オランダ教育実践「オランダから日本へ」

移住して約1年半が経ちました。移住前に、一つnoteで投稿して以来、何だかんだとずっと放置していましたが、今から書くこの内容は、自分自身もすごく救われたなと思いますし、これからも大切にしたい考え方、感覚だと思います。きっと多くの人の心、特に頑張っている人の心を軽くするだろうと思います。


移住後のざっくりした流れ


2020年7月 日本からオランダ/ユトレヒト移住
   9月 本格的にオランダ語の勉強開始
       長男4歳になりタールスクール(移住者の子どものオランダ語習  
       得のための小学校)に通い始める
2021年5月 日本の教員免許状(保健体育科)がオランダの免許に書き換え
        完了
            6月 インターンシップとボランティアのような形で受け入れてもら  
      えたため、小学校の体育の授業に参加する
            7月  長男タールスクールを卒業
    9月  小学校の体育教師として、公立小学校(週3)と私立小学校  
      (週2回)で採用され、勤務開始
      長男は現地の小学校へ入学

同僚からのアドバイス

と、免許の書き換えが終わってから、あれよあれよという間に就職に至ったわけですが、実際に働くとなると、経験があるとは言え、簡単ではありませんでした。正直オランダ語のレベルは勉強しているとは言え、カタコトですし、勤務校はオランダ国内で指導困難地域とされており、一つの小学校に30か国以上の国籍をもつ子どもたちが在籍します。国籍が違えば、文化背景も違うので、一筋縄ではいかないわけです。ちなみに、指導困難地域で勤務をすると、給料が8%上乗せされます。そうでもしないと、その地域を教える教師がいなくなるからだそうです。

というわけで、日本での10年間の経験を最大限に使いつつも、これまで経験した事がないくらい、生徒が言う事を聞かない状態を経験しました。授業の説明は、まずほぼ誰も聞かない。授業が始まれば、3分に1回大げんかが始まる。授業が終わり、集合のための笛を鳴らしたら、全員四方八方に走り始め、かくれんぼを始める。そんな経験ありますか?なかなかこんな経験はできません。(笑)

ま、とは言え、授業を重ねるごとに何とかまともな状態で授業を進めるようにできるようになり、全体的に落ち着いてきた11月頃でしょうか、ふと、「自分は誰かの役に立っているのか。」という漠然とした不安、疑問を感じるようになりました。「わざわざこんなカタコトの外国人が授業をやるよりも、普通にオランダ人の体育教師が授業をした方が、彼らにとって幸せなんじゃないか。」と考えるようになりました。そして、「いや、自分はオランダの小学校で働いて、その経験を日本に伝えるために来たんだから、もっと頑張らないと。」とその都度自分を奮い立たせていました。「もっともっとオランダ語力と授業力を向上させれば、自分も子どもたちも満足できるだろう。」と。

ただ、日本ではあまり、というかほぼ、悩みを同僚に相談する事はありませんでしたが、一緒に体育の授業をしているパトリック(同僚)にふと相談をしてみました。ちなみに、パトリックがいなかったら、間違いなく自分は未だにオランダの小学校で働く事は出来なかったと言い切る事ができるくらい超お世話になっている同僚というか、もはや相棒。

「パトリック、生徒たちのために、もっとオランダ語も授業力もより良くしたいし、より良くしないといけないと考えているだけど、何かアドバイスできる?正直ちょっとネガティブになっているんだよね。」とメールをしたところ、

「隆、今のままでいいんだよ。」

「自分をより良くしようとしたり、向上、改善させたりする行為は、実はすごく大変な作業で、マイナスの自分、出来ていない自分と向き合わなくてはいけないんだよ。それって実はすごく負荷の高い作業なんだよ。」

「それにね、隆。隆が移住してからの約1年でできるようになった事を挙げてみてごらん。」

① 家族、妻、子ども2人を養っている。
② オランダで2つの仕事を(実際には1つの学校を断っているから3つ)を  
  すでに手に入れている。
③ オランダ語を話している。
④ オランダ人の同僚もいる。
⑤ オランダで一番難しい地域で授業を教えている。

「今、ざっと考えるだけでも、これだけの事をたった1年ですでに隆はできるようになったんだよ。隆、これ以上何を良くする必要があるの?」と。

正直これには目が覚めました。これまで、何か壁を感じたときには、自分をさらに成長させて乗り越えないといけないというマインドになっている事が多かったからです。後ろを振り向く事なく、前進あるのみスタイルですね。ただ、そのやり方だと、うまくいった時は良いですが、つまずく可能性もおおいにありえますし、成長するにも限界があると、今は思います。成長に限界はないと言ってしまえば、そうかもしれませんが、パトリックが言うように、その作業は負荷が高いですし、大変です。

それよりも、一旦立ち止まって、自分がこれまででできるようになった事に目を向ける。確認する。あ、自分はこれだけの事をできるようになったんだなと。その作業は、自己肯定感の向上にもつながりますし、ゆるやかかもしれませんが、持続可能な成長にもつながるのかなと。

そんな事もあって、色々な出来事も入り混じって、成長を思い切って放棄してみる。無理をしない。そんな人生の在り方も良いのかな、なんて最近は考えています。きっと、人間って無意識のうちになのか、刷り込みなのか分からないですけど、気が付いたら頑張っちゃう、より良くしたくなっちゃう生き物のように思うので。特に、日本は常に競争!競争!競争!比較!比較!比較!な環境にいないといけないと思うので、本当の意味で自分らしくいる事って難しい環境だなと思います。多くの人が成長とか競争することや比較することを手放したら、もっともっと素敵な世の中になるんだろうなーと考えています。

さらに、オランダへ来てから、家族の時間はもちろん100倍くらい増えましたが、と、同時に自分自身と向き合う時間もものすごく増えまして、あ、この時間ってすごく大切だなって。「自分って何?」「結局何がしたいの?」「自分って何に居心地の良さを感じるんだろう?」って良く考えます。で、結局自分の事を理解し始めると、他人の事も理解しようとするんですね。自分と向き合い、自分を理解することが、他者理解にもつながる。でも、日本人って、自分をすっとばしてまず他人ってなる事が多いように思います。自分が満たされていないから、他人には気は遣うけど、優しくはなれないみたいな事はあるような気がします。

あ、あと、仕事を休むことの感覚も全然違っていて、年明けの金曜日に体調を崩して、パトリックに「週明けに働けるようになるべく早く体調良くするよ。」とメールをすると、「今隆が無理をして働くという事は、長期的に隆を病気にする。今、隆がしっかり休む事は、長期的に隆を良くする。だから、完全に治るまでは仕事をしてはいけないよ。病気=仕事はしない。オランダではそうだから。ここは日本ではないからね。あと、多分隆が風邪をひくって事は、隆の家族も病気になる可能性があるから、みんな健康になって、家族が安定してから働けばいいんだよ。」と。

はい、もう、感覚を違いすぎてびっくりです。日本で、どれだけ、卒業間際にインフルエンザである事を隠して、さらにそれを美徳かのように働いていた同僚を見てきた事か。また、その時期に体調を崩して休む同僚を批判する同僚を何人見てきたことか。ただ、自分もその時に今みたいな感覚があれば、もう少し良い環境に出来たのかなと、思います。人がきちんと人として扱われる、オランダの労働環境は素晴らしいです。

オランダから日本へ。

何よりもまず自分を大切にしてください。頑張らなくていいんです。今のままで十分なんです。自分が何に居心地の良さを感じるか、自分とじっくり向き合ってみて下さい。他人は他人です。自分が一番大切。自分が十分満たされたら、自然と他人にも優しくなれます。他人に優しくなれない時は、自分をもっともっと大切にすればいいと思います。

今、自分は日本の現場を離れ、世界一子どもが幸せな国とされているオランダで、実際に教師として働きながら、さまざま勉強、経験をしています。ただ、元々の想いとして、日本の教育をより良くしたいという想いがあり、その一つの選択肢として、オランダ移住&オランダで教師として働くという選択をしました。実際に、オランダの現地校で働く事で、日本の学校が現在抱えている課題や問題点を解決するためのヒントはたくさんあるなと感じますが、個人的には、日本の現場で、目の前の課題や問題点を向き合い、どう解決していこうかを模索、思考錯誤している先生方を一番すごいと思っています。職員室の隣の先生の意識を変える作業が一番大変だと、日本で働いているときに感じていたからです。とはいえ、実はそれはオランダの先生たちも一緒で、日々起こる問題やチームとしての課題を解決するため、毎日全ての同僚たちが奮闘しています。目の前の子どもたちを観察し、仲間と手を取り合い、知恵を出し合い、話し合い。国が違えど、学校ってこんな場所なんだなといつも感じております。自分の経験が、いつか誰かの、何かの役に立てれば幸いです。

ここからは、備忘録として。多分次は、オランダ国家試験B2レベルを合格したら、何か書こうかなと思います。
1 仕事初日チームビルディングを4時間→周りの大人が幸せであること
2 体育嫌いが0のオランダの体育授業→選択肢、比較なし、失敗なし
3 オランダの働き方→ワークシェアリング
4 タールスクール、ISK→外国籍児童への日本語指導
5 学校から競争と比較をなくす→受験をなくす
6 不登校0へ→具体的な案

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