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19.ロシアの反骨精神ミクスチャーメタル = VECTOR OF UNDERGROUND

VECTOR OF UNDERGROUNDは2009年(または2010年)に結成されたロシアのメタルバンドです。さまざまな音楽を雑食的に取り込み、独自のユーモラスで風刺のきいた世界を構築しています。サビではちょっとポルカ的というか、ロシア民謡的なメロディーが出てきます。こうした非英語圏のインディーズバンドはなかなか日本では情報を得ることが難しく、あまりインターネットから情報が手に入りませんが、2019年現在も活動中でロシア国内のロックフェスティバルへの出演も決まっているようです。ロシアはソ連時代は表現の規制が厳しく、西欧資本主義のバンドは発禁扱いでロックミュージックを聞くには非合法なネットワークを使って入手する必要がありました。当局の目を避け、レントゲン写真(ビニール素材)に音楽を録音した(骨が写っているので)「BONE RECORDS」と呼ばれるレコード盤があったそうです。

今でもこうした表現の規制、権力への反抗という色合いが色濃く残っているバンドがロシアには残っています。LITTLE BIGはロックというよりテクノ/エレクトリックミュージックですが、非常に風刺の効いた表現を行っています。

ロシアで反体制と言えば忘れてはならないのはPUSSY RIOTでしょう。ワールドカップで試合中にグラウンドに乱入して世界中でニュースになりましたが、それ以外にもプーチンに反抗し投獄されるなど、音楽を通じた反体制活動を徹底して行っています。

ロシアのロックの源流をたどっていくと、Виктор Цой(VIKTOR TSOI)と出会います。TSOIは朝鮮人とロシア人のハーフで、1982年にКино(KINO、映画の意味)というバンドでデビュー。ソ連の若者の間で大人気になります。当時のソ連では音楽は検閲の対象で、国家公式の唯一のレコードレーベルがすべてを統制していました。そのレーベルとの契約がなかったためアンダーグラウンドでの活動となりますが全国的な人気を博し、映画などにも主演します。若くして(28歳)亡くなってしまいますが、伝説的なロッカーとしてそのあとのロシア音楽界に多大な影響を与えました。歌詞の内容は反体制ではなくより普遍的なものでしたが、それ故にソ連時代でも国内で流布し、ロックミュージックのフォーマットを広めました。

今日最後の一曲は、ロシア的メロディーラインを持った女性ボーカルのメタルバンドРУЯНでお別れしましょう。ロシアの荒涼とした大地を思わせる佳曲です。


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