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8月2日 成都

 朝、7時、自転車は当然届かない。空港からの連絡もない。こちらから電話をしてもつながらない。ホント困る。近くのお店に朝食に肉まんと飲むヨーグルトを買いに行き(お茶がいいんだけど、中国では甘いお茶しか売ってない)、シムズのロビーで朝食を済ませる。8時、再び電話をしてもらうがつながらない。何もすることがない。隣で日本人の旅行者3人(30前後の女性・40代男性・20代男性)が楽しそうに話をしている。その中の女性がマミさんだ。それぞれ個人旅行だが、たまたまこの宿で一緒になった3人である。3人の会話に入る気はないけど、40代男性が20代男性に余ったカロリーメイト2箱を渡している。えっ!この40代男性は今日、日本に帰るのか?それなら、空港に行くタクシーに同乗させてもらおうか。空港までのタクシー代は約1,800円。1人で自転車を探しに行くには高すぎるけど、半分の900円なら・・・
 40代男性に声を掛けた。「今日、帰国ですか?」「はい。」「これから空港に行かれるんですか?」「はい。」「じゃあ、空港まで一緒させてもらっていいですか?」「はい、それは構いませんけど、あなたも今日、帰国ですか?」「いえ、ぼくは・・・」と自分の状況を説明した。3人とも、それは大変ですね。と言ってくれ、中でもマミさんは「すごいですね。そんな大変な状況で、そのゆとりは。それだけでスキルの高さがわかります」
 40代男性と一緒にタクシーに乗り、空港に着いた。飛行機を降りてから荷物を受け取る場所には、普通は入れないけど、警備員に荷物の紛失届とパスポートを見せ、中に入れてくれと交渉して、中に入れてもらった。ぼくの自転車はすぐに見つかった。昨夜のうちに届いたのか、今朝届いたのかはわからないが、ぼくの荷物が無造作に置かれてあった。ええかげんにせーよ!すぐにホテルに届けろよ!せめてすぐに連絡しろよ!ほんと、チャイナ・クオリティの低さを実感する。係の人は2人いるが、5人くらいの他の客の対応に追われており、タクシー代+αを請求しようと思っていたけど、時間がかかりそうなので、だまって荷物を持ち帰った。
 自転車をバスに乗せられるように、パッキングし直し、シャワーを浴び、シャンプーして、髭剃って、パンツとシャツを着替え、さっぱりした。ロビーに降りると、マミさんがいた。「ここ、座っていいですか?」「ええ、もちろん。」「自転車見つかったんですよ。」「えっ、良かったですね。ビール飲みますか?おごらせて下さい。」「ありがとうございます。でも、いいですよ。・・・今日、晩ご飯、一緒しませんか?」「ええ、いいですよ。どこに行きます?」「近くにいいとこありますか?」と会話が続いた。
 「でも、ほんと良かったですね。やっぱり、ビール、おごらせて下さい。飲めますよね?」ほんと感じのいい女性だ。彼女がもう少し若く(結婚すると決める前)、ぼくがかなり若かったら、恋に落ちたかも知れない・・・
 それから、20代日本人男性シンくんと40代中国人男性が加わり、4人で近くの食堂に入り、1杯180円のラーメンを食べた。その後、宿に戻って4人でビールを飲みながら、会話を続けた。シンくんは映画監督になりたかったが、映画を作るのにはお金がかかり過ぎ、とても、スポンサーを見つけられないので、カメラマンをしているという。今、中国の少数民族を撮り続けているのだが、もしかしたら、この先、消滅してしまう民族がいくつも出るかも知れない。そのため、今、自分がその記録を撮り続けておかないと、他の誰が撮るんだ、というくらいの勢いで中国の各地を回っているそうだ。
マミさんは来年結婚予定で、結婚前に1人旅をしている。まずは、モンゴルを旅行して、今、ここ成都におり、ここで友人と落ち合い、シャングリラに向かい、そこを観光して帰国する。帰国したら、オートバイで北海道を回って、その後は自転車で四国の88カ所巡りをするそうだ。とても感じのいい女性である。ぼくの話を聞いて、「あなたの旅のスキル、かなり高いですね。」って感心していたけど、いえいえ、そう言うあなたこそ、かなりのスキルの高さです。
 12時も近くなり、そろそろ部屋に戻りましょうか?エレベーターに乗って、それぞれ自分の部屋の階のボタンを押す。ぼくは5階を、マミさんは4階を押した。他の2人はボタンを押さない。ちぇっ!残念。もし、彼らが2階か3階なら、彼らが降りた後、マミさんが降りるまでの15秒で「もう少し、2人で話をしませんか?」と誘えたのに・・・。エレベーターが4階に着いた時、シンくんが言った。「あっ、俺ら、3階だった。」おいおい、しっかりしろよ~。もしかして、ぼくのささやかな下心を見抜いてるのかよ~
 マミさんがエレベーターを降りようとした時、シンくんが言った。「これからラーメン食べに行きませんか?」ちょっと小腹が空いてきており、みんな一緒に「ええ、行きましょう。」これで、ラーメン食べて帰って来た時に、今度こそマミさんを誘うチャンスがやってくる。しかし、シンくんが頼んだ辛くないというラーメンは真っ赤っか。一口食べただけで、胃が悲鳴をあげた。ぶちぶち辛いじゃ~~ん。冷たい水が飲みたい・・・。3人を残して1人だけコンビニ行って冷たい水を買って飲んだ。やっぱり神様がほんの少しでも下心を見せたぼくを戒めたんだろう。

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