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佐賀に残る辰野金吾氏の木造建築

今年の3月の週末は、福岡に比較的近い所をいろいろと
訪れることができた。今回の目的地は佐賀県の武雄市で
ある。博多駅からJRに乗り込みいざ武雄へ。武雄温泉駅
で降りると、曲線と煉瓦に白いラインのモチーフがある。


大阪にある中之島中央公会堂
こちらは福岡の赤煉瓦文化館


かなり強引ではあるが、うっすらと共通点がみえる。
もしかしたら武雄温泉駅は辰野金吾氏へのささやかな
オマージュかもしれないと勝手に妄想し、辰野金吾氏
により設計された武雄温泉楼門・新館を目指して進む。



武雄温泉の楼門。堂々とした外観で来訪者を出迎える

建築家の辰野金吾氏は唐津の出身である。前回の唐津へ
の小旅行では、辰野金吾氏の監修による唐津銀行を見逃
しているので、まだ唐津を訪れる理由がある。ついでに、
ルーナで日本酒も頂こう。次はどのぐい呑にしようかな。

辰野金吾氏は、日本の建築界の第一人者として知られ、
氏の晩年の大作と言われる東京駅がとりわけ有名である。
東京には行ってみたい所が山ほどあるが、次々と見所が
増えてきりがない。今はぼちぼちと九州を巡っていこう。



門をくぐるとすぐに、武雄温泉の建物の入り口がある。
自動販売機の前に立ちすくみ、しばし考える。本日の
目的は、温泉地を訪れながらも温泉につかることでは
ないのだが、いざ温泉を前にして揺れ動く心。でもまだ
早朝の電車に乗って、武雄に降り立ったばかりである。

一応、今日の予定を思い浮かべてみる。ここで1時間
ほど後ろ倒しにしてもよいだろうか。いや、おそらく
この先にはまだまだ誘惑が待ち構えているに違いない。
と数分はたったかもしれない。やはり冷静に次へ進む。



敷地の正面に武雄温泉の木造2階建ての新館が見える。
楼門と合わせて大正4年に完成している。昭和48年には
老朽化により閉鎖されたが平成14年に復元され、令和の
時代にも堂々とした姿を見せている貴重な文化財である。



1階には男女大浴場と他にも小さな浴場がいくつかある。
浴場に有田焼のタイルが敷き詰められ、浴槽には大理石
が用いられた豪華な仕上げ。天井も高く、連続する窓に
より明るい開放感のある特徴的な空間が広がっている。



実現しなかったがビリヤード場やサウナの計画もあったという
大正時代の塗装見本帳の展示がある。なかなか興味深い




次は休憩室である2階へと進む。和室が5部屋設けられ、
ふすまを外せば一体となる和風建築ならではの開放的な
空間。温泉を満喫した後、休憩室でビールを一杯なんて
風景があったのだろうか。100年以上前に思いを馳せる。


もう一度、温泉の前での誘惑に打ち勝ち、次の目的地へ
向かう。武雄温泉に後ろ髪をひかれるも、今日一日はまだ
始まったばかりだ。朝一番だけに、泣く泣く時間を温存
しつつ次へ進む。でもまたいつか温泉に浸かりに来よう。

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