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練習は詰めるのがいいか、それとも

サガン鳥栖の川井健太監督は、練習の時間をあまり多くとらないことで知られている。

そのことで思い出すエピソードがある。

秀吉のはなし。

織田信長は、ある時長い槍と短い槍のどちらが強いかを研究したいと思った。そこで、木下藤吉郎ともう1人、プロの兵法家に100ずつ兵を与え、1週間の稽古の後、模擬合戦をさせることにした。

藤吉郎は長い槍のグループ、プロの兵法家は伝統の短い槍のグループ。兵法家は「そんな長い槍なんて、実際の戦場では物の役に立ちませんよ」と信長に反対していた。一方の藤吉郎は槍の長さについての知見は持っていなかったけど、主人の信長が長い槍に可能性を感じていることは、何となくわかっていた。

プロの兵法家は自分の主張のため、寝るのも惜しんで100人の兵たちを懸命に指導した。兵たちはその指導のあまりの厳しさに怪我をしたり、ストレスで倒れるものもいた。

さて一方の藤吉郎。主人の意図に沿う結果を残したい。1日目は兵たちを厚くもてなした。訓練は無し。「飲め、食え、歌え」。気前のいい大将に兵たちは大喜び。

続いて2日目。今日も壮行会。「飲め、食え、歌え」。兵たちは「いいんですか!」大喜び。そんなことが3日目、4日目も続いた。兵たちもだんだん不安になってくる。「あの、そろそろ訓練させてください」「戦い方を教えてください」。すると藤吉郎は、「いいんだ。楽しくやろう」。

5日目も訓練は無し。やはり兵たちをもてなした。

そして6日目。「よし、こう言うふうにやろう」。藤吉郎は全体の俯瞰図を見せながらリーチの差を活かして相手を取り囲む戦術を説明した。英気は十分な兵たちは、5日も自分を歓待してくれた御大将に報いようと必死。集中して講習と隊列の確認に取り組み、軽く汗をかいてきた所で藤吉郎、「よし。ここまでにしようか。明日はこの通り頼むね。後はまたゆっくり休んで万全の体調でここに来てくれ」。

兵たちは「まだまだやれますよ自分たち!」

藤吉郎「いやーもう今の動きを見て確信した。大丈夫だよ」。そして続けて

「明日は叩き潰してこい!」

…とは言わなかったそうだが、兵たちは大盛り上がり。「御大将が言うなら、それだけこの長槍は有利なんだ」と自信を持った。

そして翌日。

御前試合はあっという間に決着がついてしまった。

1週間の昼夜を問わないオーバーワークで動くのもやっと短い槍の軍は、プロの兵法家に恨みまで持っていた。一方の木下軍は一糸乱れぬ隊列で短い槍の軍団を取り囲んでしまい、まるで試合にならなかった。

信長は自分の意図を重鎮に通すため、実績が欲しかったのだが、2人のあまりの軍さばきの違いに「これじゃ本当のところどっちが強いのかわからないんだけどなぁ」とどこかガッカリしながらも「人を使うのが上手いやつだ」と藤吉郎を評価。藤吉郎はさらに多くの軍を任されることになった。兵法家はお役御免となった。

おちまい✨

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