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5.陽気さの中に社会への警鐘を鳴らす = CARABAO

CARABAO(คาราบาว)は1981年デビューのタイの国民的ロックバンドです。カラバオとは「(小型の)水牛」という意味。陽気さの漂う曲が多く、ボーカルもどことなく明るさのある声で、高音でもシャウトせず伸び伸びとした歌唱を聞かせてくれます。音楽的にはさまざまな洋楽のエッセンスを取り入れつつ、タイ民謡らしいどこか朴訥としたメロディーと、(音域が広く上手いのですが)力の抜けたようなボーカルが特徴。

CARABAOはプレーン・プア・チーウィット(邦訳:生きるための歌)という社会派プロテストソングの代表的バンドとみなされていて、米国のボブ・ディランやジョーン・バエズといった1960年代、70年代のプロテストソングの影響を受けて音楽活動を始めたといわれています。音楽は陽気に聞こえますが、歌詞の中では社会問題への意識喚起が多く扱われています。冒頭の曲はBua Loi(ブア・ロイ)という曲で、これは浮かんだ蓮を意味し、タイ料理のデザートのこともさすのですが、この曲の中では人の名前として使われています。歌詞は奥行きがあり多義的に解釈できる内容ですが、兵役に行き銃に撃たれてしまった友人を惜しむという物語が語られています。歌詞と訳はこちら

出世作となったのが5作目の「MADE IN THAILAND」です。タイ国内だけで500万枚を売ったともいわれ、歴史的なヒットとなりタイの国民的バンドとなりました。

ボーカルのエート・カラバオ氏は多作な人で、さまざまな社会問題が起きるといち早く曲にして自分の考えを訴えることが多いです。アンダマン沖地震の際には「アンダマンの涙(น้ำตาอันดามัน)」という曲を発表し、売り上げを寄付しました。

2002年には、CARABAOのバンドロゴを使ったカラバオエナジードリンクが発売され、東南アジアでは国民的飲料になっています。日本ではまだあまり見かけませんが世界的には大人気でイギリスのサッカーリーグのスポンサーになるほどの企業となっています。レッドブルももともとタイ発祥ですが、東南アジア諸国ではレッドブルに並ぶエナジードリンクになりつつあります。ここ日本でもカラバオエナジードリンクを通じて、CARABAOのロゴを目にする機会が増えるかもしれませんね。

CARABAOの過去のアルバムは公式youtubeチャンネルでかなり公開されています。歴史の長いバンドなので代表曲も多く、音楽ジャンルも多岐多様に渡りますが、共通しているのはどこかで明るさを感じるメロディーと声、それでいて訴えるものを感じる力強さです。最後にもう1曲、バラードをおススメします。


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