫?」
(藤原)「大丈夫…」
(T)「藤原さん、いらっしゃいますか?」
(藤原)「あ、はい!行きます!」

意を決して、Tさんの方へ向かっていく
この教習がTさんとの最後の教習…
そう思うと、胸が苦しい

(矢倉)「藤原さん、普段と違ってたね」
(佐藤)「何か決意の顔をしてた」
(矢倉)「決意?何で?」
(佐藤)「これは、ひょっとして…」
(矢倉)「ええ!もしかして?」
(佐藤)「最後の教習だからね」
(矢倉)「藤原さん、そうなんだね、真剣なんだ」
(佐藤)「Tさんにね…」
(矢倉)「やっぱり!そうなの?」
(佐藤)「藤原さん、Tさんを見る目…潤んでた」
(矢倉)「じゃあ、応援しなくちゃ!」
(佐藤)「ちょっと!そっとしてあげようよ」

一方、Tは普段通りの教習準備を確認して、教習を始める

(T)「藤原さん、今日は締めくくりです、縦列駐車と方向変換を1回ずつ運転してから、路上に出ましょう」
(藤原)「Tさん、最後の教習をよろしくお願いします」
(T)「ああ、はい、こちらこそ」
(藤原)「では、行きますね」
(T)「今日の藤原さんは、気合が入ってますね」
(藤原)「今日は、Tさんの指導の集大成ですから!」

ここまで、一人でもできるようになったこと、Tさんに見てもらうんだ!
それから、教習が終わったら、Tさんの名刺を返すんだ!

(T)「藤原さん、リラックスですよ」
(藤原)「Tさん、アドバイスは無しで、横で見ててください」
(T)「は、はい…」

こうして、所内の駐車課題と路上運転は、Tさんのアドバイス無しで乗り切れた
Tさん、横で見てて私の運転はどうでしたか?
一人で運転しても大丈夫でしょ!

(藤原)「これで、教習が終わりですから、Tさんに名刺をお返しします!」
(T)「名刺は、藤原さんが持ってて良いんです」
(藤原)「裏を…見て下さい」
(T)「携帯電話の番号?」
(藤原)「私の…」
(T)「あの、どうすれば…」
(藤原)「不要でしたら、処分してください」

Tさん、受け取って!
お願い!

(T)「では、新しい名刺を持っててください」

ええ!?
新しい名刺と交換って…
どういうことですか?

(T)「運転で悩み事があったら、相談にのりますよ」

そんな優しい言葉…
Tさん、本当に相談にのってくれますか?
恋の相談でも良いですか…

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