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プール注水の止め忘れ (第2回) なぜ毎年起こるのか?

プールに水を張る際に、水を止めることを忘れて膨大な水道代を請求される、という事件が毎年起こっています。わが子のビニールプールに水を張るのと違って、教職員が学校プールに水を張るタスクは、止水を忘れると多大な水道代を請求される、メディアで報道され学校や自治体が非難されかねない、大事な仕事です。これがなぜ毎年起こるのでしょうか?

まずこのタスクの特徴は、注水開始から止水まで、言い換えると「タスクの開始から終了までの間にかなり時間がある」 ということです。

タスクの開始から終了までの時間について、身近な例で説明しましょう。

1. 歯磨き
テレビや映画で、歯磨きする間ずっと水を出しっぱなしにするシーンを見かけます。歯磨きが終わり口をゆすげば水を止めます。水を出してから止めるまでの時間は比較的短く、水は目の前で流れているので、止水を忘れることはまずありません。
洗面で水を出す → 歯磨き(短時間) → 止水する

2. ホテルで浴槽にお湯を張るタスク
自宅でお湯を張る際は「♪お風呂が沸きました」と自動で止水されますが、この機能がないホテルでは、お湯が溜まるまで10分くらいでしょうか、荷物の整理やテレビを見るなどして、気がつくと浴槽からお湯が溢れていたということがよくあります。
注水開始 → 10分ほどその場を離れる → 止水する

プールに水を張る場合は、注水開始から止水までの間は数時間あります。
注水開始 → 数時間その場を離れてほかの仕事をする → 止水する

この数時間、プールサイドで水が溜まるのをずっと見ていれば止水忘れは起こりませんが、多忙な教職員がそんなことする訳がありません。数時間後の止水を忘れないよう、注水中であることを上司に報告することや、注水中であることを掲示することを止水忘れの防止策としていましたが、上司と本人が他の仕事に追われたり、掲示することを忘れたりして止水忘れが起こっています。

 タスクの実行までに時間があり、それまでの間に他のことをする場合、そのタスクがどれほど重要であっても人間は容易に忘れてしまいます。自分の子や孫を車に置き忘れてしまうことがなくならないのがこれを証明しています。このことを認識することがとても大事であり、そうすれば、どうすれば防止できるか検討できます。

1. システムで対応する
  人間は必ず失敗します。なのでシステムで対応します。家庭のお風呂のように 「♪プール水が溜まりました」と自動で止水するシステムを導入すれば効果的です(システムの設定ミス、システムに過信しすぎるリスクはありますが)。この対策の最大の課題はコストです。全ての学校プールに導入するのにいくら要するのか分かりませんが、簡単ではないでしょう。残念ですが。

2. 人間は忘れうる、それなら思い出させる
  例) 複数の目覚まし時計をセットする、複数の教職員がスマホや時計のアラーム機能を活用する

3. 止水を忘れた場合、すぐ気づいて対応する環境を作る
  例) 注水中は「プール注水中 16:30止水予定」と大書したカラーコーンを職員室入口に置く。止水したらカラーコーンは撤去するが、予定時刻を過ぎても撤去されない場合、気づいた者が担当教員に確認する。担当教員不在の場合は、その者がプールに行き確認する(事前に止水方法を全教職員に説明する。プールにも掲示する)。

4. 外部委託する
  現在、全ての学校にプールがある訳ではありません。コストや委託先など多くの検討を要しますが、外部委託は対策のひとつです。子供が飛び込んで大ケガをした、目を離した際に溺れた、などプールは多くのリスクをはらんでいます。水泳指導の外部委託は既に行われている自治体があります。

以上、プール注水の止め忘れはなぜなくならないのか、どうすれば防げるのか、を考えました。どうすれば防げるのか、は皆さんの参考になると思います。今朝、タスクの終了まで時間があることを頼まれました。 「帰りにコンビニで牛乳買ってきてね。」 あなたなら忘れずに買って帰れそうですか? ( 私はコンビニ通過予定時刻のアラームをセットしました )

 次回は「その水道代をだれが払うべきか?」です。教職員の過失だから教職員が負担すべき? 国家賠償法に基づいて自治体が負担すべき? こんな議論にさせないためには? お楽しみに!

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