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13歳~22歳のためのヘヴィメタル入門②

前回がなかなか好評だったので2回目でございます。今回はNuMetal(ニューメタル)やメタルコアも含むラインナップ。さまざまな時代時代の「若者音楽」が混交してできあがった音像です。

メタルの歴史は大きく分けてみると、下記のように分けられるかなと思います(私観です)。けっこうこのタイミングで音像が変わっている印象。

1.プレメタル期 1970年代
2.N.W.O.B.H.M. 1980年代前半
3.ヘアメタル/スラッシュメタル 1980年代後半~1991年
4.グランジメタル/プログレッシブメタル 1990年代前半
5.Nu Metal/エクストリームメタル 1990年代後半~2000年代前半
6.メタルフェスティバル/グローバルメタル 2000年代後半~

6の「メタルフェスティバル」は音像というよりイベントですが、そうした「欧州のメタルフェスティバル」が一つのシーンとして確立し、そこに用意される様々なステージやイベントごとの色によって多様なバンドが活動を続ける、一つのサイクルが出来上がっている時期。90年代から始まった拡散がさらに進み、世界各地の民族音楽までも取り込んで拡大しています。そして、それらのバンドが目指すステージとしてメタルフェスティバルが機能している、と僕は思っています。

本連載では上記すべてを含めて幅広い年代、地域から「(リリース時の)年齢」を起点に選んでいきます。「どれか気に入ってくれればいい」と思っています。それでは2回目、どうぞ。

Linkin Parkリンキン・パーク / Hybrid Theoryハイブリッド・セオリー:24歳

もともと中高時代の友人を核に結成された学生バンドであったリンキンパーク。大学でもバンド活動を続けるもののなかなか自分たちの音像をつかめない日々。活動が停滞する中でのボーカルの脱退を機にそれまでソロ活動や他のバンドで歌っていたチェスター・ベニストンと出会います。チェスターはアリゾナ州フェニックスの生まれで11歳の時に両親が離婚、性的虐待を受け若くから薬物中毒に苦しみ、バンド活動を一度はあきらめ22歳で結婚して別の仕事に就いていました。

当時のメンバー

チェスターはリンキンパーク加入にすべてをかけ仕事を辞めて家族を連れて(活動拠点である)L.A.へ。当初は「ハイブリッド・セオリー」というバンド名でしたが同名のバンドが存在したため別のバンド名を探している中、チェスターがよく通っていた公園「Lincon Park」をバンド名として思いつきます。少し綴りを変えて(読みは同じ)「Linkin Park」として本アルバムでデビュー。一つの音楽スタイルを完成に導き、ある時代の「ロック音楽のフォーマット」を生み出したとも言える作品。


Evanescenceエヴァネッセンス / Fallenフォールン:22歳

リンキンパークの妹分といった立ち位置だったバンド。ただ、その後の活動を見ているともっとゴシック寄りの世界観を持っていましたね。リンキンパーク的な曲は上記「Bring Me To The Life」ぐらいで他はもっとダークでゴシックな音像。ゴシックというのは暗いテーマと、ゴシック・ホラーやロマンチシズム、実存主義哲学やニヒリズムといった知的なものを扱う音楽。やや内省的で音楽的にはマイナー調が多い。ファッションなども含めた世界観を指します。本作がデビューアルバムでボーカルのエイミー・リーはリリース時22歳。新世代の歌姫としてシーンに現れました。

当時のメンバー

女性ボーカルのゴシックやシンフォニックメタルと呼ばれる音像の一つのテンプレートとなった作品。こうしたジャンルの黎明期ゆえの分かりやすさ、シンプルさがあります。もともとはボーカルのエイミー・リーとギターのベン・ムーディーのバンドで、中学時代にリーのピアノの弾き語りを見てムーディーがバンドに誘ったのが結成のきっかけ。二人で続けてきたバンドですが本作リリース後にムーディーは成功のプレッシャーからか失踪してしまいバンドはリーが一人で立て直すことになります。二人のバンドメイトの学生時代からの夢の到達点であり一瞬の煌めきを記録したアルバム。


PANTERAパンテラ / Vulgar Display of Power俗悪:24歳

激烈音楽のステージを一つ高め、新世代の扉を開いたアルバム。PANTERAの5作目のアルバムにしてボーカルのフィリップ・アンセルモ加入後2作目のアルバム。リリース時アンセルモは24歳でした。デンマークからの移民として生まれた彼はイタリアとフランスの血も混じっており、父親はイタリアンレストランを経営していたそう。かなりの問題児で、妹とふざけていて家を燃やしたこともあるそうです。そんな悪ガキっぷりが炸裂していた頃。

当時のメンバー

USらしい乾いた音像にハードコア由来の怒号が乗り、しなやか且つ突進力のあるバンドサウンド。曲の中で減速や加速が繰り広げられ、ブラックサバスからの影響を感じさせる場面も多い。他にもリフワークはメタリカやメガデスに通じるN.W.O.B.H.M.の影響も取り込んだメロディアスな側面も感じ、「グルーヴィー」と称される作品ながらメタル音楽らしい直情的な疾走感もあります。メタルシーンを一つ先に進めた記念碑的作品です。


Children Of Bodomチルドレン・オブ・ボドム / Hate Crew Deathrollヘイト・クルー・デスロール:24歳

北欧、フィンランドから現れた新星COB(チルドレンオブボドム)。フィンランドというと「北欧」ということでスウェーデンやノルウェーとひとくくりの印象がありますが実はフィンランドはロシアとの関係も深い。隣国であり、過去から紛争関係にある国でもあり、一時期はロシアの一部でもありました。人種的にも東スラブ人国家でありロシアに近い。本作はCOBとして4作目のアルバムでフィンランドで1位を獲得。デビューが早いバンドでリリース時にボーカル兼ギターのアレキシ・ライホはまだ24歳。7歳でバイオリンを、11歳でギターを始め、18歳でデビュー。

当時のメンバー

本作はメロディアスさと疾走感を兼ね備え、それまでの作品に比べて音像がすっきりと洗練されて聞きやすくなりつつも迫力も増したモダンな音作りに。楽器隊によるソロはコンパクトかつ印象的になり、曲全体のフックも増しています。聞いていてテンションが上がる”これぞメタル”な快作。


BAND-MAIDバンドメイド / WORLD DOMINATIONワールド・ドミネーション:24歳

日本より先に海外で火が付いたガールズバンド。初海外ワンマンライブがメキシコだったという国際派。最初のツアーは日本より海外の方が動員が多かったそう。日本は世界的に見てもバンドが盛んな国で、その中でも現在進行形の大きなムーブメントがガールズロックだと思っています。おそらくAKBを頂点とする地下アイドルムーブメントが(AKB活動開始である)2005年から盛り上がり、さまざまな表現衝動を持った人々がそこに吸い寄せられるようになった。そしてバンド志向の女性演奏者達が地下アイドル的なマーケティング方法も学びガールズバンドとして台頭してくる。各種SNSとの親和性も高く日本ではガールズロックシーンが一定の規模を持つようになりました。本作はメジャーデビュー後2枚目のフルアルバムでボーカルのSAIKI(彩姫)は本作リリース時24歳。

当時のメンバー

日本における「ロック」が自分たちのものになったのは80年代後半からのいわゆる「バンドブーム」だと思います。シティポップとバンドブームによって洗練と拡散が進み、日本独自のポップス/ロックが確立された。バンドブームからはV系(ビジュアル系)が生まれ、その流れを汲んでいるのでしょうけれどメロディアスでハードという音像を展開しています。こういう音楽はありそうで他の国にはない。こんなにメロディ展開が目まぐるしい音楽って日本以外にあまりないんですよ。海外のメタルシーンとの連続性で言えば、一番近いのは北欧メロディックデスメタル(チルドレン・オブ・ザ・ボドム以降)かも。メロディアスなパートをギターではなくボーカルが担っているところが大きく異なりますが。目まぐるしく展開するサービス精神旺盛なメタル。


以上、5枚のアルバムを紹介してみました。気に入ったアルバムがあれば幸いです。次回の記事はこちら

それでは良いミュージックライフを。


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