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作品のサイズについて 往復書簡#35

画家・タシロサトミさんとの往復書簡35回目です。
前回はこちらです。

こんなふうに現実世界をみているから、私の描く絵はグレイッシュなんだと思いますよ。どんな嘘でもなるべくならつきたくないですが、悪意のない小さな嘘は優しさからの派生だったりして、もしも色で表現するならば少し濁った、でも意外ときれいな中間色なのではと思います。
往復書簡#34より


タシロさんの嘘についての考察、作品とのつながりなど、とても面白く読ませていただきました。こういうやり取り、普段の会話だとなかなかできないものですよね。言葉として書かれるからこそ明確になる。良いですね。

小河さんは描きやすい作品サイズありますか。もしあれば理由や、苦手サイズ、大小・比率など作品サイズにまつわるお話を教えてください。
往復書簡#34より

作家さんによって得意なサイズってありますよね。
私も現在は100号(130×162cm)〜0号(18×14cm)まで、いろんなサイズの作品を描くのですが、昔は大きなサイズの方が得意で小さなサイズは苦手でした。
大学生だった頃はではアトリエがあったので200号(194×259cm)やそれ以上の大きさの作品も描いていました。社会人になって画廊で発表していた時も基本100号サイズの作品でした。

しかし、子育てで2000年から2009年まで活動休止したのちに作家復帰する時は、F3号のキャンバス作品を連作で描いて展示しました。
それまで3号サイズは描いたことがなかったのですが、ギャラリースペースが小さかったことと、子供が幼稚園や学校に行ってる合間に描くには3号ぐらいがちょうど良かったんです。おかげで作品制作もスムーズにいき展覧会も成功しました。

小河泰帆展 2009年11月2〜8  ギャラリーMu-Rung 展示風景

その後は小さな作品にも慣れ、0号から100号ぐらいまで描けるようになりましたが、大きな作品と小さな作品では作品に対する姿勢や考え方は違うと思っています。

100号などの大きな作品は、全身を使ってストロークを描くので身体性が強く出て、アクションペインティング的になります。動きの痕跡と絵画空間の融合を探求したいと考えているので、もっと大きな作品をたくさん描いて失敗しながら研究したい。これはすぐにできることではないので、数年かけて何枚も描いて、より良い作品を目指していきたいです。

小さなサイズの作品は大きなものとは違って、画面の中にぎゅっと自分の作品の要素を詰め込むような感じで手の中で愛でるように描きます。なのでちょっと可愛らしい。あと、小さいからこそ気軽に素材や描き方の実験ができたり、その時に思ったことなど日記的な作品を描くこともできるので、自由度が高いと思っています。

小さな作品も大きな作品も、それぞれ良いところがあるので、やったことをフィードバックしながら変化していったらいいのではと思っています。

作品の画面比率ですが、私は正方形のSサイズが得意です。
理由は正方形だと上下左右にとらわれずに浮遊する形態が描きやすいと思うからです。どうしても横長だと水平線、縦長だと垂直な動き、重力的なものが画面の中で強くなって固定されるように思うんですよね。
でも、画面構成が手癖になってきたり単純に飽きてきたら、FやMなど、普段描いてないものに変えます。いつでも新鮮な気持ちで画面に向かいたいと思っているので。トキメキが大事。

さて、次のお題ですが、タシロさんの今年のまとめと来年の抱負を教えてください。
私は今年は色々大変なこともあったのですが、制作と作品展示(個展1つ、グループ展17)できたことは良かったなと思っています。これは画廊さんや画商さんやお客さま、周りの方々のおかげです。もし私1人だけだと心が挫けて作品制作できなくなっていたかもしれない。展覧会の締切があるおかげで今年を乗り越えられました。とてもありがたかったです。
来年は今年よりはグループ展の数を減らしますが、その分じっくり制作したいなと思っています。トライ&エラーをたくさんしたい。あと、引き続き作品リストなどの事務的処理の強化、止まったままのホームページの更新もしたいです。

タシロさんはどうですか?
年の瀬でお忙しいことと思うので、お時間のある時にでも。

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