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Yの形がつながって風景が作られている

嬉野市の塩田町で訪れた二つの酒蔵。たとえ閉まって
いても構わない。東洋随一を目指している東長と東一。
酒蔵の風景を思い浮かべながら、美味しいお酒を頂こう。
そのお酒が醸される風景と、その名前にも惹かれている。


※saga plus オリジナル Re:discovery SAGA参照

塩田町といえば、江戸時代には長崎街道の宿場町として
栄え、明治から大正にかけては川港(塩田津)として、
肥前国南西部の交通の中心として繁栄したという。そんな
観光地である塩田宿を知らないままに塩田町を後にした。

かわりに訪れたのは写真の左に写る嬉野市立塩田中学校
と嬉野市社会文化会館である。中学校の建て替えと、既存
商業施設を挟んだ文化会館の新設の一体的な計画である。
2014年に竣工した建物は「自然との共生」をテーマに建築
デザインを目指す株式会社SUEPにより設計されている。


嬉野市立塩田中学校は、塩田川のそばの中洲地帯にある。
水害の多い地域のため、建て替えられた校舎は2階建の
計画で1階は地面より持ち上げられた高床となっている。
建物の間のソトニワと呼ばれるスペースには、Y型の屋根
から、雨水が水盤や雨水貯留槽に集められる。また建物
全体はY型の庇や屋根が連続していくデザインで、分節
されたボリュームは、日本建築の屋根と調和する風景を
作りだす。自然との共生が図られた建築デザインである。

この中庭はとても面白そうな空間である。ここで繰り広げ
られる学校生活を想像すると、わくわくする思いである。



こちらは中学校と一体で計画された嬉野市社会文化会館
である。中学校と同じようにY型のデザインモチーフと
連続する切妻屋根でデザインされ、内部も白く大きな
家型の空間となっていて印象的である。この建物も外部
の地盤面と連続する立体感のある空間構成となっている。


文化会館の奥には、北側の公園へつながる通路を挟んで、
体育館が設けられている。体育館は半地下であり、周囲の
通路に面した窓によって、内部と外部の連続性がある。
家型のシルエットとその模様に、嘉麻市でみた美術館を
思い出した。こちらは、Y型のデザインモチーフである。


昔ながらも観光地もよいが、その地域で建てられている
特徴的な建物を見るのも楽しい。設計コンペで選ばれる
建物はコンセプトが強く、日常に目にする建物と様相が
異なり刺激的である。そして、またその建物も時間と共
に経年変化をしていく。建築物には、時間がつきまとう。

その建物が建てられた時、そして数年後、数十年後も、
時々でそのデザインや使い方が語られていく。建物が
オブジェと異なるのは、利用者がいて使い続けられて、
初めてその建物としての役割や存在が確かなものになる。

時代が変遷する中で、その使い方も変わっていく。今は
昔に比べ価値観が常に変わっていく時代である。そんな
ことを考えつつこの二つの建物を眺めている。この先も、
この町にとってよい建物であり続けることを願っている。



さて、武雄から自転車の旅もそろそろ締めくくろう。
本当は、祐徳稲荷神社まで行くつもりではあったが、
雲行きもあやしく何より時間が押している。目指すは
肥前山口駅。あと小一時間のサイクリングを楽しもう。

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