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【NPO書評】応援消費――社会を動かす力 (岩波新書)

前にも、この本のもとになった「応援消費の謎 (碩学d新書)」を読んだことのある、東京都立大学経済経営学部教授の水越 康介さんの新書を読みました。テーマは同じく「応援消費」です。
前回の本よりさらに詳しく解説されていました。

応援消費――社会を動かす力 (岩波新書)
水越 康介  (著)
2022/7/21

著者の専門はマーケティング論です。
寄付やNPOの文脈ではなく、マーケティング論からのアプローチで「応援消費」を読み解いたものです。
なので、応援消費に含まれる「寄付」や「贈与」の側面について、恐らく著者自身が応援消費をテーマにするまではあまり詳しくなかったのだと思います。このテーマのために一から学んだ足跡をもとに、寄付、贈与、ボランティアの歴史や現在の立ち位置を解説していっているのが、逆に勉強になります。歴史も含めて概観を押さえるのに役立ちそうです。

さて、応援消費は、東日本大震災の支援の仕組みとして広まったところから、一時期停滞していましたが、今回の新型コロナで新たに応援消費がブームとなりました。これらの経緯を新聞記事の内容から丁寧に解説しています。論点で面白かったのは、新型コロナによる応援消費の下地としてふるさと納税があったという推論です。ふるさと納税の歴史的な解説もとても勉強になりました。

消費社会と呼ばれる現代社会で、応援消費が意味することは何なのか?
そこにはいろいろな意味が含まれています。単なる消費ではなく、そこに贈与が含まれる。但し、その贈与も利他性というより、逆に経済の「交換」という側面が強いということでした。自分が好きなものを残すということが交換されているというものでした。

本書の中で、応援消費に類似するようなもの、例えばエシカル消費などをいろいろとピックアップして丁寧に解説をしているので、知識を得るのに参考になります。その上で、日本にあったカンパ文化については触れられていないので、その部分もぜひ取り上げていただきたかったですね。

さて、寄付界隈に関する基本情報として、押さえておきたい一冊です。


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