見出し画像

44.深化/進化した欧州フォークメタル = ELUVEITIE

Eluveitie(エルヴェイティ)はスイスで2002年結成、2003年デビューのフォークメタルバンドです。伝統楽器(後述)奏者を含む9名編成の大所帯。フォークメタルとは各地の民族音楽とヘヴィ・メタルを融合させアグレッションを増した音楽で、ブルースの影響を受けたハードロックから発展した80年代の初期ヘヴィメタルの枠を超えて拡張したものだと感じます。

最初に私が民族音楽とメタルの融合に触れたのはフィンランドのAmorphis(アモルフィス)が1994年にリリースした「TALES FROM THE THOUSAND LAKES」でした。

いわゆる北欧メロディックデスメタル(メロデス)がシーンとして立ち上がりつつあった頃で、中心地はスウェーデン。スウェーデンにはIn FlamesやDARK TRANQUILLITYが代表的なバンドとして存在しましたが、Amorphisはフィンランドのバンドでメロデスの中心地からは離れており、音楽的にもスウェーデンの北欧メロデスとは違う、より土着的で民族音楽的なメロディーを取り入れ、独自の音楽性が印象に残っています。

個人的に、2000年ごろからメタルを一時離れ、世界中のさまざまな音楽を聴くようになり、2018年ごろからまたメタルを聴き始めたのですが、2010年代後半に出た新譜を聴くと、当時の北欧メロデス勢はだいたい音楽性を変えてポストメタル的になっていました。それはそれでよかったのですが欧州的な民族音楽とメタルのアグレッションを合体させた最新型の音楽を求めていたところ、Eluveitieに巡り合ったわけです。1曲目は女性ボーカルでメロディーが前面に出ていましたが、曲によってはデスボイス主体でアグレッションが前面に出た曲もあります。

中心人物Chrigel Glanzmann(クリゲル・グランツマン)のボーカルで、彼は他にもバグパイプなどの伝統楽器を演奏しています。こうしたアグレッションとメロディーの配合のセンスが良く、民族音楽色も本格的に伝統楽器を取り入れ、陳腐さのない音楽を作り上げています。メタルとはある意味「型」の音楽で、民族音楽もしっかりとした「型」があるので、本来的には親和性が高いのだと思います。そうした「ルーツミュージック×メタル=越境メタル」を特集した記事がこちら

伝統楽器も紹介しましょう。使われている伝統楽器の一つ、hurdy gurdy(ハーディー・ガーディー)の演奏動画をどうぞ。これは機械仕掛けのバイオリンとも呼べる楽器で、西ヨーロッパの伝統楽器です。ハーディー・ガーディー兼ボーカリストのMichalina Malisz(ミヒャエルナ・マリーズ)による演奏動画をどうぞ。

以前の記事で新世代プログレバンドとして取り上げましたが、Eluvietieを脱退した3人のメンバーが2016年にCeller Darlingというバンドでデビューしており、こちらもハーディー・ガーディーが使われています。こちらはアグレッションは弱めですが、女性クリーンボーカルがメインで、独特の音階(ところどころ中近東・北アフリカ的でもある)感がある面白いバンドです。

他にも世界中でフォークメタルバンドが増えてきています。また日を改めてフォークメタルムーブメントについては書きたいと思いますが、フォークメタルと相互に対をなすペイガンフォーク、中世音楽のバンド群をこちらの記事で取り上げています。メタル系レーベルからのリリースや欧州メタルフェス(Wackenなど)への出演も多く、表裏一体となって発展しています。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?