2010年代に私を救ってくれたアニメ主題歌10曲

2010年4月から、私は学生という身分を離れ、いわゆる社会人として生活をしてきたが、その基本的に辛い日常の傍らには、結構な比率でアニメがあった。週に何本もチェックできることはなかったけど、離れることもできないという、典型的な「学生時代にオタクだった何か」になっていたのだが、そんな貧しいアニメ体験であっても、それが、大げさでなく命を救ってくれた、そういうことがかなりあった。そして、その経験を振り返ってみると、アニメそのものというよりも、音楽によって救われた経験が多いように感じる。そういうわけで、私を生きながらえさせてしまったアニメの主題歌を紹介していきたい。

以下では放送当時の映像もできる限りつけた(ゆえに非公式のものばかりになってしまったのだが……)。万が一まだ観て(聴いて)いなかったら、然るべきサービスや手段で観る(聴く)ようにしてほしい。

10. SELF PRODUCER (『お兄ちゃんだけど愛さえあれば関係ないよねっ』(2012)OP)

極めて完成度の高い弩ポップロックチューン。OP映像も単純明快で、気持ちよく観ていればアニメのチュートリアルはほぼ済んでいるという、OPとしては理想的な出来栄えと言えよう。Aメロ4小節目の決め(あーやしくなっ!てー!のところ)で頭を右、左と動かすと爽快で、辛い気持ちを一刹那だけ、やわらげてくれたことを思い出す。

9. 少年よ我に帰れ(『輪るピングドラム』(2011)2クール目OP)

幾原邦彦監督が久々のTVアニメを作るということで2011年当時の話題をかっさらった『輪るピングドラム』。内容もさることながら、やくしまるえつこメトロオーケストラによるOP主題歌2曲は、アニメとの世界観とのマッチ具合といい完成度といい、どちらも素晴らしい。1クール目を飾る『ノルニル』(や、ARBのカバー曲群)も大好きなのだけど、私は、後半の怒涛の展開を盛り上げてくれたこちらのほうが思い入れがある。アニメの物語にあそこまで没頭できたのは、とても良い思い出だ。

(なお「RADIO ONSEN EUTOPIA」はラジオで放送されたセッションを音源化したもので、アニメで使われているものとはバージョンが違うので注意)

8. 白金ディスコ(『偽物語』(2011)8〜11話『つきひフェニックス』OP)

西尾維新原作の『〈物語〉シリーズ』としては2番目のアニメ化タイトルとなった『偽物語』。学生時代に第1作『化物語』に当てられてしまった私は、『偽物語』のアニメが本当に楽しみで楽しみで、第1話の放映時にはテレビの前で正座で待機していた。このシリーズは音楽もよく評判になるけれど『恋愛サーキュレーション』とこの曲が白眉だと思う(個人的には『帰り道』も捨てがたいのだが)。

火憐と月火のファイヤーシスターズは、喜多村英梨&井口裕香のボイスがついたことによってどんどんキャラクターが豊かになっていった印象があって、そのあたりも観ていてすごく楽しかったな。副音声(キャラクターコメンタリー)があったから円盤を買う楽しみもあったな。お金の使いみちにまだ融通が効いた時期に、"ちゃんと"買った物として記憶に残っている。

7. piece of youth(『ガールズ&パンツァー 劇場版』(2015)ED)

映画そのものの映像はさすがになかったので公式のMVを貼る。『ガルパン』については、私は劇場版が公開されてから追いかけたクチだが、スポ根王道な展開で女子たちが頑張る姿に、ただ涙滂沱であった。このエンディングは西住姉妹の聴こえないが内容がわかる会話や、日常に戻っていく少女たちの姿が本当に尊く、何度観てもジーンというか、お前何回泣くんだよという感じになってしまう。一応アマプラのリンクも貼っておく。

Amazon.co.jp: ガールズ&パンツァー 劇場版を観る | Prime Video

6. どう考えても私は悪くない(『私がモテないのはどう考えてもお前らが悪い!』(2013)ED)

ここ2年ほどは青春学園百合コメディとして様々な界隈を騒がしている『わたモテ』だが(詳しくは→「私がモテないのはどう考えてもお前らが悪い!」を忘れていたあなたが、今すぐ読むべき理由)、2013年のアニメ版もとても良くて、中でもいず様こと橘田いずみが演じた主人公・黒木智子の当たり役ぶりといったらなかった。OPは鈴木このみ n' キバオブアキバによるヘヴィなナンバーであったが、このEDはいず様のボーカルが冴える、ポップ&卑屈な名曲。この曲の歌詞とアレンジを変えて、ゆうちゃん(CV:花澤香菜)が歌い上げる「私がモテないのは可愛くないからだよね?」も、とても切なくて、胸がいっぱいになってしまう。というか聴いてて思い出したよ、私が何度も泣いてしまったのはこっちのほうだった……。

ちなみに「どう考えても私は悪くない」はクラムボンのミト、「私がモテないのは可愛くないからだよね?」は2 ANIMEny DJ's(ミト+agraph牛尾憲輔)がそれぞれアレンジを手がけている。

5. 動く、動く(『少女終末旅行』(2017)OP)

このランキングではいちばん最近の曲である。恥を忍んで言うが、本作を視聴したのは去年(2019年)の話で、夜中に家事をしながらプライム・ビデオで何気なく視聴して、イントロで頭がぶっ飛ばされてしまった。アコギと電子音を主体とした前半、音圧がぐっと上がってポップさ(+少しの憂い)が爆発するサビ、何度聴いても頭が多幸感で満たされてしまう。映像もすごく良くて、サビでのチト(CV:水瀬いのり)とユーリ(CV:久保ユリカ)の動き、決してリズムに合ってるわけでもないあたりが本当に見事だと思う(1:08あたりの踊り!)。

なお原作はかなり前から読んでいたんだけど、そのアニメ化作品をリアルタイムでチェックできていなかったことを私は深く深く後悔した。どんなに日常がやばくても、創作物を観たり聴いたりしたほうがいいということを、教えてくれたのがこの曲と映像である。

4. せーのっ!(『ゆゆ式』(2013)OP)

2010年代はきららアニメの台頭というか、ブランド化が著しかった年代だと思うのだけど、その中で私が最も好きなのが本作とこの曲である。上げ目なBPMと文字数多めな歌詞が演出する疾走感(ボカロっぽみ!)、アコギとストリングスが冴えるアレンジは、作品の青春感を恐ろしくブーストし、原作を遥かに超える尊さを与えてしまった。情報処理部の日常を観ることで、なんとか明日を迎え(続け)ることができた、そんな経験が、あなたにもあるはずだ。

なお同年には「きんいろモザイク」、翌年には「ご注文はうさぎですか?」が始まっており、このあたりが「きららアニメ」のブランド化に寄与した役割は多大なものがある(と思う)。

3. Borderland (『ヨルムンガンド』(2012)OP)

「アニメOP開始10秒選手権」みたいのがあったらぶっちぎりの優勝だと思う。原作も名作なのだがアニメ版(特に序盤)の出来は神がかっており、原作の粗さをいい意味で手当しながら魅力を底上げすることに成功していた。とても幸福なアニメ化だったと思う。このOPと、ココ(CV:伊藤静)の声がだばっだば脳内麻薬を出してくれて、猿のようにDVDをリピートしながら資格試験の勉強をしていた時期があった。少し前はアマプラで観られたんだけどもう観られないようです……。

なお原作者・高橋慶太郎描く凶暴女子が存分に楽しめる次作『デストロ246』も、アニメ化されるんだろうなと思ってたけどされなかった。あまりにも内容が反社すぎるからだろうか……。読んだことない人はぜひどうぞ。

2. irony(『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』(2010)OP)

決算業務でぼろぼろになった心身を引きずって、ClariSの1stアルバム「BIRTHDAY」を買いに行った日のことはよく覚えているのだ。「irony」を聴いて改めて「いい曲だなあ」と感じ、そして本作のいろいろなシーンを思い起こして、ポロポロ泣いていたものである。桐乃役の竹達彩奈、中村悠一、黒猫役の花澤香菜、そしてなんといってもあやせ役の早見沙織といった弩級キャストの名演は言わずもがな、キャラもいちいち魅力的で、さすがの大ヒット作である。

『コネクト』(『魔法少女まどか☆マギカ』OP)や『ナイショの話』(『偽物語』ED)もド名曲だけど、(私の)救いになったという点ではランク外になってしまった……。思い入れ補正ということで勘弁してください。

1. みっつ数えて大集合!(『みつどもえ』(2010)OP)

上のツイートは、新卒で入った会社で日々詰められまくっていた私が『みつどもえ』のアニメ第1話を観たときの感想である。寮の部屋で、OPサビの最後でそう思えて、ぶわーっと泣いてしまったのだ(まあ、あの当時はひとりで食事をするたびに泣いていたのだけど)。

『みつどもえ』への私の個人的な思い入れは上の記事でも書いたとおりだが、このアニメ版の「満を持しっぷり」は本当にやばかったんだよ。連載が中断してもう終わりなのかなとか思ってたら再開&アニメ化の報で、しかも蓋を開けてみればアニメも良く出来ていて、主題歌がいい曲だったということで、大げさに言うなら、未来にはまだ希望があるのだと思わせてくれたわけである。ちなみに作曲したのは前山田健一akaヒャダインである。ヒャダさん、あなたの作ったこの曲は人を救いましたよ。

以上である。2019年年間ベストはまた別途。

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