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「Audibleに求めるもの」-2023/11/25

11時ぐらいに起床。昨晩サーモンを醤油に漬け、そのままキッチンに放置していたことに気がついた。がっかりした。腐っているか、なにかしら有害な菌が繁殖しているか、不安に思ったものの寒い日だったので、それと醤油に浸していたので、まあ大丈夫かという半ば祈りにも近い気持ちで冷蔵庫に入れる。あるいは目の前の問題をとりあえず目に触れない場所に押し込め保留させたともいえる。まだ食べても捨ててもいない。早急な先送りの判断により、朝から生活態度のツケを払わされる気持ちにはあまりならなかった。きっと明日ぐらいにリスクを考慮し捨てることになるんだろうな。その時は少し落ち込むだろう。だがそれは今日ではない(アラゴルンの名演説)

そういえば昨日サーモンを醤油に漬けているときに友人から連絡がきて(大した用事ではなかった)、そのまま忘れていたんだ。なにかしらのミスが外的要因と絡んでくると少し安心できる。自分だけのせいではないと思い込める。それが本当に自分だけのせいではないかどうかはひとまず置いておいて。

最近毎日観ている『ラヴィット!』が今日はなんだか気持ちとフィットせず、ジャッキー・チェンの適当な映画を流す。コメディとアクションと勇気、そして大きなシステムに対する反抗がある。素直に偉いと思う。ベランダの掃き掃除やなんやかんやしているうちに午後になっている。14:00ごろから家電の電源アダプタを探す。引っ越しのせいでどこにあるか分からなくなっていた。諦めて代替アダプタを買おうとした時にやっと見つける。心のトゲが抜けたようなすっきりとした気分だ。ここ2、3日それが気になって仕方なかった。ひとつ気になっていることがあると、思考のパフォーマンスがかなり持っていかれる。たかが電源アダプタで。だらしないのに神経質なのかもしれない。最悪だ。でもみんなそんなもんだろう、と物事を一般化してネガティブを希釈する。

オーディブルを聴きながら作業をする。オーディブルはかなり好ましいサービスだが、耳で聴くのに適している小説というのは限られている気がする。僕は空間の描写を具体的にイメージするのが苦手で、その気質はオーディブルと食い合わせが悪い。例えば

「この船は、大きさ八百トンのシップ型で、甲板から、空高くつき立った、三本の太い帆柱には、五本ずつの長い帆桁ほげたが、とりつけてあった。見あげる頭の上には、五本の帆桁が、一本に見えるほど、きちんとならんでいて、その先は、舷げんのそとに出ている。」(青空文庫の『無人島に生きる十六人/須川邦彦』から引用)

みたいな文章が読み上げられたりすると、それを一生懸命イメージしようとまごついているうちに、ずんずんと一方的に話が進行していく。それが気持ち悪い。別に重要じゃなかったら聞き飛ばすことができればいいのだが。

活字の場合、じっくりと読む文章とそうでない文章を無意識のうちに使い分けている。場合によっては端折ったり、ななめ読みしたり、一方で理解したい場合はすぐさまその箇所を注意深く読み直したりもできる。つまり自分の意思によって進行をコントロールできる。耳ではそれができない。すべての文章が同じペースで送り込まれ続ける。ベルトコンベアで運ばれる工業製品みたいに。停止したり戻ったりすると、どうしても読書の没入感が失われる。あと単純にめんどくさい。

音声と活字、どちらが優れているという話でははないのだけど、少なくとも僕にとってオーディブルの性質と合致する本はごくわずかのように思える。その障壁さえクリアできればオーディブルは素晴らしいサービスである。

▼オーディブルに向いていると考える条件▼
・一人称語りである
・空間を把握する必要がない(あるいは描写自体が少ない)
・ナレーターの声が(自分にとって)嫌悪感が少ない
・登場人物が多すぎない

こういった傾向にある読み物であるかどうかは、ある程度聴いてみないと判断できない。同じ感覚の持ち主たちと情報を共有できたらいいのにな。トップに表示されるオススメはあまりにも役に立たないし、むしろうんざりさせられることのほうが多い。

挙げた条件を考えるとエッセイなんかが向いてるのかもな、とも思った。でもオーディブルとは関係なく、エッセイは個人的な好き嫌いがかなり激しいジャンルでもある。

なんというか、エッセイってユニークであろうとしすぎる傾向がある。そりゃ当然エッセイに限らずあらゆる創作物はある程度の独自性みたいなものが必要とされる。ただエッセイは作家そのもののパーソナルな思考と結びつかざるを得ない分、見え隠れする嘘っぽさというか、ユニークであろうとする背伸びがすごく気になってしまうケースがしばしばある。端的にいうと「かっこつけてるな」と思ってしまう。オリジナルな感性であると思われたいスケベ心というか、体感が伴ってないというか、地に足がついてないというか。もちろんすべてのエッセイがそうだとは言わないし、大好きな作品もいっぱいあるけど。

久々に日記を書いたらけっこう時間がかかってしまった。

りんご酢。健康のためではなく単に飲み物として好きな味なのだが、1日100ml目安と記載されているので(理由は分からない)、歯がゆい思いを強いられている。


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