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見通しを伝える(31)

うつ病診療の基本のひとつに、予想される経過を前もって伝えておくというものがあります。

「抗うつ薬の効果は1、2週間くらいで少しずつ出てきます」などと見通しを伝えることで、相手の苦しみに耐える力を補強するのです。どんな苦しみでも、あとどれくらい続くのかという見通しがあれば、それまでは頑張ろうという気持ち(あるいは、あきらめて開き直る気持ち)になることができます。

特にうつ病では「この苦しみは果てしなく続く」などと悲観的になりがちなので、特に意識して「果て」はちゃんとあるのだということを伝えます。

ちなみに見通しの情報が苦痛に耐えるためには大切であることは日常でもよくみられます。退屈な会議で何度も時計を見てしまうのも、地下鉄の駅の「つぎの列車は前の駅を出ました」という電光掲示も、災害に備えてラジオを準備しておくのも、病院の待合室で「あと何人です」というのを伝えるのも、みんなそうでしょう。

文章:精神科やすだ (2006年10月12日初公開)
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