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学生の1年間の研究プロジェクト運営
概要
この記事はSFCの青山研究室で研究を進めたい人がどのようなタイムラインとその時々に行うことについて述べている.あくまで僕の個人的な感想と理想的な状態として書いているので悪しからず.
1ヶ月目
初めの一月は「自分は何をしたいのか?」ということについて調べ,明確にするための期間である.主に論文のサーベイから始まり,最終的にはケイン級計画書を作成することを目指して自分の研究をより具体的に詰めていく.
論文誌の探し方等は慶應の公式のセミナーがあるのでそちらを閲覧する.例えば以下のセミナーなどは論文誌を探す際に有用である.他にも様々なAIを用いたサービスや引用文献から探ったり,論文は日英を問わずに探っていく.日本語では学会の論文誌等,査読の付いているものを調べる.シンポジウムや学会の大会抄録等では査読はないが,良い研究はあるので気をつけながら見てみる.英語論文についてはScopusやPubmed,WebofScienceなどを用いて検索する.
論文のまとめは落合フォーマットを利用して進めていく.以下のパワーポイントファイルのテンプレートから似たようなスライドを作成することができる.
論文まとめの量は大まかに言って,週に5本ほどである.1ヶ月目で15~20本,後述するがこのペースでいけば研究計画書をまとめることができる
また,研究室内の実験等について,既存の研究手法と同じ設計で試してみることを1ヶ月のうちに行う.
さらに以下のチェックリストなどでアイディアの点検等を行う.
https://iis-lab.org/misc/realitycheck/
2ヶ月目
次の1ヶ月では主に自分の研究についてより詳細かつ具体的な研究計画をまとめることを目指す.具体的には学期が始まって2ヶ月〜2ヶ月半ほど経過したときに学部生向けの研究奨励金の募集が始まる.そこに合わせて研究計画を作成する.それに合わせて実験のデータを実際に計測して研究の方針や考えている実験設計等が妥当なものなのかのパイロット実験を行う.
申請書は以下のチェックリストに基づいて考える.
チェックリストのアイディア元は以下
研究計画書作成のためのチェックリスト
前提としてのチェック
研究計画書としての基準
研究計画書の中の議論は今分かっていない部分を除いてほとんど参考文献を踏み台にして議論しているか?
実験のデータ等,研究能力があるかを示す証拠は提示できるか?
この研究の目的は何ですか?
研究の目的・背景
研究の目的は何ですか?
研究を行う背景や動機は何ですか?
研究の仮説は何ですか?
この研究の計画はどうなっていますか?
研究デザイン
研究のデザインはどのようになっていますか?(例:実験研究、観察研究、シミュレーションなど)
どのような手法を用いてデータを収集しますか?
サンプルサイズや対象はどのように設定されていますか?
どのようなデータが必要ですか?
データ収集計画
どのようなデータを収集する予定ですか?
データ収集方法はどのようになっていますか?(例:アンケート、センサー、インタビューなど)
データ収集の具体的な手順はどのように計画されていますか?
データはどのように分析されますか?
データ分析計画
データをどのように処理・加工する予定ですか?
使用する統計手法や分析手法は何ですか?
どのようなグラフや表を作成する予定ですか?
この研究の意義は何ですか?
学問的意義
研究テーマに関連する先行研究はどのようなものがありますか?
先行研究によって明らかにされていることは何ですか?
先行研究によって解明されていない課題は何ですか?
この研究はどのように未解明の課題に貢献しますか?
研究の独自性や新規性は何ですか?
社会的意義や応用は?
社会的意義
この研究が解決しようとしている社会的問題は何ですか?
研究成果が実社会にどのように役立つ可能性がありますか?
この研究の成果をどのように普及・応用する予定ですか?
今後の計画や課題は?
研究の進行・管理
研究の進行スケジュールはどのようになっていますか?
研究に必要なリソースや支援は何ですか?
予想される課題やリスクは何ですか?
以下,チェックリストの説明である.
この研究の目的は何ですか?
研究の目的・背景
研究計画書の最初に記載すべきは研究の目的と背景である。このセクションでは、研究が何を達成しようとしているのか、なぜその研究が重要であるのかを明確にする。具体的には、研究の目的を一文で表現し、その目的に至った動機や背景を説明する。背景説明では、問題の現状やそれに関連する知識のギャップ、または新たな発見の必要性を述べる。さらに、研究の仮説を提示し、その仮説がどのようにして導き出されたのか、どのような理論的根拠があるのかを説明する。このセクションは、読者に研究の重要性とその学問的及び実践的な意義を理解させるための重要な部分である。
この研究の計画はどうなっていますか?
研究デザイン
研究デザインとは、研究の全体的な構造や方法を指し、研究の有効性と信頼性を確保するための重要な要素である。このセクションでは、研究がどのように行われるのかを詳細に説明する。具体的には、研究の種類(実験研究、観察研究、シミュレーション研究など)を明示し、その選択の理由を説明する。また、データ収集の方法(例えばアンケート調査、インタビュー、実験測定など)についても具体的に述べる。サンプルサイズの設定や対象の選定基準もここで説明されるべきである。さらに、研究の進行方法やデータの収集スケジュール、使用する機器やソフトウェアについても詳細に記載し、研究デザインの信頼性と再現性を確保する。
どのようなデータが必要ですか?
データ収集計画
データ収集計画は、研究の成功に不可欠な部分である。このセクションでは、収集するデータの種類、データの収集方法、具体的な手順について詳しく説明する。まず、どのようなデータが必要であり、それがどのように研究の目的達成に寄与するのかを明確にする。次に、データを収集するための具体的な方法を説明する。例えば、アンケートを使用する場合、質問項目や回答スケール、対象者の選定基準を詳細に記載する。インタビューを行う場合、インタビューガイドや実施方法、インタビュアーの訓練についても説明する。データ収集の具体的な手順として、収集期間、場所、使用する機器やソフトウェア、データの保存方法なども含める。この詳細な計画により、データ収集の一貫性と信頼性を確保する。
データはどのように分析されますか?
データ分析計画
データ分析計画は、収集したデータをどのように処理し、研究の仮説を検証するかを詳細に説明する部分である。このセクションでは、データの前処理方法(欠損値の処理、異常値の検出など)、データをどのように統計的に分析するか、使用する統計手法や解析手法を明確にする。例えば、回帰分析、分散分析(ANOVA)、因子分析など、具体的な統計手法を挙げ、それらの選択理由を説明する。また、データの視覚化方法についても記載し、どのようなグラフや表を作成する予定かを説明する。これにより、データからどのような情報が引き出されるのか、どのように結論を導き出すのかを明確にする。分析計画は、研究の信頼性と結果の解釈を支える重要な部分である。
この研究の意義は何ですか?
学問的意義
学問的意義のセクションでは、研究が学問分野に対してどのような貢献をするのかを明確にする。まず、研究テーマに関連する先行研究をレビューし、その研究がどのような成果を挙げているのかを説明する。次に、先行研究の中で解明されていない課題や限界を特定し、自身の研究がどのようにそれらの課題に対処するのかを示す。さらに、研究の独自性や新規性について強調し、同種の研究と比較してどのような点で差別化されているのかを説明する。これにより、研究の学術的価値と、その分野における位置づけを明確にする。このセクションは、研究の意義を強調し、読者にその重要性を理解させるための重要な部分である。
社会的意義や応用は?
社会的意義
社会的意義のセクションでは、研究が実社会にどのような影響を与えるのか、どのような社会的問題を解決するのに役立つのかを説明する。まず、研究が対象とする社会的問題や課題を明確にする。次に、研究の成果がどのようにしてその問題の解決に貢献するのかを具体的に述べる。例えば、新しい技術の開発がどのように社会の特定のニーズに応えるのか、政策提言がどのように公共政策に影響を与えるのかなどを説明する。さらに、研究の成果をどのように実社会に普及させる計画があるのか、そのための具体的な方法(例:教育プログラム、産業界との連携、政策提言など)についても言及する。このセクションは、研究の実践的な価値と社会的貢献を示す重要な部分である。
今後の計画や課題は?
研究の進行・管理
研究の進行・管理のセクションでは、研究の進行計画、必要なリソース、予想される課題やリスクについて説明する。まず、研究の進行スケジュールを詳細に記載し、各フェーズの具体的なタイムラインを示す。次に、研究を遂行するために必要なリソース(例えば、人的資源、財政的支援、技術的設備など)について説明する。また、研究の進行に伴って予想される課題やリスクを特定し、それに対する対応策やリスク管理計画も明示する。これにより、研究の円滑な進行を確保し、予期しない問題に対する備えを整えることができる。このセクションは、研究の実行可能性と管理能力を示す重要な部分である。
3ヶ月目
3ヶ月目になると前述の奨励金にアプライしたのちにその計画に従って進めていくこととなる.自分自身で設定した実験を自分でできるように研究を進めていく.3ヶ月の終わりは学期の終わりとなるのでそこの時間に合わせて中間的な取りまとめを行うこととなる.
4ヶ月目~6ヶ月目
この期間は夏休みや冬休みと春休みにあたるのでさほど研究は進まないことが多い.もちろん研究をしてはいけないということはないが休むことも大切である.
7ヶ月目
新学期が始まり,それまでやっていたことのキャッチアップと今後の研究についての進め方について議論することとなる.データを集めるための被験者集めなどもこのタイミングから行うこととなる.
8ヶ月目
おおよそのデータが集まり始め,結論の輪郭なども朧げながら見るようになってくる.解析等は研究計画書を書く段階で決めてはあるがそれを実際のコードでどのように行うのかと言ったことはこの段階から調べ始めることもある.
9ヶ月目
この段階でおおよその研究の着地点と何がわかり,何がわからなかったのかなどをまとめる.奨励金の報告書の締め切りなどがこのタイミングであることが多い.
10ヶ月目~12ヶ月目
再び休み期間.多くの場合,それまでの実験づけから解放されてリフレッシュすることが多い.
まとめ
上にまとめたのは奨励金を獲得した際の私のスケジュールだが,なんとなくどこが忙しくてどういう気持ちでいるのかを知ってもらえれば幸いである.最初のアイディアを詰めていく部分は大変だが,そこが詰まればうまく実験等で回すことができる.
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