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「私がモテないのはどう考えてもお前らが悪い!」を忘れていたあなたが、今すぐ読むべき理由

いま、「私がモテないのはどう考えてもお前らが悪い!」(以下、わたモテ)が面白い。インターネットではもうすでに話題になって1年以上経っているように思うが、ここでひとつ記事を書いて紹介しておきたい。

なおこの記事の主旨は、上のとおり「新刊15巻の発売日は今月5月11日(土)であるから、みんな買ってくれ」ということなので、最初からそうしようと思っている人は特にこの記事を読む必要はない。静かに新刊を買って、ガンガンONLINEの更新を待って、本作を応援してほしい。

ぼっちコメディから、豊かな学園青春コメディへ

まずだいたいの人は知っていると思うが、本作は、所謂「コミュ障」で「ぼっち」であるところの女子高生・黒木智子が、なんとか高校生活を充実させようと奮闘する学園コメディである。現状を打破せんとする智子の奇行や、そのため引き起こされるとんでもない結果の面白さが人気と共感を呼び、2013年にはテレビアニメも放送されている。

だがその後、本作はそこまでの(売上的な)爆発を見せていない。そのうちひっそりと完結する…予定だったのかもしれない。実際作者も(アニメが終わって)「部数しぼられ続けてる」と述べているくらいである。

↑単行本10巻のあとがき漫画より。

確かに「処女ネタで最終巻まで」(単行本11巻カバー裏より)持たせようとしたら、そうなっていたかもしれない。

しかし潮目は変わる。その契機となったのが「修学旅行編」(単行本8巻「喪71:モテないし出発する」〜単行本9巻「喪80:モテないし修学旅行最後の夜」及びその前後数話)である。2年生になった智子たちが、奈良・京都への修学旅行へ出かけるエピソードだ。

↑単行本8巻「喪72:モテないし京都に着く」より。旅行の最初の夜はこんな感じだった。

智子はここで班長にさせられ、行き場のなかった「余り物」女子たちのヘッドとして嫌々ながらがんばることになるのだが、これが彼女の運命を変える。もっと具体的に言うと、ヤンキーである吉田さんをお茶目な方法で起床させたあたりから、智子は少しずつ、周囲と言葉を交わすようになる。修学旅行という「そばにいる人とコミュニケーションをとらざるをえない」環境が、彼女と、その周囲の人々を、劇的に近づけることになる。

↑単行本8巻「喪74:モテないし班行動する」より。ヤンキーを恐る恐る起こそうとする智子。次なる手とは…!?

そして修学旅行から帰宅後もその流れは続く。智子の奇行は特段止まってはいないのだが、クラスメイトとお昼を一緒に食べるようになり、放課後一緒に帰るようになる。そして周囲の智子の印象は「なんかよくわかんなくて怖い人」から「ちょっと変わってるけど話せなくはない人」に変貌し、逆にその異質さから、さまざまな人の興味を呼ぶことになる。

↑単行本9巻「喪82:モテないし日常に戻る」より。時代の変わる音である。そして智子の本意気の動揺顔がやばい

智子と仲良くなった理由は人によってさまざまである。「修学旅行で話すようになったから」「実は趣味が近いから」「セクハラしてくるから」「変態行為をしてきてキモイから」等々。そして結果として「友達が話していた人だから」という最強の理由が、さらに多くの人々を引き寄せていく。登場する少女たちの属性もバラエティに富んでいて、読んでいてまったく飽きない。あと何より、みんなすごくいい子なので、少し話すようになれば、智子のことを放っておけなくなってしまうのである。智子は意外と、人を惹きつける引き出しを持っていたのだ。

そして物語は、智子の精神の削れ具合とともに周囲との仲も深まる「体育祭編」(単行本9巻)、智子のいとこ・きーちゃんが新たなヤバさを手に入れる「冬休み編」(単行本10巻)、ひとつ上の学年を送る側となった智子を描くガチ感動エピソード「卒業式編」(単行本12巻)、智子の成長ぶりに涙する「2年クラス会編」(単行本12巻)、3年生になった智子たちの関係がさらなる盛り上がりを見せる「遠足編」(単行本13巻)、キャラクターごとの交流がフィーチャーされる「大学見学編」(単行本14巻)と続き、智子と周囲のつながりはだんだん濃く、硬いものになっていく。物語は「個性豊かな女子たちの日常もの」の様相を呈し、女子同士の意味深なやり取りによる「ライトな百合もの」としての魅力も獲得していく。

↑単行本13巻「喪125:モテないし遠足がはじまる」より。智子を中心に女子たちが集合し、なんだかすごいことなってきていることを示すシーン。

↑単行本13巻「喪131:モテないし帰るまでが遠足」より。いつも優しい加藤さんに智子はおみやげを貢ごうとする。それを眺めるネモとゆりの表情に隠されたものとは。

それでもギャグは健在

しかし本作が偉大なところは、ちゃんとお笑いを忘れていないことである。いくら周囲と仲が良くなっても、智子のゲスな感性は変わっていないため、破壊的なギャグやオチはそのまま楽しめるのだ。

↑単行本12巻「喪112:モテないしバレンタインデーを送る(1)」より。うんこ型チョコを作るという、小学生レベルのセンスを発揮する智子。

↑単行本13巻「喪132:モテないし先輩後輩の関係」より。ひょんなことからお近づきになった1年生女子に対する思い。率直に言って最悪である

そして、昨今あまり支持されない「長期連載」というシステムが、ここまで豊かな物語を産んだことは特筆すべきだろう。ガンガンONLINEというデジタル媒体であったこともあるのだろうが、何よりも、連載をやめなかった作者、そしてさらに何より、やめさせなかった編集部の英断に、拍手を送りたい。

新刊を買ってくれ(Reprise)

そして冒頭の話に戻る。本作の単行本15巻が発売されるのは今月5月11日の土曜日だ。買え。紙でも電子でも好きなほうをだ。なに、忘れる? 通販で予約しろ。Amazonでも楽天ブックスでもYahoo!ショッピングでも、好きなサービスを使え。

リアル書店で買いたいなら、Gooleカレンダーに登録しろ。手持ちの手帳にメモれ。そして願わくば16巻も、17巻も、その先も、買ってくれ。最近はコミックナタリーiOS / Android)でもアルiOS)でも、漫画の新刊を忘れないようにしてくれる便利サービスがいっぱいあるぞ。見ろ。アプリを入れろ。

そして、ガンガンONLINEではいつでも、最新2話が無料で読める親切設計だ。アプリ(iOS / Android)を入れて、更新を心待ちにする日々を、送ってほしいんだ。ちなみに更新日は、毎月の第1と第3の木曜日だ。

あと、15巻の発売日でもある11日から19日には、原画展もあるぞ! 浅草橋っていう、少し都心からは離れてる会場だけど、会期短いけど、ここで動員できれば、また、よいことがあるはずだ。えっ絵自体に魅力がない? 下手? お前それは「Homecomingsの英語がヘタだ」と言っているのと同じ世迷言だ。何もわかっていないことと同義だ。耳を貸す必要はない。

そして願わくば、アニメの2期を、やってほしいと、あなたにも、思ってほしいんだ。智子役を演じてくれた、いず様こと橘田いずみは、6月から1年ほど、イギリスに行ってしまうそうだけれど(それ自体は、とても応援するべきことだけれど)……。

そもそも1期の円盤が売れなかったから無理だとか、「月刊少女野崎くん」だって無理だったんだぞとか、ネガティブな要素はたくさんあるけれど、それでも、単行本が売れていれば、なんとかなるかもしれない。少なくとも、ダメな方向ではないはずだ。こみなんとかさんを、ネモを、ゆりちゃんを、うっちーを、加藤さんを、動いている彼女たちを、観たくないか? 私は、観たいんだよ。あと、いず様のワタモテRADIOもまた聴きたいんだよ

そう、世の中は、いろいろなネガティブ要素に溢れている。でも、それであっても、前に進むことを、我々は、少なくとも私は、智子から、もこっちから、黒木さんから、クロから、学んだんだんじゃないのか?

↑単行本12巻「喪122:モテないし3年生になる」より。

自己紹介で盛大にスベる智子の背中に押され、自らの趣味と夢をカミングアウトした、ネモの震えは、私の震えだ。だから怪文書と言われそうだけど、この記事を書いた。だから、あなたも、わたモテがいいと思ったら、よかったと、誰かに言ってほしいんだ。そうすればきっと、あなたにしかわからない、いいことがあるはずだ。この漫画は、そんな心持ちにさせてくれる漫画になった。積極的な価値感情を、広い範囲の人々の間に、永続的に、しかも稀にみるほど強く呼び起こすことのできる漫画だと思う。これが、この記事のタイトルの答えだ。おすすめだ。

補遺:キャラクター紹介

以下は資料編だ。簡単なキャラクター紹介をする。このマンガは上のとおりさまざまな登場人物が入り乱れるようになるとともに、彼女らがいろいろな名前で呼ばれるため、初読では混乱しやすい。混乱した際にはここに戻ればいい。

なお東尾維新(@easttail_reform)さんがとても完成度の高い相関図を作られているので、混乱したらこちらを参照するのもよいだろう。というか、こちらのほうが網羅性高くて良いな……!! しかも随時更新中だ。

ここでは、なるべくネタばれなしで読めるよう、下に主要人物を挙げるに留めておく。


黒木智子。言わずと知れた主人公。ゆうちゃんからの愛称「もこっち」が公式にも使われているが、物語が進むにつれ、さまざまな呼ばれ方をするようになる。アニメ版のCVは橘田いずみ。


ゆうちゃん。本名は成瀬優。智子とは中学生のときから友人で、現在は別の高校に通っている。巨乳でバ●、でもとてもいい子。アニメ版のCVは花澤香菜。


小宮山琴美こみちゃん等の呼び名で呼ばれる。智子からの呼び名はこみなんとかさんメガネコオロギ等。智子の弟である智貴のことが好き。常識人かと思いきやだんだんやばくなっていく人1。アニメ(OVA)でも一応登場しており、その際のCVは水橋かおり。


ネモ。本名は根元陽菜(ひな)。実は1巻から登場しており、最初に智子に近付いたリア充少女である。周囲には秘密している趣味と夢があり、それが物語のひとつのキーになる。アニメ版のCVは黒瀬ゆうこ。


ゆり。フルネームは田村ゆり。修学旅行で智子と班が一緒になった。黒髪とだぼっとした長袖がトレードマーク。あまり感情を見せないタイプだが、修学旅行以降、智子に何かと話しかけてくる。


うっちー。本名は本編で見た方が楽しいと思うので伏す。修学旅行で智子と班が一緒になった。そのシンプルな顔から、智子の脳内では「絵文字」と呼ばれる。常識人かと思いきやだんだんやばくなっていく人2。


吉田さん。下の名前は茉咲(まさき)。ヤンキー。修学旅行で智子と班が一緒になった。智子にXXXをXXXXされたり、XXをXXXられたりといった目に遭い、怒る。喧嘩っ早いが、そこまで無理目な暴力はしない人。彼女も周囲には秘密の趣味を持っているが、彼女の場合は結構バレバレである。


まこっち。本名は田中真子。ゆりやキバ子と仲がいい。智子の脳内では、ある出来事から「ガチレ(ズ)さん」と呼ばれる。喧嘩したゆりに自分から謝りに行く、孤立したキバ子を心配して声をかけるなど人格者。


岡田茜あーちゃんと呼ばれることも。ネモと同じリア充グループで、1巻からいた。髪型と眉毛が印象的。たまにきつい物言いをするが、吉田さんにシメられていた智子を助けようとするなど悪い人ではない。アニメ版のCVは朝井彩加。


加藤さん。下の名前は明日香。美人かつ超優しい、要は聖人。その気配りのできる様子から、智子からも「お母さん」「No.1(ホステス的な意味合い)」と思われている。


南さん。智子の脳内愛称はキバ子。下の名前は小陽(こはる)。リア充ぶっているが悪口ばかり言っており、周囲との軋轢を起こすことも多い。CVは金元寿子とか、伊瀬茉莉也とか、齋藤彩夏あたりが似合いそうな感じ。


二木(ふたき)さん。下の名前は四季という。常に変わらない表情と、高すぎる能力から人間離れした感じを受けるが、口を開けば結構まともなことを言ってくれる。


1巻から登場していたリア充男子で、ネモたちと同じグループ。愛称はよっちゃん。本名は清田良典


智貴(智子の弟)のことが好きな少女。名前は井口朱里(あかり)。智子らの1年後輩(よって智貴とは同学年)。同じく智貴のことが好きな小宮山さんと、文字通りの悶着を起こす。


…まだまだいるが、あとは判別できると思うので、このあたりにしておきたい。

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