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読書note23「ガラス玉遊戯」

大学の図書館にあったヘルマン・ヘッセ全集を読み返そうと始めた、その最後の一冊が「ガラス玉遊戯」である。昔、読んだ新潮文庫では「ガラス玉演技」だったかな?

実は今回、これを病室で読んでいる。1週間入院の予定が3日延長になった事で、この最後の難関「ガラス玉遊戯」にじっくり取り組む時間ができた、という感じである。この時間がなかったら、この難関をもう一度読み返すことはできなかったかも、と思う。

ヘッセは、ドイツヒットラーのナチスが台頭してくるその時に、彼の最後の大作、集大成となるこの本を書いている。ヘッセがずっと追求してきた精神の世界ユートピアを描いている。現実世界と精神世界、愛憎と知性、ヘッセの底流を流れる2元の課題を、その知と精神の世界にフォーカスした壮大な物語となっていた。

今、この本を、ヘッセをたどりたいと思った自分の気持ちと、最後に、こんな形で病室で、「ガラス玉遊戯」をゆっくり読めたことはうれしい限り。

恐怖と最も深刻な悲惨の時代が来るかもしれない。しかし悲惨に際しても一つの幸福があるとすれば、それは精神的な幸福のほかはありえない。後ろを向いては過去の教養を救い、前を向いては、何もしなければまったく物質の手に帰しかねない時代にあって、精神を朗らかに、倦むことなく主張することの幸福である。


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