『茶色い瞳』今井聡第一歌集

一枚の玻璃を挟みてそれを拭く男とわれと生計(たつき)ちがへり
○何でもないシーンたが結句でぱっと広がる一首。

坂道をくだりくる夜のテニスボールたかくはずみてわが傍を過ぐ
○夜という設定がいい。どこから?誰から?ともわからないテニスボールの出現。

メキシコの土より生まれし南瓜なれ遠き日本でカットされ売らる
菊の花朽ちて花器にはスターチスのみ残りをり紫色(ししよく)深みつつ
値やすき松葉牡丹の種なれど芽吹ける
までの時濃かりけり
○後半に植物が結構詠まれている。身近な感じ、寂しさが漂う。時濃かりけり…生命というものを凝視している。

ガジュマルの厚らなる葉が蛍光のあかり反してをり午前四時
○歌集全体にも感じることだが、文体の静けさが心地良い。



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