『鬼滅の刃 無限列車編』をキメた中で、ちょっと気になった話【ネタバレあり】

◆はじめに

 いつの間にか社会現象になっていた『鬼滅の刃』、その劇場版を何か時間ができたので観てきました。
 私はアニメは観ておらず、原作もアニメ化前とアニメ終了後に「ジャンプ+」で無料公開されていた分を読んだ程度です。
 なので、その際の無料公開の範囲、即ち「蜘蛛の鬼を倒すか倒さないかくらいのところまで」と「無限列車編で伊之助が起きるまで」辺りの予備知識しかなく観に行ったことを先にことわっておきます。

 ここから先は当然ネタバレ全開でいきますので、ご注意ください。


◆雑感

 そんな感じで、大して思い入れもなく観に行ったわけですが、これがなかなか面白かったです。
 戦闘シーンも迫力がありましたし、一緒に行った友人が、伊之助が人間かどうかも分からないぐらいの状態だったのですが、煉獄さんの最期で泣いていたので感動的な作品だったのでしょう(他人事なのは私が創作物で泣けない人間だからです)。

 ただ、すごく気になってしまった部分が二つありました。

 一つは、”上弦の参”猗窩座(あかざ)の登場が唐突だったことです。
 とは言え、これに関しては私が知らないところで登場の前振りがされていた可能性があるので、ここでは触れません。
 まあ、されていなかったとしても、「週刊連載の少年漫画」と考えれば急展開は不自然ではないので、一本の映画と考えた時にどうこう言うのは野暮なことかもしれませんね。

 で、もう一つの方が本当に首を傾げたたことなんですが。

 炭治郎くんって、何かベラベラしゃべり過ぎじゃないですか?

◆君らすっごいしゃべるね……

 炭治郎くん、基本くっちゃべってんな、とは思ってました。ただ、序盤は敵の能力で夢の世界に閉じ込められていたので、モノローグが多いことに不自然さは感じませんでした。精神世界の演出の一環かな、と。

 しかし、現実に戻ってきても自分の心情をしゃべりまくっている。その中でも一番「おや?」と思ったのが、煉獄さんが目覚めて炭治郎くんの下へ駆けつけてくれたシーンです。

 この時煉獄さんは「自分が五両受け持つ」と言い、炭治郎らに役目を割り振っていくわけですが、彼が去った後にこんな感じのことを炭治郎くん、述懐するんです(※セリフはうろ覚えもうろ覚えです)。

「五両も面倒みられるなんて煉獄さん凄いなあ。とてもできないなあ。いや、俺も頑張ろう、前を向くんだ!」

 いや、しゃべりすぎじゃない?

 このシーンの前に炭治郎くん、言ってるんです。「俺じゃ二両が限界だ」みたいなことを。で、煉獄さんは「五両受け持つ」と言う。
 その時点で「煉獄さんやっぱりすごいな、柱だもんな」と視聴者も分かっているわけです。

 なのに、改めて「五両も~」みたいなことを言わせる必要あるのかな、って思うわけです。

 あと、「前を向くんだ」みたいな決意をわざわざ言わせるのも、あんまり効果的じゃないな、と見ていて思いました。

 だって、いちいち言う必要ないじゃないですか。
 
映像あるし……。映像で演技させたらいいじゃないか……。

 煉獄さんが後方の車両に行ってくれて、炭治郎くんと伊之助は前、って割り振られてるわけです。そこで仲間の後押しを受けて、「物理的に前を向く」のと「精神的に前を向く」のがリンクしてると読み取れます。

 でも、これをセリフにすることで、説明になっちゃってるわけですよ。
「これは先頭車両の方へ向かうことと、仲間に背中を預けて前を向いて戦うことがかかった、とても熱い演出です」みたいな。
 アニメ化してるのに、漫画原作なのに、絵の力を使わない。セリフに頼ってすごく野暮ったい。

 同じことは無限列車の鬼、名前はえーっと……魘夢(えんむ)って言うのか、作中で名前呼ばれなかったな……こいつにも言えます。

 屋根の上で炭治郎くんと最初に対峙した時も、やたらめったらしゃべる奴だなあ、とは思っていました(この時はキャラ性と捉えていたんですが、作風とは……、よもやよもや……)。

 魘夢に関して一番引っかかったのは、今わの際です。
 炭治郎くん以下、自分の体内で戦っていた鬼殺隊の面々がどれくらい忌々しかったかをグチグチ言って消滅するんですが、これがまあ長い。何か止め絵入るし、「え? いるのかこれ?」の極みでした。

 ここはすっぱり、「上弦の鬼と自分の差について」だけに絞っていいのではないか、と思いました。後で猗窩座が出てくるので、上弦の鬼との差は前振りとして必須ですし、その方が印象が強くなるように思います。

 もう一つ長い今わの際というと、煉獄さんの最期も長かったですね。

 いや、めっちゃ長いこと生きてるやん! という感じで、緊張感が薄れました。そのせいであんまりノれなかった……。猗窩座の腕が傷口をちょっとの間塞いでたお陰かな、と脳内補完もしきれない感じで。

 例えば「禰豆子を鬼殺隊士として認める」旨に関しては、無限列車の中で戦っていた時に伝える、みたいなこともできたわけで……。
 原作そのままなんでしょうけど、媒体の変化に合わせてそういう補完をしてもいいのでは、と思いました。音で聞くと長いよ。

◆おしゃべりは時代?

 でもまあ、今の子ってこういう全部しゃべっちゃう演出に、違和感を覚えていないんだろうなあ、というのは分かります。だってこんだけブームになってるわけですし。

 研究者でもないんではっきりした結論があるわけではないのですが、私は「ゲーム実況を見るのが一般化したこと」が背景にあるのではないかな、と考えました。
 戦闘シーンで炭治郎くんが自分の考えてることを全部言っているのを見て、「これってゲーム実況と似てるよな」と思ったのです。

 私はあまりゲーム実況って見ないんですけどあの人たちって、いいプレイをすると「神神神!」ってはしゃいだり、ミスしたりすると「あー!」とか「やっちゃった!」とか悔しがったりするじゃないですか。
 Vtuberなんかだと、ゲーム実況の時に見せた面白いリアクションを抜き出した動画なんかがTwitterでアップされたりもしますよね。そうやって奇声を上げたり、オーバーに感情表現すること自体がコンテンツになっている。
 私はVの人たち全然詳しくないんですけど、そういう動画がTLに時たま回ってくるので、「3DCGのガワを被って奇声を上げている人たち」だと彼ら彼女らのことを認識しています。

 そういうある種の過剰なリアクションを見慣れているから、感情を説明するようなセリフを違和感なく視聴できるのではないか、と。
 別に「今の子は全部セリフにして説明されないと理解できない」と言いたいわけではありません。
 好まれるのが「どういう感情を抱いているか全部説明してくれる方」なのだろうな、というだけで。

 多分、セリフにしなくても分かる子は分かるのでしょう。ただ、現実でもハイコンテクストなコミュニケーションを強要されがちな昨今なので、創作物くらいは楽に鑑賞したい。
 そういう気持ちは、私も理解できるところではあります。

◆おわりに

 まあ長々と言い連ねましたが、『鬼滅の刃 無限列車編』は特に原作に思い入れがなくても楽しめるし、いい映画だと思います。
 みんなもDX日輪刀を買って、炭治郎くんの戦いや煉獄さんの生きざまを実況しよう!


今回のまとめ
・流行りの映画はやっぱり流行ってるだけあって面白い。
・雨宮ヤスミは何言っても嫌味たらしくなる。

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