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【教員発信】 安田女子高校STEAMコースの特徴~デザイン思考~

安田女子高校STEAMコースは、2021年4月に新設されたコースです。
今回は、安田女子高校STEAMコースで、”A”にあたる部分の中核として考えて導入している「デザイン思考」についてご紹介します。


■デザイン思考とは

デザイン思考とは、さまざまな課題解決やイノベーションをする際に活用される過程や発想法のことです。特に複雑でやっかいな課題を解決するときに、有効であるとされているようです。

その中核をなす一つが、「ひとを中心に考える」ことです。どんなに技術が発達しても使い方を間違えることもあるし、使いにくければ意味がありません。使うひとや関わるひとにとって、使いやすく不満を感じにくい工夫をすることが大切ですよね。

例えば、ある公園管理者が、公園の出入り口にある門型(コの字型)車止めの上に、子どもが飛び乗って転倒する事故が発生して困っています。どうやって防いだらいいでしょうか。
もちろん、「この上に乗ってはいけません。」とか看板を置くのもいいでしょうが、それではなかなかひとの行動を変えることはできません。そこで、広島の会社がその上に小鳥を数羽止まらせるデザインを開発しました(ピコリーノで検索してみてください)。デザイン的にもかわいらしく、しかも小鳥があることで飛び乗ることを心理的に防いでいます。
こんな風に、ひとを中心に考えていくことを大切にしているのが、デザイン思考の特徴の一つなんです。


■デザイン思考の5つのステップ

デザイン思考は、次の5つのステップに分かれています。【 】内は、これまでデザイン思考の研修を受けたり、生徒といっしょに考えたりした中で、私が感じていることです。

<共感>
関わる人たちの問題意識や課題を理解し、共感することが重要です。つまり、ひとを中心に考えます。このとき、より具体的なひとをイメージするのがコツです。「ペルソナ」という言葉で表すことがあります。そのひとに対して、観察やインタビュー、アンケートなどを行い、問題を明確にします。
【場合によっては、ペルソナや問題を解決しようとする人が、その問題や原因について無自覚であったり、そのひとにとっては当たり前すぎて認識できない情報もあったりします。ストレートな問いだけでなく、雑談もしながら、一見関係ないことでもペルソナからいろいろな情報を引き出すことが必要だと思っています。】

<問題定義>
共感した問題意識や課題を整理し、解決すべき問題を決めます。問題の背景や原因を掘り下げることも重要な手順です。
【基本的には答えのないやっかいな問題に取り組んでいるので、悩んでばかりいても仕方ありません。デザイン思考では、5つのステップを短期間でおこない、それを繰り返していくことが成功の鍵だと思っています。なので、あまり悩みすぎないこと、スピードも重要だと思います。】

<発想>
問題解決のために、多様なアイデアを発想します。アイデアの出し方には、マインドマップやブレインストーミングなどの手法があります。
【多様なアイデアを考えるために、いくつかコツがあります。
極端なことを考える。:お金のことであれば、1万円あったらと考えるのではなく、1億円あったらとか、10円しかなかったらと極端に多い・少ない状況を考えてみたりします。
良いことだけでなく、悪いことも考える。:研修では、先生に怒られそうなアイデアも出しましょうと、アドバイスをされました。などなど】

<プロトタイプ(試作)>アイデアを形にするために、身近なものを使ってプロトタイプを作成(試作)します。
【必ずものを作る必要はなくて、イラストで表現したり、体を使って表現したりなど、状況を可視化し改善点の発見やイメージの共有につながる方法ならなんでもOK。このステップは手を動かすことと、思い切りの良さが大事です。】

<テスト>
プロトタイプを使って、関わるひとに使ってもらうなどしてテストを行います。そして、感想や改善点などのフィードバックをもらいます。
【できれば直接ペルソナに使ってもらってフィードバックをもらえると一番いいですが、スピードも大切なのでこだわりすぎてもよくないかなと思います。忌憚なく意見がもらえる関係を作っておくのも、かなり重要だと思います。】

このように、ひとを中心に考えながら、この5つのステップを繰り返して、よりよいものづくりや課題解決を目指すのが、デザイン思考らしいです。


■参考にしたもの

いくつか私が参考にした本などを少し紹介して、おわりにしたいと思います。

直感と論理をつなぐ思考法/佐宗邦威
デザイン思考が世界を変える アップデート版/ティム・ブラウン
タクトピア株式会社さんにしていただいた研修(教員研修や生徒研修)

じつは、デザイン思考や成長マインドセットは、アントレプレナーシップ(起業家精神)というものと、すごく近いです。というか、ほぼ同じといってもいいのかなとも思っていて、今後はアントレプレナーシップについても手を広げていきたいと思っています。


■ 執筆者:安田女子高校STEAMコース主任(2年目)
教員歴23年(理科と情報、専門は物理)。
趣味は読書、好きなことは謎解き、好きな食べ物は粒あんです。
大学・大学院時代は、赤外線天文学を専攻、できたてほやほやのすばる望遠鏡を使わせてもらいながら褐色矮星について研究していました。
未知の人と関わるときは尻込みするタイプですが、STEAMと関わり始めた2年前から一念発起して、いろいろな人と関わろうと努力しています。

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