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ニヒリズム(22)

高齢の患者さんが戦争中の体験を話してくださることが時々あります。共感的に理解しながら拝聴したいと思うのですが、平和な時代しか知らない者にとって戦争体験というのは事が重大すぎて、安易に共感を示すようなことはとても出来ないという気がしてしまいます。

戦争という大事件に限らず、他人の体験を聴くときには「経験した人にしか理解できない」という部分が必ずあります。「所詮、他人のことなど決して理解できるものではない」と、過度にニヒリズムに傾くのは温かみに欠けますが、「自分はどこまで他人のことを分かり得るだろうか」という自問は決して忘れてはいけないと思います。

一方にある「他人を理解したい、きっと分かり合えるはずだ」という素朴な感情とどの辺りでバランスを取ったらよいのか、これはとても難しい問題です。たぶん、バランスを取ろうとして四苦八苦すること自体が良いコミュニケーションを生むのだろうと思います。

文章:精神科やすだ (2006年8月22日初公開)
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