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【NPO書評】貧困の終焉: 2025年までに世界を変える

新型コロナ禍で時間がある時は本を読んでいたので、だいぶ読書力が上がりました。
500ページ越えの本もわりと普通に読むようになりました。
最初の100ページをなんとか読み終えると、本の癖が体に染みついて、そこから先は順調に読み進めることができます。

今回の本は、文庫本で600ページ越えですが、事例豊富で物語として楽しみながら読むことが出来ました。
昨年末から続く、国際開発を知るシリーズの続きです。
みなさんに教えていただいた本です。

今までの国際開発を知るための本は海外援助に対して、ほぼ100%批判的な本でしたが、こちらは海外援助に肯定的な内容です。

SDGsの前身である、2000年9月の国連ミレニアム・サミットで採択された国連ミレニアム宣言を基にまとめられた「ミレニアム開発目標(MDGs)」に関するものです。
SDGsが2030年までに「誰一人取り残さない」ために先進国にも途上国にも関連する共通目標となっているのに対して、MDGsは途上国を対象にした2015年までの開発目標です。

このMDGsの開発に深くかかわった、元ハーバード大学教授で、コロンビア大学地球研究所所長のジェフリー・サックス教授の著書です。

貧困の終焉: 2025年までに世界を変える 
(ハヤカワ文庫)
2014/4/10
ジェフリー・サックス (著), 野中 邦子 (翻訳), 鈴木 主税 (翻訳)

アメリカでは2004年に、日本では2006年に出版されたものです。
(文庫版なので、2014年発行です。)

サックス教授は、単なる研究者ではなく、ボリビア、ポーランド、ロシア、中国、インドの財政改革に携わった/研究してきた人です。そこから次に行き着いたのがアフリカでした。これまでの国々での改革モデルでは対応できないアフリカの特殊性。内陸国が多い、インフラが整備されていないという点から、どのような開発が必要なのかということを明確に語っています。教育、医療、インフラへの投資が大切ということです。サックス教授は、貧困層が経済発展していくためには「はしご」という表現をよく使っていました。はしごを登る最初の手助けをしっかり行なえば、国が発展していく。但し、最貧困層がはしごを登るためには、最初にはしごに足を掛けるサポートがなければ発展していくことができない、その部分を先進国が積極的支援をするべきで、防衛費などを削減して、先進国でもそれほど大きな負担額がなくても大丈夫というお話です。本のタイトルの通り、「貧困の終焉」の道筋を明確に示したものです。
サックス教授は、開発援助に批判的な本の内容とはちがい、国連や世銀などの国際機関、あるいは国同士の二国間援助の可能性を信じています。この辺のスタンスが、国際協力に対する考え方の違いになってきますね。

実際には、先進国が口約束だけのMDGsへの支援宣言で十分な支援を行っていないので、結局は2025年までの目標達成は難しく、SDGsへと移行されてしまっています。

これまで、国際協力関係はあまり情報を仕入れていなかったので、今回の本もだいぶ学び深いものとなりました。SDGsの開発目標の前身のMDGsの趣旨や目標の考え方について詳しく知ることが出来ました。また、国際協力の必要性(一緒に経済発展をしていかないとリスクが大きいこと)を学べる本でした。

この本を読むと、貧困問題を解決できると思えます。でも、実際にはまだまだ解決には道半ば(あるいはそれ以上)です。
この本も、海外協力分野では古典になりつつある本だと思います。
NPO関係者のみなさんは、一般知識として読んでおくことをお薦めします。


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