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黙示録(人生逆噴射文学賞応募作品①)


人魚獅子
  巻かれる前の春巻きが
      ジョッキに揺蕩う
            春の兆し



言うなればオーバーザレインボー。
例えるならマーライオン。

言う必要も例える必要もないのだけれど
今はとにかく
世間の目から隠さなくてはならない。
誰の目にも触れさせない。
僕はそう言う覚悟を持ってここにいる。

ジョッキを隠すべきか?
彼女を隠すべきか?
どっちであろうと隠す事が
この時この場においてすべき事であり
幸い僕にはそれをするだけの力がある。
今の自分に出来る事を
今の自分の最大限の力を持って行う。
そう言う覚悟をもって僕はここにいる。

秘すれば花。
意味が違うのだろうけれど違わない。
隠し終えた後の世界には花が在りました。
あたかも野に咲く花のように。
さしづめダ・カーポの如く。
打ち震える一輪の花よ。

その時はっきりと気付いた。
これは恋。
僕は彼女に恋してる。
隠したかったのは守りたかったから。
そう、これは恋だったんだ。

そうだ、
いつか彼女とシンガポールに行こう、
マーライオンをバックに二人で写真を撮るんだ。
いいぞ。
ご機嫌なアイデアだ。

善は急げ。
「あの、もしよかったら今度僕とマー」
『オエッ!オエエエエエエエッ!』
被せ気味の彼女。
少し聞き取りづらかったけれど
たぶん答えはきっとイエス。

と僕の中で突き上げる強い何か。
歓喜?
リビドー?
否。これはもっと
生物としての根元的な…
身体生理的な…
「オエエエエエエエッ!」

天啓。
そうだ、彼女をひとりにはさせない。
ひとりぼっちになんかさせてなるものか。
大丈夫だ。
僕がいるぞ。
僕自身もマーライオンになる。
ともに堕ちよう。
そう言う覚悟をもってここに僕はいる。
その時はっきりと気付いた。
これは愛。

『オエッ!オエッ!オエエエエエエエッ!』
「オオエッ!オッ、オッ!オエエエエッ!」
『「オエエエエエエエエエエッ!!」』

ダブルマーライオン出現。
二重唱。
カノン。
ラッパ吹きの天使。
完全なる調和。
天国と地獄。
車の両輪。
wheel of fortune.

逆噴射は二人一対をもって真の完成をみる。

(了)

人生逆噴射文学賞

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