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「優しさという残酷さ」silent #3 感想


こんにちは。
秋が深まり、寒さを感じる日が多くなりました。

初回放送からずっと人気のドラマ「silent」ですが、正直2話まで見た感じだと「これ、面白くなるのか……?」という不安もありました。

テーマや人物設定にドラマ特有の「ドロドロさ」とか「ハラハラドキドキ感」が少ないからだと思います。

ですが、3話を視聴してこのドラマの面白さを見誤ってたことに気づきました。本当に、すごく素敵なドラマです。


今回は大まかなあらすじを書いていませんし、ネタバレも普通に書いてます。

このドラマはネタバレとかあまり気にしないで見れるものだと思っているので、率直に感じたことを書いていきます。

まだ見始めていない方は、TVerで1話から3話まですべて無料で見れるので、この記事を読んでみて少しでも気になったら見てくれたら嬉しいです。


湊斗の優しさ


今回は想に対する湊斗くんの心情、湊斗くんの内面について描かれていました。

湊斗くんは、紬の今彼で、物腰柔らかそうな外見も去ることながら「優しさを具現化した人」と言われるほどのお人好しです。



優しさって色々ありますよね。
人によって優しいの定義が違うからすごく難しいものだと思います。

紬と付き合ったきっかけの出来事として、同窓会で再会し、仕事に疲れている紬に言葉をかけるシーンがありました。


三年前、同窓会で再び再会した湊斗と紬。

紬が疲れた様子で二次会に参加しないことをみんなに告げ、それを気がかりに思った湊斗はファミレスに入った紬を追いかけます。

ファミレスで必死にパソコンに向かう紬。
今ではCDショップでフリーターをしている紬ですが、3年前はブラック企業で働いていたようです。

「来週までって言われてたんだけど明日までにってさっき連絡が来たんだ」と言い、湊斗に見向きもしないまま、パソコンをカタカタと打つ紬。湊斗は紬を心配する言葉を掛けますが、紬は強がります。

「私やれば出来るって言われてるんだよね」「結構頼りにされててさ」「社会人ってすごいよね、週5日働いて、土日も働いてるんだから」

「戸川くん会社の女の人に挨拶で体触ることかある? ないよね。する人もいるらしくてさ。……いてさ。挨拶なんだって。文化の違いかな」


この言葉で紬がどれだけ辛い思いをしているか分かった湊斗。「やれば出来るって、やらせるための呪文だよ」「期待と圧力は違う」と正論を言いつつ、はじめて感情的な言葉を投げます。

湊斗「俺ね、人を殴ったことも殴りたいと思ったこともないのね」

湊斗「でもその青羽の職場にいる、青羽に挨拶してくるやつに会ったら俺、多分殴っちゃうと思う」



この言葉で紬は「じゃあ会わせないようにしないとね」と言い、はじめて涙を流します。




このシーン、めっちゃいいなと思いました。
湊斗くんの優しさが、ダイレクトに伝わる
セリフだったなと。

このドラマに出てくる登場人物はみんな優しいんですよね。

想くんも、お母さんや紬が悲しむ姿を見たくない気持ちがあって、上京し、2人から離れます。

湊斗くんは、自分のために怒ることはなく、
好きな人が傷ついていることに対して怒れる人です。それって優しさの最上級だと思います。



想に対する湊斗の想い


3話で想と湊がはじめて会うことによって、想に対する湊斗の気持ちが浮き彫りになりました。



始まってすぐの冒頭のシーン。
高校生時代の回想で、学校から帰る途中、湊斗は想に声をかけようとします。

しかし、想は湊斗に気づく前に紬をみつけ、2人で並んで帰っていきます。

そこで湊斗は「とても仲がいい友達ととても好きな人が結ばれて、すごく切なくて少しで嬉しかった」とナレーションが入ります。


しかし、3話の後半で、想と湊斗は再会。
湊斗は想を部屋に招き、冷蔵庫を開けて「ビール飲む?」と声をかけますが、当然ながら返事をしてくれることはありません。

想の誕生日の方が早いから、自分の誕生日がくるまでお酒を飲むのは待つと約束したのに、と思い出を話しますが、それも想に聞こえることはありません。

本当に耳が聞こえなくなってしまったんだと分かった湊斗は、泣いてしまいます。それに気づいて唖然とする想に湊斗は詰め寄ります。

「それを隠したくて、心配されたくなくて別れたの?」「想らしいよね隠すとか消えるとか、決めちゃうの」「紬に迷惑かけたくないとか、分かるけど、分かるけどさ……」


「なんで俺に言ってくれなかったの?なにか力に……。なれないけど、なれないの分かってるけど! でも、言ってくれないのはさ……」


そう言って頭を抱えてしまいます。言葉で話しているので、当然想には伝わっていません。
でも想も、友人の泣く姿に心苦しそうな表情を浮かべます。そのまま湊斗は家を飛び出してしまうのでした。

そしてラストシーン、再び高校時代の回想が入ります。

湊斗は、学校帰りの想を後ろから呼びかけます。少し振り向いたかと思いきや、再び歩き出してしまう想。その姿に、にやっと笑い追いかける湊。
「ちょっと、無視すんなよ!……想!」と大きく呼びかけたことで、振り向いて笑ってみせる想。実は呼びかけられていることに気づいててわざと聞こえないふりをして、湊斗もそれに気づいてふざけて合っていたのです
笑い合う二人。ここでエンディングが流れます。



優しさというのは、時に人を傷つけます。

だから「どうして俺に言ってくれなかったの?」という言葉で、不快に感じた人もいるかもしれません。情けや同情を嫌い、だから想も言いたくなかったんじゃないの?と思った人も多いかと思います。

しかし、湊斗くんの「友人を一人で苦しませたくなかった」と言う気持ちが、このドラマが描きたい残酷さでもあり、優しさなのだと思います。


冒頭のシーンと、最後のシーンで全く違うものを見せるという演出を初回でもされているのに、今回も普通に泣きました。紬を通しての2人というより、2人の間にある友情が垣間見えたシーンで、最高でした。



最後に


色々な人から見た優しさと残酷さを描いた
ドラマ「silent」。

ドラマらしい予測できない展開や、ドロドロとした愛憎劇を楽しめるものではありませんが、
ゆっくりと描く一人一人の心情や、他者との関係性がこのドラマの魅力なのかなと思います。


一年前の今頃、なにをしていたのかなと振り返ってみると、失恋して、やけになりながら原稿を書いていたなと思い出しました。

あの時は好きな人がいなくなってしまった現実が寂しくて、辛かったです。それに向き合うことが、学校に行って、きちんと文章を書くことでした。だから毎日原稿をしていました。

終わりがあれば始まりがあるように、始まりがあれば終わりがあります。

だから始まることが少し怖かったり、悲しかったりするのかもしれません。
でも終わったことよりも、始まったことの方が、今あることの方がよっぽど重要なのだと思います。


過去を受け止め始めた3人がこれからどんな
"今"を歩んでいくのか、ゆっくり見ていけたらなと思います。



それではまた来週

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