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【NPO書評】ぼくは福祉で生きることにした ――お母ちゃんがくれた未来図 河内 崇典 (著) #ボクフク

今回も、知り合いが出版した本の紹介です。
日本財団で福祉の担当をしていた時にお仕事でご一緒した方で、その後、CANPAN時代には関西の社会起業家のリーダーという立ち位置で交流した、大阪のみらいず(現・NPO法人み・らいず2)の河内さんの初の書籍です。

山田にとっては、地域福祉の若手リーダーであり、関西の社会起業家のハブとなるキーパーソンという、2つの顔を持つ男というイメージです。ここ数年は、SNS出の交流だけでリアルにお会いする機会がありませんでしたが、いろんな機会にその活躍は見聞きしていました。

河内さんが福祉事業を立ち上げ、社会起業家としても注目され、事業展開をしていくお話です。河内さんの思いと半生を織り交ぜながら、ふだんの語り口調、あるいはSNSの発信の軽快さのままに、赤裸々に語られています。なので、とても面白く、読みやすい文章になっています。とても大事な問題を取り扱っていますが、気軽に読める本としても、お薦めです。
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ぼくは福祉で生きることにした ――お母ちゃんがくれた未来図
 2022/9/5
河内 崇典 (著)

さて、山田も、それなりの数の社会起業家の本を読んできましたが、その中でも特殊な本で、だからこそ、多くの方にぜひ読んでほしい本でした!

その特殊さとは、普通の人がたまたまの出会いで他の地域・団体のモデルとなるような、世の中に仕掛けていくような社会起業家になるということです。他の社会起業家の本のようにすごい人が素晴らしい事業を展開していくという物語ではなく、社会問題に関心もなかったような普通の大学生(どちらかというと大学にもほとんど行っていない学生)が主人公の物語です。当事者でもない一般の人がなぜ社会問題に取り組むようになったのかのロールモデルとして、とても興味深い内容です。

普通の人が社会の問題に出会うということ、そこからなぜその問題に取り組むのかという軌跡には、いろんなヒントが含まれています。重要なのは、出会う社会問題ではなく、社会問題を知るきっかけになった人との出会いが大事だということ。社会問題に共感するのではなく、その人に共感して、自分事として感じること、その人の先にある社会問題へと意識を拡げていくことって、大切ですね。人に対する強い共感があるからこそ、ぶれずに事業化していくことが出来たのだなと、本書を読んで思いました。
そして、出会った社会問題に対して取り組んでいくには、頭で考えるだけではなく、ほんと、行動力が大事ですね。思ったことや考えたことをまずは実践していく。河内さんの強さは、人への共感のぶれなさと、行動力、実践力だと思いました。そして、もう一つ大事な要素は、カリスマリーダーではなく、自分で出来ないことは周りに頼る”弱さ”も兼ね備えていることです。今の時代のNPOの組織運営で大切なポイントです。”みらいず”チームの組織力が本書の中でも随所に垣間見えてきます。
多くの社会起業家がそうですが、事業を立ち上げ、組織を作って、すべて順風満帆というわけではありません。河内さんのみらいずも、本当にいろんな苦労がありました。でも、その困難を乗り越えていくのは、代表のリーダーシップだけではなく、”みらいず”チームのチーム力があってのものでした。
NPO関係者のみなさんにとっても、いろんな気づきを得られると思います。この本の内容を語りだすと、いろんなヒントがどんどん出てきます。

そうそう、今回は「NPO書評」なので、NPO論的に語っていますが、もう一つの特徴は、地域福祉論の本ということです。NPO関係者にとっては、福祉の勉強をする入門書的な物語としてお薦めです。

最後にまとめると、こんな方々にお薦めしたいですね。ぜひ、一度手に取ってみてください。
NPOの経営者には、同じ経営者として共感とヒントを得ることができる参考書です。
NPOの職員には、NPOの代表がどんな思いでNPO経営や事業運営を行っているかを理解するのによき物語です。
福祉を志している若い方や福祉の現場で働いている若い方にとっては、福祉への思いを再確認するためのガイドブックです。
そして、NPOにも福祉にも直接携わることがない一般の方には、福祉やNPOの現場のリアルを知るための参考書になります。

河内さん、素晴らしい本をありがとうございます。そして、出版おめでとうございます!


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