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【NPO書評】協力のテクノロジー: 関係者の相利をはかるマネジメント

NPO向けの講座でニーズは高そうだけど、なかなかよいコンテンツ(講座、もしくは講師)がないテーマに「事業づくり」があります。
事業づくりは、分野や活動によって多種多様で、団体の規模や成長ステージによっても違うので、NPOに共通しての話しが難しいという状況もあります。

そんな中でようやくNPOのみなさんに絶賛お薦めしたい本を読みました!
発売前に予約して3月には手元に届きましたが、これまで積読でした。。。もっと早く読んで紹介するべきでした。

本書は、元シーズ・市民活動を支える制度をつくる会の松原さんが主に執筆されたものです。松原さん自身も、NPO関係者のみなさんも、それぞれSNSで紹介されていたのでご存じの方も多いと思います。まだ読まれていない方は、夏休みの課題図書として必読ですよ。

協力のテクノロジー: 関係者の相利をはかるマネジメント
2022/4/6
松原 明 (著), 大社 充 (著)
https://amzn.to/3oCwORz

内容が濃すぎるので、本の内容をそのまま要約することはできないので、「協力のテクノロジー」を読み解くための山田なりのテクニック(捉え方)をお伝えしていきます。

・世界、あるいは社会の捉え方を学ぶ。
・社会学や経済学、哲学などの観点から社会の形を知る。さらに、世の中の流行りの主義主張の変化から社会の変化を理解する。
・それらを踏まえて、現代社会のあり様を押さえる。この時代に活用できる「協力のテクノロジー」ということ。
・協力は昔からあったが、それぞれの時代にあった協力の形がある。協力の種類は一つではない。
・「協力のテクノロジー」として説明されている協力のポイントは「相利」である。・多様な価値観の現代において、みんなで同じ目的・目標に向かって協力していくことは難しい、時代にあわない。
・現代の協力は、多種多様な人や組織がそれぞれの目的・目標をもって取り組み、それぞれの目的・目標が達成されつつ、事業の全体の目的・目標も達成されている姿を目指す。
・本書で紹介される技術は、誰もが使えるもので、再現性があるもの。
・社会の構造を捉え、社会課題の構成要素を分解し、関係者を把握し、関係性を整理した上で、それぞれの関係者が求める目的・目標を確認する。そこを起点に物事を進めていく。(相利の開発)

というのが、山田が理解したところです。
ちなみに、ここまで、「協力のテクノロジー」というものがどのようなものなのかということは、山田、具体的にほとんど書いていません。なぜなら、「協力のテクノロジー」に関する腹落ち具合(なるほど感と納得感と有用感)を松原さんの圧倒的な知識量と具体的な事例、鋭い社会分析による文章で体験していただきたいと思ったもので。山田の無粋の要約は不要ですね。ぜひぜひ、本書で楽しんでいただきたいです。

但し、この本はとても具体的でわかりやすい文章で読みやすいはずなのですが、逆説的に読みにくい本になっています。なぜなら、本を読みながら、どんどん妄想が広がったり、すでにやっている事業の反省の思いが大きくなってしまい、本書に集中できないという欠点があります。ほんと、文章は読みやすいのですが、本から勝手に考えが離れていってしまい、自団体のことを振り返ってしまう、反省の書です。

ところで、最初に「事業づくり」を学ぶのに最適な本とお伝えしていましたが、これからの助成金シーズンに向けて最適な一冊です。社会構造を捉えた上で、どのような打ち手があるのか、有効なのかを考えていくために、具体的に使えるフレームワークやスキル、考え方が数多く紹介されています。しかもそれらの技術が体系的に解説されているので、本書を読みながら丁寧に取り組んでいけば、具体的な事業計画になり、かつ課題解決の技術書が出来上がるはずです。

一方で、新規事業だけでなく、すでに実施している事業にも有効活用できる内容です。事業を行っている中で何かしら課題を抱えていると思います。その際に、あらためて取り組んでいる社会状況や関係者の状況を整理して、今何が本当の課題になっているかを整理し、新たな打ち手を考えるためのノウハウ集にもなります。

最後に、NPO法成立の立役者のお一人である松原さんが、NPO法制定の事例をもとにどのように「協力のテクノロジー」を活用していたのかの解説は圧巻です。
NPO法制定の歴史、協力のテクノロジーである相利の手法、法制定のロビイングなどを詳しく知ることができました。
先日紹介した「非営利法人制度改革の研究」と同時期に読んだので、さらに勉強になりました。

他にも、NPO3.0、地域づくり、観光など、いくつか具体的なトピックスにもとづく解説もあり、読みごたえがあります。考え方を整理するのに有効です。

ということで、あらためて、今年の夏休みの課題図書として、ぜひどうぞ。

最後に、松原さん、大社さん、素晴らしい書籍をありがとうございます!


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